裁判所での民事再生事件の流れ
①民事再生手続きの申立て
民事再生手続きの申立ては、申立書類を裁判所へ提出する必要があります。 申立書には、以下の事情などを記載します。
- 債務者の事業の内容とその状況
- 再生手続開始の原因となる事実
- 債務者の資産・負債の状況
- 事業再建案・再生計画案の作成方針
また、申立書の添付資料として、債権者一覧表、貸借対照表・損益計算書、資金繰り表などの書類を提出します。
②保全処分
保全処分とは?
民事再生の申立てをおこなうと、その事実が債権者等の関係者に伝わり、混乱が生じる可能性があります。
民事再生の場合、申立てから再生手続開始決定が出て債務者の支払禁止等の効力が発生するまで多少のタイムラグが生じることがあります。
その間に債権者からの取り立て行為などがおこなわれてしまうと、事業の再建が困難となったり、債権者の間で不公平な結果を生じることになったりしてしまうなど、今後の民事再生手続きを進めるうえで不都合な事態が生じてしまいます。
そこで、民事再生を申し立てる際には、通常、裁判所から必要な保全処分の決定を得ておく必要があります。
弁済禁止等の保全処分とは?
通常の民事再生事件の場合、債務者が申立日までの原因により生じた債権について弁済及び担保提供の禁止を命令する保全処分が発令されます。
これにより、債務者は、債権者への支払いや担保の差し入れを基本的に禁止されることになります。
債務者への禁止命令ですが、実際には、処分がないと債務者が積極的に一部の債権者への支払いをしてしまうからというよりも、「裁判所から禁止されているから払えない」と債権者などに納得してもらう理由として使われることが多いです。
保全処分には、ほかにも財産の処分禁止や、借財の禁止などを内容とするものがあります。
ただし、これらの保全処分は、通常は、民事再生申立て後すぐに監督命令が発令され、重要財産の処分や借財に裁判所の同意が必要とされるので、重複して保全処分をする意味がなく、あまりおこなわれません。
監督命令とは?
監督命令とは、民事再生手続きの申立てがあった時に、裁判所が監督委員による監督を命令することをいいます(民事再生法54条1項)。
監督命令では、裁判所が監督委員を選任し、監督委員の同意なしに債務者ができない行為(重要な財産の処分や借財など)を指定します。
監督委員の同意を要するとされた行為で、同意を得ずにされた行為は無効となります。
③債権者説明会
債権者説明会とは、民事再生手続き申立ての直後におこなわれる債権者等関係者への説明会です。
法律で債権者集会の開催が義務付けられているわけではありませんが、債権者説明会を開催した場合には、そのポイントを裁判所にも報告することとされています(民事再生規則61条2項)。
債権者集会は、申立て直後の混乱をおさめるために、債務者や申立代理人がこれまでの経緯や今後の見通し、一般的な質問事項等について説明をすることを主な目的とします。そのため、通常は、申立ての直後に開催されることが多いです。
債権者集会には監督委員がオブザーバーとして出席し、その内容を観察したりなどして、民事再生手続開始決定をすべきかどうか、開始決定後に手続きがスムーズに進むかなどを裁判所に報告することがあります。
④債権調査・財産評定
裁判所が民事再生手続きの開始を相当と判断した場合には、開始決定がされます。 その後は、債権者は裁判所の手続きにしたがって、債権届出の手続きをします。債務者は、届出された債権についての認否を記載した書面を裁判所へ提出します。 また、債務者は、今残っている財産の評価をおこない、財産目録や貸借対照表等の書類を裁判所に提出します。
⑤再生計画案の提出
債務者は、決められた期限内に再生計画案を裁判所に提出します。
再生計画案とは、将来にわたってこの金額をこのようなスケジュールで返済するという計画を記載したものです。
再生債務者が提出した再生計画案は、監督委員によって調査され、裁判所へその結果が報告されます。
監督院は、再生計画案が法律のルールに違反するものでないかどうか、再生計画案が実現される見込みがないのではないか、再生計画案の内容が債権者の一般の利益に反しないかどうかなどを調査します。
裁判所は、監督委員から提出された調査報告書(再生計画案に対する意見書)を参照して、再生計画案を債権者の決議にかけるかどうかを判断します。
⑥債権者の決議
裁判所が再生計画案を債権者の決議にかけると判断した場合には、債権者による決議がおこなわれることになります。
債権者による決議の方法には、債権者集会を開いて決議をおこなう方法と書面により投票をおこなう方法またはそれらを併用する方法があります。一般的には、債権者集会を開いて決議をおこなうことが多いようです。
⑦再生計画案の認可・実行
債権者集会で債権者の決議が得られた場合、特に問題がなければ、裁判所が再生計画の認可決定をします。 この認可決定が確定した後は、債務者は、再生計画の内容にしたがって事業を進め、債権者への支払いをしていくことになります。