不倫慰謝料請求をされた方―交際相手への慰謝料請求
交際相手に対する慰謝料請求とは
お客様が、交際相手に配偶者がいることを知りながら、交際相手と肉体関係を持った場合、交際相手の配偶者(以下「相手方」といいます。)にそれが発覚すれば、相手方から不貞慰謝料を請求されることや、相手方に対して慰謝料を支払った場合には交際相手に対して分担請求ができることは「不倫慰謝料とは」のページにてご説明しております。
このページでご説明する内容は、上記の2種類の請求とは異なり、お客様が交際相手に騙されて肉体関係を持ったような場合に貞操侵害等を理由に慰謝料を請求できるか、という問題です。
もし、交際相手が独身であり、結婚する気もないのに、結婚する気があるように偽ってお客様と肉体関係と持った場合であれば、交際相手に対する損害賠償請求が認められることに異論はないと思われます。
では、交際相手が既婚者であることを知りつつ、交際相手に騙されて肉体関係を持った場合も同様に考えてよいのでしょうか。
以下、裁判例を紹介しつつご説明いたします。
前提知識
上記の問題を理解する上で重要な民法の条文があります。それは民法708条です。
- 民法708条
- 「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」
と定めています。
この条文は「法は、不法をなすものには手を貸さない」(クリーンハンズの原則)という民法の原則を表明していると解釈されています。
具体例を挙げると、本来であれば、法律上無効な行為によって得た金銭は不当利得(民法703条)として返還しなければならないのですが、賭博という不法な原因に基づいて引き渡した金銭については、賭博が違法であり、法律上は無効な行為であったとしても、返還請求は認められないという結論になります。
そして、今回の問題では、「不貞という不法を行ったものには損賠賠償という手を貸さない」という解釈が正しいのか否かが裁判で争われているのです。
なお、「ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」というただし書きの部分も非常に重要な意味を持っています。この点も後の裁判例に出て参ります。
最高裁判所の判断
最高裁判所昭和44年9月26日
この問題の判断基準としての判例となっています。
この事件は、既婚男性が、女性と結婚する意思がないにもかかわらず、妻と別れて結婚すると嘘をついて肉体関係を持ったものの、女性から妊娠したことの相談を受けると、女性と会うのを避けるようになり、他の女性と肉体関係を持つようになったため、女性が貞操侵害を理由に慰謝料200万円を請求したという事件です。
第一審の東京地方裁判所は、民法708条本文を適用し、女性の請求を棄却しました。
第二審の東京高等裁判所は、民法708条ただし書きの「不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」が適用されるため、民法708条本文は適用されないとして、女性の請求を認めました。
東京高等裁判所が女性の請求を認めたため、男性が最高裁判所に上告し、最高裁判所は次のように判断基準を示しました。
「女性が、情交関係を結んだ当時男性に妻のあることを知っていたとしても、その一事によって、女性の男性に対する貞操等の侵害を理由とする慰謝料請求が、民法708条の法の精神に反して当然にゆるされないものと画一的に解すべきではない。
すなわち、女性が、その情交関係を結んだ動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合において男性側の情交関係を結んだ動機その詐言の内容程度及びその内容についての女性の社会進出認識等諸般の事情を斟酌し、右情交関係を誘起した責任が主として男性にあり、女性の側におけるその動機に内在する不法の程度に比し、男性の側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、女性の男性に対する貞操等の侵害を理由とする慰謝料請求は許容されるべきであり、このように解しても民法708条に示された法の精神に反するものではないというべきである」
その上で、男性の上告を棄却し、女性の請求を認めました。
最高裁判所判決の評価
東京地方裁判所から最高裁判所まで、結論やその理由付けは異なるのですが、一つだけ共通していることがあります。
それは、男性が既婚者であることを知りながら情交関係を持つことは、原則として公序良俗に反すると評価している点です。
したがって、女性が既婚男性に騙されて肉体関係を持った場合であっても、男女双方の不法性を比較した上で結論を出すという判断方法は今後も変更されず、最高裁判所の示した判断方法に従って、貞操等の侵害を理由とする慰謝料請求が認められるか否かが判断されることになると思われます。
したがって、損害賠償請求が認められるためには、既婚男性の不法性を強調する事情を挙げ、不法性の比較に勝たねばなりません。
このような問題に悩まれているのでしたら、不貞慰謝料等の男女問題の解決を得意とする当事務所の弁護士に是非ご相談ください。
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当事務所サービスエリア(千葉県の裁判所管轄と裁判所所在地)
千葉/水戸地方・家庭裁判所管轄区域一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉市(中央区、花見川区、稲毛区、若葉区、緑区、美浜区)、習志野市、市原市、八千代市、市川市、船橋市、浦安市 | |
佐倉支部 | 佐倉市、成田市、四街道市、八街市、印西市、白井市、富里市、印旛郡(酒々井町、栄町) | |
一宮支部 | 茂原市、勝浦市、いすみ市、長生郡(一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町)、夷隅郡(大多喜町、御宿町) | |
松戸支部 | 松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市 | |
木更津支部 | 木更津市、君津市、富津市、袖ヶ浦市 | |
館山支部 | 館山市、鴨川市、南房総市、安房郡(鋸南町) | |
八日市場支部 | 匝瑳市、香取郡(多古町)、山武郡(芝山町、横芝光町、九十九里町)、銚子市、旭市(旧旭市、旧海上郡海上町、旧海上郡飯岡町)、東金市、山武市、大網白里市、 | |
佐原支部 | 香取市、旭市(旧香取郡干潟町)、香取郡(神崎町、東庄町) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 水戸市,ひたちなか市,那珂市,鉾田市、小美玉市の内 旧東茨城郡小川町,旧東茨城郡美野里町、那珂郡(東海村),久慈郡(大子町)、 東茨城郡の内 茨城町,大洗町,城里町(七会支所の所管区域を除く。) |
|
日立支部 | 日立市,高萩市,北茨城市 | |
土浦支部 | 土浦市,つくば市、つくばみらい市、 かすみがうら市の内 旧新治郡霞ヶ浦町、 稲敷郡の内 阿見町 美浦村、石岡市、 かすみがうら市の内 旧新治郡千代田町、 小美玉市の内 旧新治郡玉里村 |
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龍ケ崎支部 | 龍ケ崎市,牛久市,稲敷市 、 稲敷郡の内 河内町、 取手市、守谷市、北相馬郡(利根町) |
|
麻生支部 | 鹿嶋市,潮来市,神栖市,行方市 | |
下妻支部 | 下妻市,常総市,結城郡(八千代町)、結城市,筑西市、 桜川市の内 旧真壁郡真壁町、旧真壁郡大和村、 古河市、坂東市、猿島郡(五霞町 境町) |
千葉/水戸地方・家庭裁判所所在地一覧
本庁 | 支部 | 管轄地域 |
---|---|---|
千葉地方・家庭裁判所 | 千葉県千葉市中央区中央4-11-27(JR総武線・内房線・外房線千葉駅から徒歩15分、京成千葉線千葉中央駅から徒歩8分) | |
佐倉支部 | 千葉県佐倉市弥勒町92(JR総武本線佐倉駅から徒歩30分、京成本線京成佐倉駅から徒歩15分) | |
一宮支部 | 千葉県長生郡一宮町一宮2791(JR外房線上総一ノ宮駅から徒歩3分) | |
松戸支部 | 千葉県松戸市岩瀬無番地(JR常磐線松戸駅から徒歩7分) | |
木更津支部 | 千葉県木更津市新田2-5-1(JR内房線木更津駅から徒歩8分 | |
館山支部 | 千葉県館山市北条1073(JR内房線館山駅から徒歩15分) | |
八日市場支部 | 千葉県匝瑳市八日市場イ2760(JR総武本線八日市場駅から徒歩15分) | |
佐原支部 | 千葉県香取市佐原イ3375(JR成田線佐原駅から徒歩15分) | |
水戸地方・家庭裁判所 | 茨城県水戸市大町1-1-38(JR常磐線水戸駅北口徒歩約10分) | |
日立支部 | 茨城県日立市幸町2-10-12(JR常磐線日立駅中央口から徒歩約10分) | |
土浦支部 | 茨城県土浦市中央1-13-12(JR常磐線土浦駅西口から徒歩約15分) | |
龍ケ崎支部 | 茨城県龍ケ崎市4918(JR常磐線佐貫駅から関東鉄道竜ヶ崎線竜ヶ崎駅下車徒歩約20分, 又は竜ヶ崎駅からバス(江戸崎行き等)乗車5分,観音前停留所下車徒歩3分) |
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麻生支部 | 茨城県行方市麻生143(JR鹿島線潮来駅から車,タクシーで約20分) | |
下妻支部 | 茨城県下妻市下妻乙99(関東鉄道常総線下妻駅から徒歩約15分) |