民事再生をする条件とは?
民事再生を選択するケースのポイント
企業が倒産状態におちいった場合の手続きには、大きく分けて、民事再生などの再建型の手続き、破産などの清算型の手続きがあります。
再建型の手続きである民事再生を利用するには、前提として再建の可能性が必要になります。
たとえば、営業損益では黒字が見込め、債務の圧縮をすれば債務の支払いができるかどうか、コストカットやリストラ等によって黒字化の目途が立てられるかなどを検討する必要があります。
事業の再建自体が難しい場合には、清算型の手続き(破産等)を選択しなければならないこともあります。
次に、事業の再建が見込めるとして、裁判所を通さない私的な債務整理手続きで対応することができるか、それとも民事再生を利用しなければ対処できないかを検討する必要があります。というのは、私的な債務整理手続きにより対応できる場合には、その事実を外部には知られずに処理をすることができるので、事業価値や信用の低下を最小限にして問題を解決できる場合があります。
しかし、強硬な債権者がいる場合など、債務整理の対象とすべき債権者の全員の承諾を得られない場合には、民事再生手続きを利用したほうがよいでしょう。
民事再生手続開始の申立て要件
民事再生は、①破産の原因となる事実が生じるおそれがある場合、または②債務の支払いが事業の継続に著しい支障をきたすときに申し立てることができます(民事再生法21条1項)。
破産の原因となる事実が生じるおそれ
破産の原因となる事実とは、債務者が支払不能の状態におちいったことをいいます(法人の場合は債務超過も破産原因となります)。
支払不能とは、財産・信用などからみて支払能力が一時的ではなく継続的に欠けている状態であるため、支払期限がきている債務を一般的に支払うことができない財産状態のことをいいます。たとえば、資金不足により手形の不渡りを出してしまうような経済状態であることを指します。
債務の支払いが事業の継続に著しい支障をきたすとき
債務の支払いが事業の継続に著しい支障をきたすときとは、債務者の資金繰りが難しくなり、債務を支払うためには生産設備や事業用地などの財産を売却しなければならないが、このような財産を売却してしまうと事業を続けていくことが難しくなってしまうというような場合を指します。
つまり、債務の支払いをしようと思えばできなくもないけれども、そのために払う犠牲が大きく事業を続けられなくなってしまう状態のことをいいます。
再生手続き開始の条件
民事再生手続きの申立てがあった後、裁判所ないし調査委員は、以下の申立てを認めない事由(民事再生法25条)があるかどうかを調査し、手続きを開始するかどうかを判断します。
費用の予納がないとき(1号)
債務者は、裁判所が定めた手続費用(予納金)の全額を予納しなければなりません。費用の予納がなければ申立ては棄却されます。
すでに行われている他の手続きのほうが適切なとき(2号)
すでに破産等の手続き(会社更生を除く)が進行している場合であっても民事再生を申し立てることができます(民事再生法30条1項)。
ただし、すでに進行している手続きの方が民事再生よりも債権者の一般の利益のためによいと判断された場合には、民事再生の申立ては棄却されます。
別の手続きの方が民事再生よりも債権者の一般の利益になる場合とは、事業の収益見込みが低いため、破産等をした場合よりも多くの支払いをすることができない場合や、先行する手続きがかなり進んでしまっていて、今から民事再生手続きを開始するのが不相当な場合などがあります。
再生計画案の作成、可決、認可の見込みがないことが明らかなとき(3号)
事業の将来性が乏しく、将来債権者に支払う資金をねん出することができそうもない場合などは、再生計画案の作成、可決、認可の見込みがないことが明らかであるとして、民事再生の申立てが棄却されてしまうことがあります。
「いま破産させるより得」と思ってもらえるか?
再生手続きを成功させるには、債権者の協力が必要です。再生計画案に対する一定以上の債権者の同意がなければ、再生計画案は可決されず、再生手続きを進めることができません。
そこで、債権者には、「いま破産させるよりも再生計画を信じて待ったほうが得だ」と判断してもらうことが必要になります。したがって、そのための説得力ある再建プランを立てられるかどうかが、民事再生を選択するにあたってポイントとなります。