社会更生とはなんですか?
会社更生とは、会社更生法に基づく債務整理手続きのひとつで、民事再生と同じく事業の継続を前提にその再建を目指すタイプの手続きです。
法律上の債務整理手続きには、大きく分けて、自己破産など債務者の財産を清算するタイプ(清算型)と、民事再生・会社更生等のように債務者の財産をすべて清算するわけではなく、借金のカットや分割払いの猶予を得て支払いの負担を減らし、事業再建をはかるタイプ(事業再建型)の2つの類型があります。
会社更生は、以下でご説明するとおり、手続きの拘束を受ける関係者の範囲が民事再生等よりも広く、より大規模で関係者の多い会社の事業再建を想定して作られた制度です。
民事再生との違い
会社更生は、次のような点で民事再生と異なっています。
経営者が基本的に退陣する
会社更生手続きでは、会社更生手続きが開始されると、会社の経営や会社の財産を管理・処分する権限は、裁判所が選任する更生管財人に移ります。したがって、原則として、旧経営陣は、経営に関わることができないようになります。
これに対し、民事再生手続きでは、民事再生手続きが開始されると、通常、監督命令といって、一定の重要な行為について裁判所の選任する監督委員の同意を得なければならないことになりますが、旧経営者は原則としてそのまま会社の経営・再建にあたることになります。
もちろん、取引先等の債権者の理解を得るために、旧経営者が退くこともありますが、法律上は、経営者の交代は義務とされていません。
担保権付きの債権や税金も影響を受ける
会社更生手続きでは、担保付きの債権を持つ債権者であっても、更生手続きによらなければ支払いを受けることができません。また、消費税等の租税債権についても優先的更生債権としてあつかわれ支払いが禁止されるほか、更生手続開始決定日から1年間は滞納処分(差押えなど)も禁止され、すでにされている滞納処分は中止することとされています。
これに対し、民事再生手続きでは、担保権付きの債権を持つ債権者は、民事再生手続きにかかわらず自分の担保権を実行して債権回収をはかることができますし、債権に関する手続きも止めることは基本的にできません。
手続きにより拘束を受ける関係者の範囲が広いぶん、手続きが終わるまでの時間も会社更生のほうが長くなります。
会社更生手続きが選ばれるケースとは
たとえば、次のようなケースでは、民事再生手続きによる再建が難しく、会社更生手続きを選択せざるをえないと考えられています。
- 経営陣について経営上の重大な不正が認められる場合
- 経営陣の内部対立があり、経営上の意思統一がはかれない場合
- 事業の継続によって重要な財産について担保権を持つ債権者が強硬・非協力的で話し合いが難しい場合
- 税金等の滞納額が高額である場合
- 税金等の滞納がありすでに差押えなどの滞納処分を受けている場合
ただし、会社更生手続きの場合、株式会社でなければ手続きを利用することはできません。
会社更生手続きの流れ
①事前相談
申立ての前に裁判所と予納金の金額などについて事前に打ち合わせをすることがあります。
②会社更生手続等の申立て
申立書類を裁判所に提出し、会社更生手続きの申立てをおこないます。
また、あわせて保全処分の申立てもおこないます。保全処分は、今後の会社更生手続きのために会社の財産を現状のまま凍結するために裁判所が下す命令のことです。
また、裁判所は、会社更生手続きの申立てがされると、通常、保全管理人を選任します。保全管理人は、会社の財産が流出しないようにその管理等をおこないます。また、再建の見込みがあるかどうか等を調査し、裁判所に報告をします。
③更生手続開始決定
裁判所は、法律上の要件が満たされている場合には、更生手続開始決定をおこなうとともに、更生管財人を選任します。
更生管財人は、債務者(経営者)の代わりに会社の経営や再建に必要な行為をおこないます。
④債権調査手続き
債権者は、裁判所に決められた期限までに間に、自分の持っている債権を裁判所へ届け出ます。
更生管財人は、債権者からの届出に基づき、債権調査をおこないます。
⑤更生計画案の提出
更生管財人は、会社をどう再建させていくか、債権者に対してどのような支払いをするか等を更生計画案にまとめ、裁判所へ提出します。
⑥関係人集会
更生計画案が提出されると、会社の利害関係者が集まる関係人集会が開かれ、更生計画案の決議がおこなわれます。
更生計画案が可決された場合は、裁判所がこれを認可します。
⑦更生計画の実施・終了
更生管財人は、更生計画にしたがって債権者への支払い等をおこないます。
定められた支払いが終わると裁判所が終結決定をし、会社更生手続きが終わります。