遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、故人の遺産について、どのように分配するか（遺産分割協議）の話し合いの結果を記載した書面のことをいいます。 遺産分割協議書は絶対に作らなければならないというわけではありません。

ただ、作らないといけない場合があります。
相続による不動産などの所有権の移転登記をする際には、添付書類として遺産分割協議書が必要となります。
そのほかにも、故人の銀行預金を解約する際などにも必要になります。
遺産分割協議書について弁護士が解説します。

遺産分割協議書作成の注意点

遺産分割の話し合いがまとまりましたら、すぐに遺産分割協議書を作ります。
書き方には法律上の特別な決まりはありません。
したがって、簡単な内容（遺産が預金のみの場合など）の場合には、専門家に依頼しなくとも相続人で作成することも十分可能です。

しかしいくつかのことを書き漏らしてしまうと、不動産の名義変更や銀行預金の解約等ができなくなる場合がありますので注意が必要です。
遺産分割協議書を作り直さなければならなくなりますと、遺産をもらえない相続人が不快な思いをして、話がこじれてしまうこともあり得ます。
したがって、遺産分割協議書は作り直すことのないように、ミスなくきちんと作成しなければなりません。

なお、遺産分割協議書作成においては、故人様の状況によりケースバイケースです。
必ずしもすべての方が同じルール、フォーマットにしたがって書けばいいというわけでもありません。
もしもお客様が「相続人が多すぎてどのような遺産分割協議書を作成すればよいか見当もつかない」「相続人の中に自分勝手な人がいてトラブルになりそう、もしくは既にトラブルになっている」などの状況やお気持ちがあるのでしたら法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします

相続人の中に認知症の方や未成年者がいる場合

故人の相続人の中に、認知症の方や、未成年者、行方不明の方がいる場合、どのように対応したらよいのでしょうか。

1. 認知症の方がいる場合

   認知症が重度の場合は、家庭裁判所に成年被後見人選任の申立をする必要があります。
   そのほか、認知症の程度によって、保佐や補助の申立が必要な場合があります。
   なお、後見や保佐、補助の申立てをしてから、実際に裁判所の手続きが終わるまで、通常１～２か月程度時間が掛かります。

2. 未成年者がいる場合

   相続人の中に未成年者がいる場合、通常は親権者が未成年者の代理人として遺産分割協議を行うこととなります。
   もっとも、未成年者の親権者も相続人となっている場合（親子で相続人の場合）には、家庭裁判所に特別代理人選任の手続を行う必要があります。
   なぜなら、親子で遺産の取り分で揉めるなど、利益が反するからです。

3. 行方不明の方がいる場合

   長期間にわたって行方が分からない場合は、失踪宣告の手続きを行う必要があります。
   失踪宣告が認められると、行方が分からない方は法律上死亡したものとみなされますので、この方の相続発生することになります。
   比較的短期間行方が分からないときは、不在者財産管理人選任の申立が必要となります。
   この財産管理人が、行方の分からない方に代わって遺産分割協議を行うこととなります。

以上のように、相続人の中に認知症の方、未成年の方、行方不明の方がいる場合はそれぞれ必要な手続があり、中には時間がかかるものもあります。相続手続をスムーズに進めるためにも早めに相続の専門家にご相談されることをおすすめします。

遺産分割が無効（遺産分割協議書が無効）となる場合

めったにあることではありませんが、ごくまれに遺産分割が無効となる場合があります。
典型例は以下のとおりです。

• 戸籍上、相続人であると判明しているのに、この相続人を除いて遺産分割協議書が作成された場合
• 相続人でない者が参加して成立した遺産分割協議・調停・協議書
• 法律行為に際し自己の行為の結果を判断することができる能力（意思能力）が無いとされる者（例：認知症の方、未成年者など）が参加していた場合
• 遺産分割の意思表示に錯誤があったとき
• 詐欺や強迫により遺産分割がなされたとき
• 遺産分割協議書が偽造されたものであったとき
• 相続財産について正しく調査や記入がされていなかったとき
• 遺産分割協議書作成後に遺言が見つかった場合で、遺言の内容と協議書の内容が反するとき

このような場合には、せっかく苦労して作成した遺産分割協議書が、その有効性を巡って争いに転じてしまうこともあります。
遺産分割協議書の作成に当たっては十分な注意が必要です。