不倫慰謝料を請求したい方―「性行為・肉体関係はなかった」という反論
不倫・不貞慰謝料の請求をした場合に、相手から「2人の間に不貞関係はなかった」などと反論をされることは珍しいことではありません。このページでは、そのような相手方の反論について、解説いたします。
「不倫・不貞行為」とは?
不倫・不貞慰謝料の発生原因となる「不倫・不貞行為」とは、基本的には「性行為・肉体関係」のことをいいます。
「性行為・肉体関係があったこと」は、不倫・不貞慰謝料を請求する側が、証拠により証明しなければなりません。
ですから、不倫・不貞慰謝料を請求する側としては、当事者2人がただ親密にしていただけではなく、肉体関係をもっていたこと、さらには、いつ、どこで性行為を行ったかということを指し示す証拠を基本的には集める必要があります。
もっとも、性行為・肉体関係があったとまではいえないケースのすべてで、不倫・不貞慰謝料の請求が認められないとは限りません。
裁判所は、性行為・肉体関係があったとまでは断定できない場合でも、その行為が性行為・肉体関係があったのと同じように、夫婦の共同生活の平穏をおびやかし、破壊する可能性のある行為であれば不法行為に当たる、つまり慰謝料請求が認められる場合もあることを認めています(東京地方裁判所平成17年11月15日判決、東京地方裁判所平成22年12月21日判決)。
性行為・肉体関係に至らない性的行為など
東京地方裁判所平成20年12月5日判決
この裁判例では、2人の間に肉体的交渉があったとは断定できないと判断されました。
しかし、不倫相手が別居・離婚を要求したり、キスをしたりしたことは不法行為となるとして、慰謝料の請求が認められました。
このように、相手方が積極的にお客様の家庭を壊すような行為をしていた場合には、それ自体が不法行為として慰謝料の請求が認められることもあります。
東京地方裁判所平成25年3月25日判決
この裁判例では、慰謝料を請求された男性が自分に性行為をする能力がないので不貞行為はなかったと主張しました。しかし、裁判所は、たとえ2人が性行為をしていなかったとしても、異性2人がラブホテルで過ごすこと自体が不法行為となるとして、慰謝料の請求が認められました。
配偶者が他の異性と2人きりでラブホテルで過ごしたことを知った方が、2人には性的関係があったのではないかと考えることは通常といえます。そのような極めて疑わしい行動自体、夫婦関係に亀裂を入れるのに十分だと考えられるのです。
東京地方裁判所平成25年5月14日判決
この裁判例では、夫に持病があり性行為を行う能力がなかったため、2人が性行為をしていなかったこと自体は認められました。
しかし、自宅のベッドにおいてマッサージを行った後、下着姿で抱き合い、身体を触るなどの行為が不法行為となるとして、慰謝料の請求が認められました。
このケースでは、たまたま当事者に持病があって性交まではできなかっただけで、もし夫に性行為をできる能力があったら肉体関係を結んでいたであろうと推測されます。肉体関係があったのとほぼ同視できるといえるので、慰謝料請求が認められたものと思われます。
面会・密会をすること
ただ面会・密会をしただけでは、もちろんそのようなことをされた方としては面白くないでしょうが、不法行為とまではいえず、慰謝料の請求が認められないことが一般的です。
例外として、もともと不倫・不貞関係にあった2人が密会するなど特別な状況がある場合に、慰謝料の請求を認めたケースがあります。
この裁判例は、かつて不倫・不貞関係にあった2人が深夜に面会した行為は、2人が再び不倫・不貞関係を再開したのではないかとの疑いを抱かせるのに十分な行為であり、夫婦の婚姻関係を破たんさせる可能性のある行為であると判断して、慰謝料の請求が認めました(東京地方裁判所平成25年4月19日判決)。
愛情表現を含むメールのやりとりをすること
不倫・不貞慰謝料を請求したいというお客様がよくお持ちいただく証拠として、2人が恋愛関係にあることを疑わせるようなメールやLINEなどのやりとりがあります。
愛情表現を含む内容のメールなどのやりとりだけでは、不倫・不貞慰謝料の請求が認められないケースも多いです。
不倫・不貞慰謝料を請求する側としては、性行為そのものについて直接話しているメッセージや写真データなどが含まれている場合は別として、さらに2人に肉体関係があったことを示す証拠を探していく必要があるでしょう。
もっとも、愛情表現を含むメールのやり取りについて慰謝料の支払いを認めた裁判例も全くないわけではなく、裁判所の判断は分かれています。ただ、仮に慰謝料の請求が認められたとしても、その金額は低いものにとどまることが多いです。
〔肯定例〕東京地方裁判所平成24年11月28日判決
〔否定例〕東京地方裁判所平成25年3月15日判決
「性行為・肉体関係がなかった」という反論への対処法
「性行為・肉体関係がなかった」との反論に対しては、その反論をくつがえす証拠、少なくとも2人に性行為・肉体関係があったことを疑わせるような証拠を集めるよりほかありません。
たとえ、一つひとつの証拠が性行為・肉体関係の存在までを直ちに証明するものではないとしても、複数の証拠を積み重ねることによって、性行為・肉体関係があったことを推測できる場合があります。
決定的な証拠がないとあきらめてしまう前に、弁護士まで一度ご相談ください。
有力な証拠とは
相手方との交渉や裁判において「有力な証拠」とは、どのようなものでしょうか?
それは、一言でいえば、事情を知らない第三者の目から見ても、不倫の事実が証明できるような証拠です。
たとえば、「夫(妻)の帰りが遅い」「そわそわして携帯電話を手放さない」などといった目撃情報は、それだけでは勘違いの可能性も否定できません。このような証拠は、一般的に、第三者から見ても不倫を疑うべき証拠とまではいえません。
また、客観的な「写真」や探偵の報告書だからといっても、すべての写真・報告書が有力な証拠となるとは限りません。
2人のどのような行動をとらえた報告書・写真なのかによってその証拠としての価値はまったく変わってきてしまいます。
もちろん、性行為を行っている場面そのものを撮影した写真などは決定的な証拠となり得ます(しかし、そのような直接的な証拠があることはめったにありません)。
それ以外にも、たとえば、2人がラブホテルに入り、長時間過ごしたところを撮影した写真や報告書は有力な証拠となることが多いですが、通常のホテルに入っていく様子や外を2人で歩く様子をとらえた写真等は、それだけでは有力な証拠とはいえないこともあります。
ラブホテルに入った場合には、その目的が性行為をするためと考えるのが通常ですが、その他の場所では他の目的があったと弁解できる余地があることが多いからです。
しかし、たとえ一つひとつの証拠が性行為・肉体関係の存在までを直ちに証明するものではないとしても、複数の証拠を積み重ねることによって、性行為・肉体関係があったことを推測できる場合もあります。
お悩みの場合は、ぜひ1度、ご相談ください。
- 慰謝料の請求をしたい方トップ
- 不倫・不貞慰謝料請求の流れ
- 弁護士に依頼するメリット
- 裁判外交渉のメリット
- 裁判外交渉のデメリット
- 民事裁判のメリット
- 民事裁判のデメリット
- 不倫・不貞慰謝料請求訴訟の進行方法
- 不倫・不貞慰謝料請求の勘所
- 不倫・不貞慰謝料請求の法律要件とよくある反論
- 「性行為・肉体関係はなかった」という反論
- 「既婚者であると知らなかった」という反論(故意・過失)
- 「すでに夫婦関係が壊れていた」という反論
- 消滅時効の反論
- W不倫ケースの注意点
- その他特殊なケース(内縁・認知等)
- 配偶者の協力
- 性行為について合意がなかった場合
- 慰謝料請求と離婚のタイミング
- 示談書作成のポイント
- 離婚の条件に与える影響
- 不貞に関与した第三者の責任
- 子供から相手方に対する慰謝料請求
- 附帯条件を破られた場合
- 探偵費用の請求
- 交際の差止請求
- 不貞を疑い始めたときにすべきこと
- 配偶者に対して慰謝料を免除した場合
- 慰謝料請求が権利の濫用になる場合
- 不倫を公表したことによる責任
- 相手が自己破産した場合
- 不倫慰謝料よくあるご質問
- 弁護士費用
- 慰謝料の請求をされた方トップ
- 不倫・不貞慰謝料請求の流れ
- 弁護士に依頼した場合のメリット
- 裁判外交渉のメリット
- 裁判外交渉のデメリット
- 民事裁判のメリット
- 民事裁判のデメリット
- 不倫・不貞慰謝料請求訴訟の進行方法
- 不倫慰謝料請求を受けた際の注意点
- 不倫・不貞慰謝料請求が成立しない場合
- 「性行為・肉体関係はなかった」という反論
- 「既婚者であると知らなかった」という反論(故意・過失)
- 「すでに夫婦関係が壊れていた」という反論
- 消滅時効の反論
- W不倫ケースの注意点
- 交際相手の協力
- 性行為について合意がなかった場合
- 慰謝料請求と離婚のタイミング
- 示談書作成のポイント
- 離婚の条件に与える影響
- 不貞に関与した第三者の責任
- 交際相手の子供からの慰謝料請求
- 附帯条件を破った場合
- 探偵費用の請求
- 交際の差止請求
- 交際相手への慰謝料請求
- 交際相手の慰謝料が免除された場合
- 慰謝料請求が権利の濫用になる場合
- 不倫を公表されそうな場合の対処法
- 自己破産した場合の慰謝料の支払
- 不倫慰謝料よくあるご質問
- 弁護士費用
当事務所サービスエリア(千葉県の裁判所管轄と裁判所所在地)
千葉/水戸地方・家庭裁判所管轄区域一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉市(中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、緑区、美浜区)、習志野市、市原市、八千代市、市川市、船橋市、浦安市 | |
佐倉支部 | 佐倉市、成田市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、印旛郡(酒々井町、栄町) | |
一宮支部 | 茂原市、勝浦市、いすみ市、長生郡(一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町)、夷隅郡(大多喜町、御宿町) | |
松戸支部 | 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市 | |
木更津支部 | 木更津市、君津市、富津市、袖ヶ浦市 | |
館山支部 | 館山市、鴨川市、南房総市、安房郡(鋸南町) | |
八日市場支部 | 匝瑳市、香取郡(多古町)、山武郡(芝山町、横芝光町、九十九里町)、銚子市、旭市(旧旭市、旧海上郡海上町、旧海上郡飯岡町)、東金市、山武市、大網白里市、 | |
佐原支部 | 香取市、旭市(旧香取郡干潟町)、香取郡(神崎町、東庄町) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 水戸市,ひたちなか市,那珂市,鉾田市、小美玉市の内 旧東茨城郡小川町,旧東茨城郡美野里町、那珂郡(東海村),久慈郡(大子町)、 東茨城郡の内 茨城町,大洗町,城里町(七会支所の所管区域を除く。) |
|
日立支部 | 日立市,高萩市,北茨城市 | |
土浦支部 | 土浦市,つくば市、つくばみらい市、 かすみがうら市の内 旧新治郡霞ヶ浦町、 稲敷郡の内 阿見町 美浦村、石岡市、 かすみがうら市の内 旧新治郡千代田町、 小美玉市の内 旧新治郡玉里村 |
|
龍ケ崎支部 | 龍ケ崎市,牛久市,稲敷市 、 稲敷郡の内 河内町、 取手市、守谷市、北相馬郡(利根町) |
|
麻生支部 | 鹿嶋市,潮来市,神栖市,行方市 | |
下妻支部 | 下妻市,常総市,結城郡(八千代町)、結城市,筑西市、 桜川市の内 旧真壁郡真壁町、旧真壁郡大和村、 古河市、坂東市、猿島郡(五霞町 境町) |
千葉/水戸地方・家庭裁判所所在地一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉県千葉市中央区中央4-11-27(JR総武線・内房線・外房線千葉駅から徒歩15分、京成千葉線千葉中央駅から徒歩8分) | |
佐倉支部 | 千葉県佐倉市弥勒町92(JR総武本線佐倉駅から徒歩30分、京成本線京成佐倉駅から徒歩15分) | |
一宮支部 | 千葉県長生郡一宮町一宮2791(JR外房線上総一ノ宮駅から徒歩3分) | |
松戸支部 | 千葉県松戸市岩瀬無番地(JR常磐線松戸駅から徒歩7分) | |
木更津支部 | 千葉県木更津市新田2-5-1(JR内房線木更津駅から徒歩8分 | |
館山支部 | 千葉県館山市北条1073(JR内房線館山駅から徒歩15分) | |
八日市場支部 | 千葉県匝瑳市八日市場イ2760(JR総武本線八日市場駅から徒歩15分) | |
佐原支部 | 千葉県香取市佐原イ3375(JR成田線佐原駅から徒歩15分) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 茨城県水戸市大町1-1-38(JR常磐線水戸駅北口徒歩約10分) | |
日立支部 | 茨城県日立市幸町2-10-12(JR常磐線日立駅中央口から徒歩約10分) | |
土浦支部 | 茨城県土浦市中央1-13-12(JR常磐線土浦駅西口から徒歩約15分) | |
龍ケ崎支部 | 茨城県龍ケ崎市4918(JR常磐線佐貫駅から関東鉄道竜ヶ崎線竜ヶ崎駅下車徒歩約20分, 又は竜ヶ崎駅からバス(江戸崎行き等)乗車5分,観音前停留所下車徒歩3分) |
|
麻生支部 | 茨城県行方市麻生143(JR鹿島線潮来駅から車,タクシーで約20分) | |
下妻支部 | 茨城県下妻市下妻乙99(関東鉄道常総線下妻駅から徒歩約15分) |