任意整理がうまくいかない場合とは
任意整理が失敗してしまう例とは
各相手方(貸金業者)との交渉が上手くいき、和解が成立したとしても、途中で約束どおりの支払いができなくなり、任意整理が失敗してしまうケースも世の中にはままみられます。
どのような場合に、任意整理が失敗してしまうのでしょうか?
また、どのような点に気を付ければ、失敗しない任意整理ができるでしょうか?
お客様の決意
多くのケースでは、お客様には3~5年間、余分な支出を減らし、各相手方への分割払いを続けていただくことになります。実際に分割払いを続けてみると、3年間というのはかなりの長さとなります。
長期間、支出を抑えて生活を切り詰め、滞りなく分割金を支払うには、相当の忍耐が必要となります。
まずはお客様ご自身に支払いを続けて生活を立て直すことへの決意がなければ、任意整理を成功させることは難しいです。
家計や生活の見直し
借金問題を解決するためには、家計を見直し、その原因を分析して対策を立てる必要があります。そうでなければ、たとえ任意整理に挫折しなかったとしても、将来また同じように借金を繰り返して苦しい思いをしてしまうかもしれません。
多重債務に陥ってしまう原因は、簡単に言ってしまえば、「収入が減ってしまった」か「支出が増えてしまった」かのどちらかです。ですから、経済的立ち直りを目指すには、収入を増やすか支出を減らすしかありません。
その方の状況にもよりますが、収入を増やすことが難しければ、支出を減らすしかありません。支出の内容をもう1度見直して、それぞれの支出が本当に必要なものであったかを点検する必要があります。
債務整理をするうえで、何かを処分しなければならないことがあります。たとえば、住宅ローンの支払いができないのであればマイホームを手放さなければならないこともありますし、自動車ローンの支払いができないのであれば自動車を手放す必要があります。
これらの財産は、任意整理に失敗して自己破産をしなければならない事態に陥った場合には、結局処分しなければならないことがあります。
もちろん大切な財産を手放すことはとても辛い決断でしょうが、ある財産を残したいために無理な任意整理を試みて、結局失敗して自己破産をしなければならなくなった場合には、それまでにかかった費用や時間が無駄になってしまいます。
また、任意整理は、裁判所を通さない手続きですので、ご家族にも知られずに借金問題を解決することができる可能性があるという、他の手続きにはないメリットがあります。
もちろん、弁護士には守秘義務がありますので、お客様のご要望にしたがって、ご家族に知られないように最大限の配慮をさせていただきます。
しかしながら、本当にご家族に内緒にし続けることが適切なのかどうかは、今一度お考えいただきたいポイントです。
借金のことが知られてしまわないか怯えて過ごすよりも、思い切ってご家族に打ち明けた方が、精神的にも楽になり、経済的に立ち直るという意欲が増すこともあります。また、ご家族の目があれば、余分な出費がおさえられるなど、お1人で努力を続けるよりも問題の解決を確実にすることができるかもしれません。
正確にご申請ください
相手方と交渉等をおこなうのは弁護士ですが、将来の支払いを続けていくのはお客様ご自身です。弁護士へのご申告に誤りがありますと、適切な交渉や和解をすることができません。特に、収入と支出の状況、生活状況の変化などについて隠し事がございますと、事件解決の前提がくつがえされてしまうことがあります。
弁護士には守秘義務がございますから、お客様からお聞きした情報を他者に漏らすことはございません。
勤務先の業績が悪くて収入が減少するかもしれない、事情が変わって必要な支出が増えため生活が苦しい…などといったご事情は、おっしゃりにくい事柄とは思いますが、すぐに当事務所までご申告ください。
そもそもの任意整理の選択が適切か
また、任意整理が途中で失敗してしまったケースには、そもそも債務整理の手段として任意整理を選択したことが果たして適切だったのかを考えさせられるケースがあります。
任意整理において、どのような返済スケジュールによって借金の返済をしていくかは(相手方の合意が得られる限り)自由ですが、相手方の合意があるからといって、あまりに長期の分割払いの約束をすることは、おすすめできません。
法律上はお金を支払う側が支払費用を負担するのが基本です。任意整理の場合、月々の入金の振込手数料等は支払う側―つまりお客様の負担となります。
少額の支払いを長期間続けるとなると、振込手数料の負担も軽視できません。
また、裁判所の関与のもと借金を減額して分割払いをするという個人再生(民事再生)の手続きでも、分割払いの期間は通常3年間(最大5年間)までにすることとされています。これは、「通常の人が節制を続けて支払いを続けることができる期間は3年間が限度である」という考えないし経験がひろく共有されているからです。
長期的なスパンで和解案を考える
支払いが遅れていることの申し訳なさ等からか、月々の支払可能額を本当にぎりぎりいっぱい背伸びした金額で申告される方もいらっしゃいます。
少しでも早く解決したい、返済をしたいというお気持ちは分かりますし、とても大切なことですが、将来多少の事情変更があったとしても本当にその金額を支払えるのかどうか、和解をする前によくお考えいただきたいと思います。いったん和解が成立してしまいますと、内容を変更することは通常できません。
現時点ではその金額でお支払いが可能としても、将来、必要な支出が増える可能性はありませんか?
もちろん将来のことすべてを予測することはできませんが、賃貸アパートの更新、ご家族の出産・進級・進学など、ある程度の見積もりが可能なイベントもございます。もし将来のお支払いに関して不安なことがございましたら、ぜひご相談ください。