倒産処理の種類
倒産とは?
「倒産」とは、法律条文に出てくる法律用語ではありませんが、一般的に、企業の資金繰りが行き詰まり、事業の継続ができなくなった状態のことを指します。たとえば、手形の不渡りで銀行取引停止処分を受けて実質的に事業の継続ができなくなった場合などです。
企業が倒産状態になった(もしくはなりそう)ときに、その処理をおこなう手続きのことをまとめて「倒産手続き」・「倒産処理」と呼ぶことがあります。たとえば、破産手続きや民事再生手続きなどがこれにあたります。また、破産手続きや民事再生手続きなど、倒産手続きのルールを定める法律(破産法や民事再生法など)のことをまとめて「倒産法」と呼ぶことがあります。
このページでは、代表的な倒産処理手続きをご紹介します。
破産
破産とは、裁判所を用いる倒産処理手続きのひとつで、簡単にいうと破産する会社や人の財産を処分してお金に換え、これを債権者に分配する手続きです。この財産の換価・分配の手続きは、裁判所が選任する破産管財人(通常は弁護士)がおこないます。
会社や法人が破産した場合は、会社等の財産はすべて清算され、会社等自体も消滅することになります。会社等自体が消滅しますので、返済できなくなった借金等もあわせて消滅することになります。
個人(自然人)が破産する場合は、財産を換価して分配する破産手続きと一緒に、返せなかった借金等を免除する免責手続きというものをおこないます。裁判所が免責許可決定というものを下すと、残った借金が免除つまりチャラになります。
特別清算
特別清算は、会社法に基づく手続きで、株式会社でなければ利用できない手続きです。
特別清算の場合は、裁判所が選任する破産管財人ではなく、会社の株主総会で選任された精算人(通常は会社の取締役等)が裁判所の監督のもと、会社の財産をお金に換え、債権者への分配をおこなうことになります。
特別清算の場合も破産と同様に、手続きが終わった後、会社は消滅し、残った借金等も消滅することになります。
ただし、実際には特別清算手続きを利用できる条件が整わないケースが多いので、特別清算はそれほど多く利用されている手続きではありません。
民事再生
民事再生は、破産や特別清算とは異なり、企業を存続させることを前提に、債権者等との間の関係を調整して事業再建を図るための手続きです。
民事再生では、裁判所や裁判所から選任された監督委員の監督のもと手続きが進められますが、実際に事業改革や再生計画案を作成したりするのは債務者自身です。
民事再生では、事業を継続しながら、不要な財産の整理等の改革やスポンサー探し等をおこなうとともに、これまでの借金を、いつ誰にいくら返済するのか等をまとめた再生計画案を提出し、借金の圧縮等が実現できるよう、債権者の賛成を集めます。
このようにして、債権者等の関係者の協力のもと、事業再建を進めていきます。
会社更生
会社更生も、民事再生と同様に、企業の存続を前提として債権者等の利害関係者との関係を調整して事業再建を図るための手続きですが、民事再生よりも大規模な会社が利用することが想定された手続きです。
民事再生との違いは、手続きの影響を受ける関係者の範囲の広さや、原則として旧経営陣の退陣が必要となることなどがあげられます。
民事再生の場合は、企業の財産に対して担保権を持っている債権者は、民事再生手続きにかかわらず担保権を実行することができます。これに対して会社更生の場合には、担保権を持っている債権者であっても会社更生手続きの影響を受けることになります。
また、民事再生の場合は、必ずしも旧経営陣が経営から離れることは必要ではありませんが、会社更生では原則として経営陣の入れ替えが必要となります。
私的整理(任意整理)
以上の裁判所が関与する手続きのほかにも、債権者等との話し合いにより問題を解決する手続きもあります。裁判外でおこなわれる倒産手続きのことを私的整理(または任意整理)と呼ぶことがあります。
事業再生ADRも私的整理のための制度のひとつです。ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、「 裁判外紛争解決手続 」 のことをいい、要するに裁判所の手続きによらずに紛争を解決する手続きのことをまとめて呼びます。
このような私的整理では、債権者の合意があれば裁判所を関与させる手続よりも柔軟な解決が可能という点や、信用不安を起こすリスクが少ないといった点にメリットがありますが、強制力がないため、債権者の合意が得られなければ手続きを進めることができないという面で一定の限界があります。