定期借家契約の特徴
一定の期間が経過したら賃貸借契約を終了させたいと考えていますがどうしたらいいですか?というご質問をよくいただきます。
このようなご希望の場合、定期借家契約(定期建物賃貸借契約)を締結することをお勧めします。
普通借家契約とは異なり、期間満了後に確実に契約を終了させることができます。
このページでは、定期借家契約について説明します。
1.定期借家契約と普通借家契約
賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約があります。
定期借家契約とは、契約の更新がない建物賃貸借契約で、契約期間が満了した時点で確定的に契約が終了します。
そのため、契約時に定めた期間の経過後に確実に建物の返還を受けることができます。
契約期間は賃貸人が自由に定めることができます。ただし、この定期借家契約は、借地借家法38条の要件を満たした場合にのみ有効となります。
これに対し、一般的な普通借家契約は、契約の更新が容易とされています。
すなわち、存続期間を定めた場合には、その期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手方に対して更新しない旨の通知等をしなかったときは、従前と同一の条件で契約を更新したとみなされます(法定更新)。
さらに、賃貸人からの上記通知は、更新を拒絶することについての正当事由が求められており、賃貸人にその立証が要求されます。これらのことから、賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶するのは容易でないといえます。
一定期間経過後に契約を終了して建物の明渡しを求めたいのであれば、この定期借家契約を締結するのが確実であると言えるでしょう。
なお、契約期間が1年以上の場合は、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に契約が終了することを通知する必要があるので注意が必要です。
2.定期借家契約として有効とするために必要な要素
定期借家契約を有効にするためには、一定の要件を満たしている必要があります。
定期借家契約は、更新されないという点で賃借人に不利な契約です。そのため、定期借家契約ではその点に関する明確性が要求されます。
したがって、借地借家法38条では、次のとおり契約書の作成と説明書の交付等が必要とされています。
(1) 契約書の作成(1項)
借地借家法38条1項は、「公正証書による等書面によって契約をする」ことを要求しています。
書面は公正証書に限定されるわけではなく、私製の契約書でも問題ありません。
重要なのは、契約書において、契約の更新がなく期間の満了により契約が終了することを明記することです。
(2) 説明書の交付(2項)
借地借家法38条2項では「あらかじめ、建物の賃借人に対し…建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明」すること(同条2項)を要求しています。
つまり、賃貸人に対して、書面を交付した上での説明義務を課していることになります。以下では、この書面を「説明書」といいます。
賃貸人がこのような説明をしなかった場合、定期建物賃貸借契約としての効力はなく、普通建物賃貸借契約として扱われてしまうことになります(法38条3項)。
3.説明書は契約書で兼ねることが出来るか
この点について、判例は、契約書とは別個独立の説明書を交付する必要があると判断しています(最高裁判所平成24年9月13日判決)。
その理由として、法38条1項に加えて、同条2項を規定した趣旨は、賃借人に対し、「定期建物賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することを理解させ、当該契約を締結するか否かの意思決定のために十分な情報を提供すること」のみならず、「説明においても更に書面の交付を要求することで契約の更新の有無に関する紛争の発生を未然に防止すること」であるとしています。
そのため、賃貸人としては、この判例に従い、定期借家契約書の締結に先立ち、契約書とは別個独立に、契約の更新がなく期間の満了により建物の賃貸借が終了することを記載した説明書を賃借人に交付し、その内容を説明する必要があります。
書面の交付をしなかった場合、判例上は、更新がないという定期借家契約としての効力が否定され、普通借家契約として扱われてしまいます。
そのため、必ず契約書とは別個に説明書を交付して説明をすることが不可欠です。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。