任意売却とは?
「任意売却」(任売)とは、ローンを返すことができなくなった不動産を、ローンの借主・ローンの貸主・不動産の新しい買主の3者で話し合い、裁判所の競売手続きを利用せずに売却することをいいます。
任意売却とはどのようなものかを把握するためには、これと対比される「競売」と比較して説明するのが理解しやすいと思います。
そこで、まず、任意売却について、競売との違いをご説明します。
任意売却のメリット・デメリット
「競売」とは、ローン等の貸主が裁判所に申立てをして、裁判所の力で強制的に対象不動産を処分して、その売却代金から配当を受けるというシステムです。
競売では時間や手間が必要
任意売却では、不動産やローンについて利害関係を有する人たちの間で話をまとめるのに手間がかかりますが、そこさえクリアできれば、競売よりも短期間で問題を解決できる場合が多いです。
これに対し、競売手続では、競売手続の申立書を作成して提出し、予納金(手続きを進めるのに必要なお金)を納付しなければなりません。
また、競売手続では、手続きの申立てから不動産の落札が終わるまで、早くて6か月、場合によっては1年以上かかることがあるといわれています。
任意売却の方が高い価格で売却できる
競売手続きでの売却基準価格は、時価(市場価格)の60%~70%が一般的だといわれています。
これは、競売手続きで不動産を購入した買主には、通常の不動産取引の買主よりも自己責任の範囲が広く、制限された保護しか受けられないことなどから、不動産価格を割り引いて評価すべきとされているためです。
また、すぐに買い手が見つかる物件もありますが、1回目の入札では買い手が見つからない物件もあります。このような物件では、さらに価格を下げて入札が3回まで繰り返されることになりますが、このように時間が経過するたびに売却基準価額や不動産の価値はどんどん下がっていきます。
これに対し、任意売却の場合には、一般的に競売手続きによるよりも高い価格で不動産を売却できるといわれています。
任意売却の場合には、利害関係者の全員が納得できればどのような金額・条件で不動産を売却しても自由です。ローンを借りている人にとっては、少しでも不動産が高く売却されローン残高が少なくなった方がメリットが多いことはいうまでもないでしょう。
任意売却をするのに必要なこと
不動産の持ち主に売却と協力の意思があること
任意売却は、競売と違い、不動産の持ち主から無理やり不動産を取り上げて売却する手続きではありません。
ですから、任意売却をするためには、前提として持ち主の「不動産を売る」という意思が必要です。また、不動産を売る以上、売主として一定の協力を買主にする義務があります。
逆にいえば、いくら銀行等が任意売却をすすめてきても、不動産の持ち主(多くの場合ローンの借主でもある)が任意売却を決断しないかぎり、銀行等が無理やり任意売却をさせることはできません。
対象不動産に権利を持つ関係者の同意
任意売却をする不動産には、さまざまな権利が付けられていることがあります。
不動産を購入する場合は、抵当権という、自分の貸付け等が回収できない場合に不動産からこれを回収できるという権利を、ローンを組む時に設定することが一般的です。
また、税金等の滞納があった場合などに、不動産に対する差し押さえがされることがあります。
抵当権や差し押さえがされたままでは、不動産の買い手が見つけることは通常できませんので、解除の条件について交渉・合意を得る必要があります。
(売主が破産者である場合)裁判所の許可があること
売主が破産者である場合には、破産した売主の代わりに不動産を売却する権限を持つ破産管財人は、売却にあたって裁判所の許可を得なければなりません。
この時、破産管財人は、売却価格が妥当であることを裁判所に説明する必要があります。
任意売却の一般的な流れ
①任意売却の相談・申し出
ローンの支払いが苦しくなって任意売却をしようと考えたら、まずは任意売却を取り扱う不動産業者と相談をするのが一般的です。
不動産業者に不動産の査定をしてもらい、これをもとに、任意売却の具体的な計画やスケジュールを立てます。合意に至ったら不動産業者と媒介契約を締結します。
ローンの貸主と相談して、任意売却を取り扱う不動産業者の紹介を受ける場合もあります。
②債権者等との交渉・購入希望者探し
媒介契約に基づき、不動産業者が買い手を探します。また、売却価格や売却時期などの売却条件について債権者(貸主等)・権利者と交渉を行い、任意売却の同意を得ます。
必要な手続きは、不動産業者と銀行等の貸主でおこなわれますが、買い受け希望者が内覧等をする場合には協力するなど、借主も協力を求められることがあります。
③配分案の作成・関係者との調整
買受人が見つかったら、売却代金を誰にどのように分配するのかを示す配分案が作成されます。
担保権(抵当権)を持っている債権者や差し押さえをしている権利者がある場合には、これらの権利者等と担保権・差し押さえの解除料等について調整がおこなわれます。
④決済日
関係者との調整が終わったら、決済日に売買契約書の取り交わしと売却代金の配分、担保権等の解除や登記移転に必要な書類の作成や受け渡しなどをします。
銀行の応接室を利用して決済をおこなうことが多くあります。
決済日に必要な手続き(不動産登記手続き等)を行い、任意売却が終了となります。