不倫慰謝料を請求したい方―性行為について合意がなかった場合
男女の合意がない場合の不貞・不倫の成否
いわゆる「不貞行為」とは、男女が合意の上で肉体関係に及んだ場合を指します。
では、お客様の配偶者が、相手方の合意がないまま性行為を強要した、あるいは強要された場合までも、不貞行為にあたり、配偶者や相手方には慰謝料を支払う義務が生じるのでしょうか。
不倫・不貞慰謝料が発生する法律上の根拠はさまざまな議論があるとことですが、「不倫慰謝料とは」のページでご説明しておりますとおり、裁判所は、不貞行為が「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」を侵害する不法行為(民法709条・710条)になるからであると考えています。
したがいまして、性行為がどちらかの強要によるものであっても、「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」が侵害されることはありえます。
そこで、以下、配偶者が相手方に性行為を強要した場合と、配偶者が相手方に性行為を強要された場合に分けて、ご説明いたします。
配偶者が相手方に性行為を強要した場合
相手方の慰謝料支払義務
上記のとおり、不貞行為が違法なことである根拠は、不貞行為が「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」を侵害する不法行為であるからです。
そして、不法行為が成立するためには、行為者に「故意又は過失」(民法709条)が必要です。
無理に性行為を強要された場合には、強要された側に故意も過失もありません。
したがって、この場合、性行為を強要された相手方には、お客様に対する不法行為が成立しないため、相手方には慰謝料を支払う義務は発生しません。
ただし、どの程度の強要がなされたかによって結論は左右されます。
性行為を強要する際に、暴行又は脅迫を使われたのであれば強制性交等罪(旧:強姦罪)にもなる犯罪行為に該当します。
このような場合、相手方は単なる不倫相手とは異なり、犯罪被害者になりますので、慰謝料を支払う義務は発生しない可能性が高いです。
また、職場の上司に性行為を強要された場合などには、立場を利用したパワハラとして、直接的な暴行や脅迫をされていなくても、故意又は過失が認められないと言えるケースもあります。
上記のようなケースでは、性行為を行ったとしても、相手方が「不法行為」を行ったと評価される可能性は低いと言えるでしょう。
これに対し、暴行又は脅迫はなかったが、強く要求されたので、嫌々ながらも応じてしまったという場合、「強要された」とは言えず、慰謝料が発生する可能性が高いと言えます。
さらに、当初は性行為を強要されたとしても、その後気持ちが変わり、強要がなくとも継続的に性的関係を持つようになってしまった場合には、もはや通常の不貞・不倫と同じなので、慰謝料を支払う義務が発生します。
このように、性行為を強要されたという場合であっても、その程度によって結論が変わりうるので、相手方の言い分を鵜呑みにせずに事実関係を確認することが必要です。
配偶者の慰謝料支払義務
不貞・不倫行為を強要した配偶者自身は、お客様の「夫又は妻としての権利」を侵害することを分かっていながら、相手方に性行為を強要したことになるため、「故意又は過失」が認められます。したがって、通常の不貞・不倫と同様に慰謝料を支払う義務が生じます。
なお、通常の場合とは異なり、相手方と配偶者との間に共同関係が認められないため、共同不法行為(複数の者が、共同の不法行為によって他人に損害を与えることをいいます。)にはなりません。したがって、配偶者が相手方に求償することはできません。
求償権とは、共同不法行為者(不倫の当事者2人)の一方が、自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合、もう一方の共同不法行為者に自己の責任を超過する分を請求できる権利のことです。
慰謝料を支払う責任は、浮気・不倫をした配偶者と相手方の2人にあります。そのため、どちらか片方のみが慰謝料を支払うことになった場合でも、配偶者と相手方の2人に支払の責任があります。
例えば、不倫相手が100万円の慰謝料を請求されて、100万円を支払った場合、不倫相手は配偶者に対して、「私は慰謝料の全額を支払った。あなたの負担分(たとえば50万円)を私に支払って」と請求することができるのです。この権利を「求償権」と呼びます。
配偶者が相手方に性行為を強要された場合
相手方の慰謝料支払義務
相手方が配偶者に性行為を強要した場合は、相手方には、上記の強要した側の配偶者の場合と同様に故意又は過失が認められるので、慰謝料の支払義務は通常の不貞・不倫の場合と同じく認められます。
もっとも、この場合も、相手方と配偶者との間に共同関係が認められないため、共同不法行為にはならず、相手方が支払った慰謝料について配偶者に対して求償することはできません。
むしろ、配偶者から相手方に対して、性行為を強要されたことに対する慰謝料を請求することができます。
通常、強制性交等罪にあたるような性行為がなされた場合は、被害者(配偶者)から加害者(相手方)への慰謝料請求のみが取り上げられることが多いのですが、加害者(相手方)が、被害者(配偶者)が婚姻していることを知っている場合は、不貞・不倫慰謝料請求も理論上可能です。
配偶者の慰謝料支払義務
無理に性行為を強要された場合には、強要された側に故意も過失もないことは、上記「配偶者の慰謝料支払義務」でご説明したとおりです。この場合、不法行為が成立しないため、配偶者には慰謝料を支払う義務は発生しません。
ただし、強要の程度によっては「故意又は過失」が認められる場合があることも、上記のとおりです。
「性交渉を強制された」という反論に対して
上記のように、配偶者が相手方を強要して性行為を行った場合、不法行為が成立せず、慰謝料を請求できない場合があります。
すなわち、相手方が慰謝料請求に対する反論として、「性行為を強要」されたという主張が出てくる可能性があります。
この強要されたか否かということは、不法行為の成立要件である「故意又は過失」の存在に関わる事項なので、慰謝料請求が成り立つか否かに重大な影響を与えます。
では、この強要されたという主張に対してどのように対抗すればよいのでしょうか。
まず、配偶者と相手方とのLINEメッセージなどで、「強制などではなく、親密な交際があった」などと証明することによって、反論を崩すことができます。
次に、二人の人間関係、上司と部下、先輩と後輩など二人の間で強要が成立するか、交際期間中ずっと強要の効果が続いていたというのは不自然ではないか、など反論の合理性を間接事実から崩していくことができます。
いずれにせよ、相手方が不貞を認めている事件に比較して、高度な訴訟技術が求められますので、弁護士を代理人とすることが必須となるでしょう。
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当事務所サービスエリア(千葉県の裁判所管轄と裁判所所在地)
千葉/水戸地方・家庭裁判所管轄区域一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉市(中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、緑区、美浜区)、習志野市、市原市、八千代市、市川市、船橋市、浦安市 | |
佐倉支部 | 佐倉市、成田市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、印旛郡(酒々井町、栄町) | |
一宮支部 | 茂原市、勝浦市、いすみ市、長生郡(一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町)、夷隅郡(大多喜町、御宿町) | |
松戸支部 | 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市 | |
木更津支部 | 木更津市、君津市、富津市、袖ヶ浦市 | |
館山支部 | 館山市、鴨川市、南房総市、安房郡(鋸南町) | |
八日市場支部 | 匝瑳市、香取郡(多古町)、山武郡(芝山町、横芝光町、九十九里町)、銚子市、旭市(旧旭市、旧海上郡海上町、旧海上郡飯岡町)、東金市、山武市、大網白里市、 | |
佐原支部 | 香取市、旭市(旧香取郡干潟町)、香取郡(神崎町、東庄町) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 水戸市,ひたちなか市,那珂市,鉾田市、小美玉市の内 旧東茨城郡小川町,旧東茨城郡美野里町、那珂郡(東海村),久慈郡(大子町)、 東茨城郡の内 茨城町,大洗町,城里町(七会支所の所管区域を除く。) |
|
日立支部 | 日立市,高萩市,北茨城市 | |
土浦支部 | 土浦市,つくば市、つくばみらい市、 かすみがうら市の内 旧新治郡霞ヶ浦町、 稲敷郡の内 阿見町 美浦村、石岡市、 かすみがうら市の内 旧新治郡千代田町、 小美玉市の内 旧新治郡玉里村 |
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龍ケ崎支部 | 龍ケ崎市,牛久市,稲敷市 、 稲敷郡の内 河内町、 取手市、守谷市、北相馬郡(利根町) |
|
麻生支部 | 鹿嶋市,潮来市,神栖市,行方市 | |
下妻支部 | 下妻市,常総市,結城郡(八千代町)、結城市,筑西市、 桜川市の内 旧真壁郡真壁町、旧真壁郡大和村、 古河市、坂東市、猿島郡(五霞町 境町) |
千葉/水戸地方・家庭裁判所所在地一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉県千葉市中央区中央4-11-27(JR総武線・内房線・外房線千葉駅から徒歩15分、京成千葉線千葉中央駅から徒歩8分) | |
佐倉支部 | 千葉県佐倉市弥勒町92(JR総武本線佐倉駅から徒歩30分、京成本線京成佐倉駅から徒歩15分) | |
一宮支部 | 千葉県長生郡一宮町一宮2791(JR外房線上総一ノ宮駅から徒歩3分) | |
松戸支部 | 千葉県松戸市岩瀬無番地(JR常磐線松戸駅から徒歩7分) | |
木更津支部 | 千葉県木更津市新田2-5-1(JR内房線木更津駅から徒歩8分 | |
館山支部 | 千葉県館山市北条1073(JR内房線館山駅から徒歩15分) | |
八日市場支部 | 千葉県匝瑳市八日市場イ2760(JR総武本線八日市場駅から徒歩15分) | |
佐原支部 | 千葉県香取市佐原イ3375(JR成田線佐原駅から徒歩15分) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 茨城県水戸市大町1-1-38(JR常磐線水戸駅北口徒歩約10分) | |
日立支部 | 茨城県日立市幸町2-10-12(JR常磐線日立駅中央口から徒歩約10分) | |
土浦支部 | 茨城県土浦市中央1-13-12(JR常磐線土浦駅西口から徒歩約15分) | |
龍ケ崎支部 | 茨城県龍ケ崎市4918(JR常磐線佐貫駅から関東鉄道竜ヶ崎線竜ヶ崎駅下車徒歩約20分, 又は竜ヶ崎駅からバス(江戸崎行き等)乗車5分,観音前停留所下車徒歩3分) |
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麻生支部 | 茨城県行方市麻生143(JR鹿島線潮来駅から車,タクシーで約20分) | |
下妻支部 | 茨城県下妻市下妻乙99(関東鉄道常総線下妻駅から徒歩約15分) |