事業を残すには
当事務所へ法人の破産をご相談いただくお客様の中には、現状の財務状況はきびしいけれども、事業自体は続けていきたいというご要望をお持ちの方もいらっしゃいます。
このような場合には、事業譲渡(営業譲渡)や民事再生などの手続きによって、事業を再生できる場合もあります。しかし、そのためには、事業主が事業を続けることを希望しているだけではなく、実際に事業再生の可能性がどのくらいあるかを検討しなければなりません。
たとえば、業績自体は悪くないが借入金や金利の負担が大きく、このままでは事業を続けていくことが難しいという場合や、ある事業は好調だが他の事業の業績不振のため、全体としては赤字となっている場合などには、適切な法的手続きや事業改革をおこなうこと等によって、事業を維持することができる可能性もあります。
事業譲渡(営業譲渡)
たとえば、新しく会社を設立して、新会社に事業譲渡(営業譲渡)をおこない、旧会社と経営者については自己破産申立てをおこなうといった方法があります。
この場合には、好調な結果を出している事業を継続させることができる点で社会的な利益も生まれますし、新会社で従業員が引き続き雇用されることになれば、その従業員の生活が守られることにもなります。
ただし、旧会社が倒産の危機にひんしている場合の財産の譲渡は、適正な手続き・内容でおこなわなければ、後で旧会社の破産管財人によって効力を否認されてしまったり、場合によっては犯罪行為となってしまったりします。
たとえば、事業譲渡(営業譲渡)では、どの範囲の財産や負債を譲渡するのか、その対価はいくらか、対価がきちんと支払われているか、などといった点に注意をしなければなりません。
事業譲渡(営業譲渡)の際に譲渡される財産は、在庫商品や設備機械などの動産や事業用地などの不動産のように目に見えるものだけではなく、ノウハウやのれんの権利なども含まれることがあります。このような財産についても適切な対価を計算する必要がある場合があります。
儲かっている事業を不当に安い価格で譲渡するなど、債権者を害する行為をしたと判断されてしまうと、その効力が否定されてしまったり、旧会社や経営者の破産手続き等において不誠実な行為であると問題視されたりしてしまう可能性があります。
そのため、事業譲渡(営業譲渡)をおこなう際には、ぜひ破産手続き等に精通した弁護士に相談することをおすすめいたします。
事業譲渡(営業譲渡)をおこなってしまった後では対応できないトラブルも考えられますので、事業譲渡(営業譲渡)をご検討の場合には、ぜひ一度、事前にご相談ください。
民事再生
また、民事再生手続きを申し立てることによって、事業を維持しながら借金の圧縮等をするという方法もあります。
世間的には民事再生に「=倒産」というイメージもありますので、民事再生手続きの申立てによって、信用が低下してしまう可能性はありますが、長期的にみれば業績を回復し、事業を再建することができる場合もあります。
ただし、民事再生で事業を再生するには、債権者集会で再生計画案が可決するまでの期間の資金繰りを自力で乗り切ることができることと、破産をした時よりも将来多くの配当を生み出すことができるための事業計画を作り出すことができることが条件となります。
事業再生を成功させるには
事業再生を成功させるのに重要なことは、早期に対応をすることです。
事業再生をはかるには、まず現状の資金繰りなどを正確には把握することからはじまります。そのための時間を確保する必要があります。
また、再生手続きをするためには、債権者から再生計画案への同意をとりつける必要があります。さまざまな支払いが遅れて、債権者の数が増え、関係が複雑になればなるほど、再生計画案への賛成を得るのが難しくなります。そのような事態になる前に対応をする方が望ましいといえます。
事業再生のチャンスは、時間が経つにつれて減ってしまうことが多いです。ぜひ一度お早めにご相談ください。
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