慰謝料とは
交通事故における慰謝料とは、交通事故によって受けた心の傷をつぐなうためのお金のことをいいます。
交通事故によって受けた心の傷は、本来であれば一人ひとりの性格や状況などによって違ってくるはずです。
しかし、似たような交通事故であまりにも慰謝料の金額に違いが出てしまうと不公平なので、一定の基準が決められています。
人身事故の場合
入院・通院慰謝料
入院や通院の期間に応じて慰謝料の金額の目安が決められています。
ただし、けがの内容や特別の事情などによって金額が変わることもあります。
たとえば、次のような裁判例があります。
- 大学3年生が留年したことによる慰謝料を認めた例(岡山地判平2.9.28交民23-5-1257)。
- 重い後遺障害を負った主婦が、合計3年以上の入院生活を送らなければならなくなり、夫と離婚してしまった場合に乳通院慰謝料600万円を認めた例(東京地判平14.4.16交民35-2-518)。
後遺症慰謝料
自賠責保険の後遺障害に該当するものについては、その等級にしたがって慰謝料の基準が定められています。
もっとも、後遺障害の内容や仕事の状況などによっては、基準と異なる慰謝料を請求できる場合もあります。
また、自賠責保険の後遺障害に当たらない後遺症についても、その内容や状況により、慰謝料を請求できることもあります。
いわゆる植物状態など重い後遺障害が残ってしまった場合には、本人だけではなく家族の分も慰謝料を請求できることがあります。
死亡事故の場合
死亡慰謝料
事故にあった人の家族構成などにより、一定の基準が決められていますが、他にもさまざまな事情を考慮して金額が決められます。
(例)
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2400万円 |
独身の子どもなど | 2000万円~2200万円 |
上に当てはまるすべてのものについて、交通事故により高次脳機能障害になったと認められるとはかぎりません。
慰謝料の増額の理由となる可能性がある事情
①事故の相手がわざと事故を起こした場合、事故の相手にひどい不注意があった場合や、事故の相手がきわめて不誠実な態度をとっていた場合には、慰謝料が増額されることもあります。
たとえば、事故の相手が飲酒運転をしていた、ひき逃げをしたなどの事情です。
②事故にあった人の家族がPTSDなどの精神疾患になった場合、そのことも慰謝料の金額に反映される可能性があります。
物損
自動車の修理費
「適正な修理費に相当する額」を請求できる可能性があります。
ただし、「全損」となった場合は、「事故当時の自動車の時価+登録費用などの買替諸費用」と自動車を処分した価格との差額(「買替差額」)が基準となります。
「全損」とは、自動車の壊れ方が激しく修理をすることが出来ない場合だけではなく、修理費用が自動車の時価よりも高くなってしまう場合も含まれます(「経済的全損」といいます)。
自動車の時価額の参考とするもの
裁判では、鑑定の結果、オートガイド自動車価格月報(「レッドブック」)や中古車価格ガイドブック(「イエローブック」)、日本自動車査定協会の査定、減価償却額などが参考にされることがあります。自動車の種類や事故の状況などによって異なります。
買い替えの諸費用について
基本的に後遺障害の等級によって決まるが例外もある
登録・車庫証明・廃車の費用のうち法定手数料に当たる部分、ディーラーへの報酬額のうち相当額、自動車取得税については損害と認められる可能性があります。
買い換えた車の自動車税、自動車重量税、自賠責保険料については請求できません。
事故にあった車の自賠責保険料を請求することはできませんが、自動車重量税の未経過分については、請求できる可能性があります。
評価損
修理をしても完全に元に戻らない部分があったり、事故歴が残ったりしてしまったことによって車の評価価格が下がってしまった場合(評価損)は、差額を請求できることもあります。
レンタカー代など(代車使用料)
代車を使う必要が認められる場合には、修理に必要と考えられる期間(買い替えの場合は買い替えに必要と考えられる期間)の費用を請求できる可能性があります。
修理に必要と考えられる期間は、1週間~2週間とされることが一般的です。
雑費
交通事故により以下の費用を支払ったときは、その金額を請求できる可能性があります。
- 車両の引きあげ費、レッカー代
- 保管料
- 時価査定料・見積もり費用など
- 廃車料・車両処分費など
休車損害―営業用車両の場合
営業用車両(緑ナンバーの車)の場合には、車の修理や買い替えなどのため使用できなかった間に得られたであろう利益を請求できることもあります。
代車など他の車を使うことができる場合には、請求できないことがあります。
営業損害など
家やお店に車がつっこんだ事故などの場合に、請求できることがあります。
慰謝料
物損の慰謝料は、基本的に認められません。
ペットがけがをしたり死んでしまったりした場合には、事故の状況などによって慰謝料を請求できることがないわけではありません。
たとえば、犬の葬儀費用や飼い主への慰謝料を認めた裁判例として、東京高判平16.2.26交民37-1-1などがあります。
損益相殺
事故にあった人が交通事故を原因としてお金などを受け取ったときは、その額をさし引くことがあります。事故にあった人が重ねて利益を得ることは不公平だからです。
このことを「損益相殺」といいます。
さし引かれる主なもの
- 自賠責保険の損害賠償金
- 公的保険制度による給付
- 国民年金・厚生年金などの公的年金制度による給付
賠償額の減額事由
無償同乗
事故を起こした車に乗っていただけでは減額の理由とはならないことが多いですが、運転手の危険な運転にかかわったと認められる場合には、賠償金の額が減額されることもあります。
たとえば、次のような裁判例があります。
- 友人同士でスキーに出かけ、運転手が前日の夜も友達を迎えに運転をし、当日もスキー場と友人のもとを往復した後にスキー場からの帰り道を運転していた場合で、運転手の立場に配慮を欠いていたことから20%の減額を認めたもの(岡山地判平6.4.28交民27-2-545)。
- 運転手が飲酒運転だと分かっていながら同乗したことから20%の減額を認めたもの(東京地判平7.6.21交民28-3-910)。
- 運転手が免許を取得したばかりで運転技術が未熟であることを知っていたこと、ほぼ徹夜の後の運転であることを知りながら同乗していたことなどから15%の減額を認めたもの(大阪地判平7.6.22交民28-3-926)。
過失相殺
過失相殺とは?
事故の被害者にも落ち度があるときには、その程度に応じて、加害者が支払う賠償額が減額されます。このことを「過失相殺」といいます。 また、どちらにどれくらい落ち度があったのかを数字で表したものを「過失割合」といいます。
たとえば、過失割合が「20:80」である場合には、「被害者の落ち度が20%、加害者の落ち度が80%」という意味です。この場合には、加害者が支払う金額から20%が減額されることになります。
過失割合はどのようにして決まるの?
車同士の事故か歩行者との事故か、信号のある交差点か信号のない交差点かなどの色々な事情を考慮して、事故のタイプごとに過失割合の基本的な基準が決められています。
争いになる場合には、最終的には裁判所が判断します。
素因減額
素因減額とは?
もともとのからだの問題があいまって障害が残った場合に、けがをした人が受けとることのできる金額を減額することを法律用語で「素因減額(そいんげんがく)」といいます。
どういうことかというと、たとえばあなたが大きなガラスにぶつかってしまって割ってしまったけれども、もともとガラスにはひびが入っていて、ひびがなければぶつかってもガラスは割れなかった場合、ガラス代を全部弁償しろといわれたら、「もともとガラスにはひびが入っていたから、全部が自分のせいではない」と言いたくならないでしょうか?
このように、もともと事故にあった人のからだに何か問題があって、そのせいもあって障害がのこったときに、全部の責任を、けがをさせた人だけに負わせるのは不公平ではないかということで賠償金の調整をすることを「素因減額」といいます。
どのような場合に減額がされるのか?
裁判所は、事故にあった人に通常とことなる「身体的特徴」があったとしても、「それが『疾患』に当たらない場合には、特段の事情が存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできない」としています(最判平8.10.29民集50-9-2474)。
つまり、もともとのからだの状態もあって障害が残ってしまった場合でも、もともとのからだの状態が「疾患」にあたらないかぎりは、保険金の減額の理由とはなりません。
この判決は、事故にあった人にふつうの人よりも首が長いという特徴があったことから「首長事件」とも呼ばれています。
世の中にはいろいろな人がいるのは当たり前のことですから、個性の範囲内と認められるものについては減額の理由となりません。
逆に、「後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)」をもともと患っていた人に関する事件では、事故にあった人の「疾患」がその「治療の長期化や後遺障害の程度に大きく寄与していることが明白」な場合には、損害の額を定めるにあたり「疾患」をしんしゃくできるとして、最終的に30%の減額をみとめています(最判平8.10.29交民29-5-1272、大阪高判平9.4.30交民30-2-378)。
つまり、この判決は、「後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)」が減額の理由となる「疾患」にあたることをみとめ、この「疾患」のせいで治療が長びいたり、ひどい障害が残ってしまった場合には保険金の減額がされることを認めたものです。
「特徴」と「疾患」のちがいとは?
では、どのような場合が「疾患」にあたるのかというと、それはひとつひとつの事故の状況や、ひとりひとりのからだの状態によっても考え方が違ってくるので、はっきりとした基準があるわけではありません。
ポイントとしては、たとえばつぎのものがあげられます。
- そのからだの状態が、障害をひどくする原因となっていると医学的にいえるかどうか
- 「特殊」な素因といえるかどうか、病気などの程度が軽いかどうか
- 事故にあわなくても障害が出た可能性がどのくらいあるか
- 事故の大きさと障害の重さのバランス
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浦和駅西口から国際興業バス 「志木駅東口・西浦和車庫・蕨駅西口(北町4経由)→県庁前下車」
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(JR南越谷駅・東武伊勢崎線新越谷駅下車→南越谷駅北口朝日バス乗場(花田行・市立図書館行)→法務局前下車)
(東武伊勢崎線越谷駅下車→越谷駅東口朝日バス乗場(市立病院・いきいき館行・増林地区センター行・総合公園行)→市立病院前下車)
((市立病院経由)吉川駅北口行・レイクタウン駅行→法務局前下車)
- 埼玉県越谷市東越谷9-2-8
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(川越駅・本川越駅から東武バス「神明町車庫」方面(月吉町経由を除く)行「喜多町」下車) (川越駅・本川越駅から東武バス「埼玉医大」方面行「裁判所前」下車)
- 埼玉県川越市宮下町2-1-3
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