不倫慰謝料とは
「不倫・不貞の慰謝料」、「浮気の慰謝料」という言葉は、テレビなどでもよく耳にする言葉ですし、何となくイメージはあるという方も多いのではないでしょうか。
しかし、不倫・不貞の「慰謝料請求権」の法的な詳しい内容などについてご存じの方はあまりいらっしゃらないのではないかと思います。
このページでは、不倫・不貞の慰謝料について、法律上どのようなものなのか、どのような根拠から認められるのか、誰がどのような責任を負うのかなど、法的な側面から解説をいたします。
不倫・不貞慰謝料が発生する法律上の根拠
民法709条・710条は、次のとおり定めています。
- 民法709条:
- 「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
- 民法710条:
- 「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
このように、民法は、他人の法律上保護される利益を侵害した人は、そのことによって生じた損害(財産以外の損害も含みます)を賠償しなければならないことを定めています。
夫婦間の貞操義務
婚姻関係にある男女、つまり夫婦は、お互いに、他の異性と性的関係を持たないようにしなければならない義務を負っています。
この義務を「貞操義務」といいます。
夫婦間の貞操義務の根拠は、日本の法律制度が一夫一妻制をとっていることにあります。
いわゆる「不倫」―「不貞行為」は、この夫婦間の「貞操義務」に反する違法な行為です。
したがって、不倫・不貞をした人は、民法709条にいう「法律上保護される利益」を侵害し、不倫・不貞をされた人に対し、「精神的な苦痛・損害」を与えたとして、その損害を賠償する義務(慰謝料支払義務)を負います。
また、同じことを不倫・不貞をされた側からみると、不倫・不貞行為によって受けた「精神的苦痛・損害」の賠償を求める権利(慰謝料請求県)が発生することになります。
「慰謝料」とは、精神的苦痛・損害に対する賠償金のことをいいます。
性行為・肉体関係がなくても慰謝料が発生することがある?
不倫・不貞慰謝料が発生する典型的なケースは、夫婦の一方と第三者との間に性行為・肉体関係があった場合です。したがって、親しいメールをしているだけとか、デートをしていただけでは不倫・不貞慰謝料請求が認められないことが通常です。
しかし、たとえ肉体関係を伴わないとしても、その行為が夫婦の共同生活を破壊させる可能性のある行為であれば、慰謝料の請求が認められる場合もあります。
不倫・不貞慰謝料の法律要件について詳しくは、こちらの解説をご参照ください。
不倫慰謝料を請求したい方―不倫・不貞慰謝料請求の法律要件とよくある反論
共同不法行為
当然のことながら、不倫・不貞行為というものには相手が必要ですから、必ず夫婦の一方とその不倫・不貞相手の2人で行うことになります。
法律的には、不倫をした当事者の2人は、不倫をされた夫婦の一方に対して、2人で共同して損害賠償責任を負うことになります。これを「共同不法行為」といいます。
つまり、不倫をした2人が一緒になって夫婦の一方を傷つけたのだから、その2人は共同して、不倫・不貞による精神的苦痛・損害を賠償しなければならない、ということです。
不真正連帯債務
不倫・不貞慰謝料を請求する人との関係
最高裁判所の判例によれば、「共同不法行為」に基づく損害賠償請求権は、「不真正連帯債務」となるとされています。
どういうことかというと、不倫・不貞をした当事者の2人は、不倫をされた夫婦の一方に対し、それぞれ全額の慰謝料を支払う義務を負います。
例えば、不倫をされた人が受け取るべき慰謝料の金額が200万円であった場合、その人は、不倫相手に200万円を請求することもできますし、自分の配偶者に200万円を請求することもできます。
このように、支払いを求める人は、誰にいくら請求するかを自由に決めることができます。支払いの請求を受けた人は、「自分の責任は半分だから半額しか払わない」ということはできません。
ただし、2人のうちいずれかが慰謝料を支払えば、その分はもう1人も支払ったのと同じにあつかわれ、支払いをしなかった人の支払義務も消滅することになります。したがって、上記の例では、1人から200万円が支払われた後は、さらにもう1人に200万円を請求することはできません。
なお、不真正連帯債務の場合には、1人に対する免除の効果は、当然には他の債務者に及ばないとされていますので、不倫・不貞をされた人は、自分の配偶者に対しては慰謝料の支払いを免除し、不倫相手にはひきつづき慰謝料の支払いを求めることもできます。
不倫をした当事者間の関係
このように、不倫の被害者との関係では、不倫をした当事者の2人は、それぞれ慰謝料の全額を支払わなければなりません。
しかし、不倫をした当事者の間では、一方が慰謝料を支払った場合には、その人は、2人の責任の割合に応じて、他方に支払いの分担を求めることができます。例えば、不倫相手だけが請求を受けて慰謝料200万円を支払った場合は、一緒に不倫をした夫または妻に対して、分担を求めることができます。この支払いの分担を求める権利のことを、法律の専門用語では「求償権」といいます。
ダブル不倫(W不倫・不貞)の場合
いわゆるダブル不倫(W不倫・不貞)の場合でも、不倫をされた人が不倫をした2人に慰謝料請求権を持っており、慰謝料の支払いを求めることができることは同じです。また、2人のうち1人が慰謝料を支払った場合に、求償権が発生することも同じです。
しかし、いわゆるダブル不倫(W不倫・不貞)の場合には、家族の家計単位でみると、双方が慰謝料請求権を持ち合っている状況になります。そのため、実際に不倫・不貞をされた方が慰謝料請求権を行使しても、ご家族の家計単位ではプラスマイナスゼロになる場合があり得ます。
このように、不倫・不貞慰謝料の問題では、当事者3人(W不倫の場合は4人)の間に、感情面での争いだけではなく、複雑な権利関係を生じさせ、問題がこじれてしまうことも少なくありません。
また、当事者の間で良かれと思ってしたことが、専門家の目から見ればさらなるトラブルを引き起こす原因となってしまうこともあります。
当事者間の話し合いではご不安な点・ご不明な点などがございましたら、ぜひ一度お早めに弁護士にご相談ください。
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当事務所サービスエリア(千葉県の裁判所管轄と裁判所所在地)
千葉/水戸地方・家庭裁判所管轄区域一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉市(中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、緑区、美浜区)、習志野市、市原市、八千代市、市川市、船橋市、浦安市 | |
佐倉支部 | 佐倉市、成田市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、印旛郡(酒々井町、栄町) | |
一宮支部 | 茂原市、勝浦市、いすみ市、長生郡(一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町)、夷隅郡(大多喜町、御宿町) | |
松戸支部 | 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市 | |
木更津支部 | 木更津市、君津市、富津市、袖ヶ浦市 | |
館山支部 | 館山市、鴨川市、南房総市、安房郡(鋸南町) | |
八日市場支部 | 匝瑳市、香取郡(多古町)、山武郡(芝山町、横芝光町、九十九里町)、銚子市、旭市(旧旭市、旧海上郡海上町、旧海上郡飯岡町)、東金市、山武市、大網白里市、 | |
佐原支部 | 香取市、旭市(旧香取郡干潟町)、香取郡(神崎町、東庄町) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 水戸市,ひたちなか市,那珂市,鉾田市、小美玉市の内 旧東茨城郡小川町,旧東茨城郡美野里町、那珂郡(東海村),久慈郡(大子町)、 東茨城郡の内 茨城町,大洗町,城里町(七会支所の所管区域を除く。) |
|
日立支部 | 日立市,高萩市,北茨城市 | |
土浦支部 | 土浦市,つくば市、つくばみらい市、 かすみがうら市の内 旧新治郡霞ヶ浦町、 稲敷郡の内 阿見町 美浦村、石岡市、 かすみがうら市の内 旧新治郡千代田町、 小美玉市の内 旧新治郡玉里村 |
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龍ケ崎支部 | 龍ケ崎市,牛久市,稲敷市 、 稲敷郡の内 河内町、 取手市、守谷市、北相馬郡(利根町) |
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麻生支部 | 鹿嶋市,潮来市,神栖市,行方市 | |
下妻支部 | 下妻市,常総市,結城郡(八千代町)、結城市,筑西市、 桜川市の内 旧真壁郡真壁町、旧真壁郡大和村、 古河市、坂東市、猿島郡(五霞町 境町) |
千葉/水戸地方・家庭裁判所所在地一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉県千葉市中央区中央4-11-27(JR総武線・内房線・外房線千葉駅から徒歩15分、京成千葉線千葉中央駅から徒歩8分) | |
佐倉支部 | 千葉県佐倉市弥勒町92(JR総武本線佐倉駅から徒歩30分、京成本線京成佐倉駅から徒歩15分) | |
一宮支部 | 千葉県長生郡一宮町一宮2791(JR外房線上総一ノ宮駅から徒歩3分) | |
松戸支部 | 千葉県松戸市岩瀬無番地(JR常磐線松戸駅から徒歩7分) | |
木更津支部 | 千葉県木更津市新田2-5-1(JR内房線木更津駅から徒歩8分 | |
館山支部 | 千葉県館山市北条1073(JR内房線館山駅から徒歩15分) | |
八日市場支部 | 千葉県匝瑳市八日市場イ2760(JR総武本線八日市場駅から徒歩15分) | |
佐原支部 | 千葉県香取市佐原イ3375(JR成田線佐原駅から徒歩15分) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 茨城県水戸市大町1-1-38(JR常磐線水戸駅北口徒歩約10分) | |
日立支部 | 茨城県日立市幸町2-10-12(JR常磐線日立駅中央口から徒歩約10分) | |
土浦支部 | 茨城県土浦市中央1-13-12(JR常磐線土浦駅西口から徒歩約15分) | |
龍ケ崎支部 | 茨城県龍ケ崎市4918(JR常磐線佐貫駅から関東鉄道竜ヶ崎線竜ヶ崎駅下車徒歩約20分, 又は竜ヶ崎駅からバス(江戸崎行き等)乗車5分,観音前停留所下車徒歩3分) |
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麻生支部 | 茨城県行方市麻生143(JR鹿島線潮来駅から車,タクシーで約20分) | |
下妻支部 | 茨城県下妻市下妻乙99(関東鉄道常総線下妻駅から徒歩約15分) |