任意整理とは
任意整理とは、裁判所を通さずに、貸金業者などの借主と交渉し、毎月支払える範囲の金額で分割払いとするなど、返済条件・返済スケジュールの見直しをする方法です。
裁判所を利用しない手続きという点で、自己破産・個人再生・特定調停などの手続きと違います。
また、任意整理は、通常の場合、自己破産のように借金の支払いの一切を免れるという手続きではありません。したがって、任意整理をして借金問題を解決するためには、安定した収入があったり、親族から援助を受けられる見込みがあったりなど、一定程度の返済能力が必要となります。
また、任意整理に限らず、弁護士を通じて借金問題の解決を図るときには、貸金業者に対して取引履歴の開示を求め、利息制限法に基づき引き直し計算を行います。
引き直し計算をした結果、払い過ぎた利息があり、返済額が思っていたよりも減額されることがありますし、さらには過払い金が発生していてお金が戻ってくることさえあります。
任意整理のメリット
債権者からの督促がストップします
弁護士に任意整理を依頼した場合には、相手方である貸金業者からの支払いの督促がいったんストップします。
これは、弁護士が受任通知という書類を発送した後は、貸金業者が直接取り立てをすることが法律上禁止されているためです。
したがいまして、弁護士に任意整理を依頼した後は、請求書や督促状が送付されたり、繰り返し督促の電話をされたりといったことがなくなります。そのため、気持ちを落ち着かせて、お仕事に専念したり、家計収支の見直しをしたりなどができるようになります。
支払い金額を減少できることがあります
弁護士は、貸金業者から取引履歴の開示を受け、現在の借入れ残高を利息制限法に基づき計算し直します(引き直し計算)。
計算をし直した結果、払い過ぎた利息がある場合には、借金の金額が減少することがありますし、すでに支払いが終わっていて過払い金が発生していたことが判明する場合もあります。
このように、引き直し計算や過払金の回収などによって、借金の金額を減らすことができる場合があります。
また、引き直し計算をしても借金が残っている場合には、弁護士がお客様の代わりに、将来の利息の減額や、月々可能な範囲での分割払いなどを交渉していきます。将来の利息を減額してもらうことで、返済金額を減らすことができる場合があります。
特定の借金についてのみ任意整理をすることができます
任意整理は、裁判所を通さずに、貸金業者等の債権者と話し合いにより返済スケジュールを変更する手続きです。そのため、任意整理をする借金の範囲は、自由に決めることができます。
自己破産や個人再生など裁判所を通じた他の手続きでは、すべての借金を申告して手続きをしなければなりません。そのため、友人や家族からの借金だけは払う、車を手放したくないので車のローンだけは払う、といったことは基本的にできません。
これに対し、任意整理の場合には、特定の借金についてはそのまま支払い、特定の借金についてのみ任意整理をおこなうということができます。
他人に知られる可能性が少ない
自己破産や個人再生などの手続きをした場合には、氏名等が官報に掲載されることになります(とはいえ、一般の方は官報を目にする機会はありませんから、官報に掲載されたからといって破産等をしたことが周囲に知られる可能性はほとんどありません)。これに対し、任意整理の場合はそのようなことはありません。
また、自己破産や個人再生の場合は、同居の家族等の収入に関する書類を裁判所へ提出しなければなりませんので、ご家族に知られずに手続きをすることは困難な場合が多いです。これに対し、任意整理の場合には、そのような書類を提出する必要がありませんので、家族に知られず任意整理をすることができる場合があります。
資格制限がない
自己破産をした場合は、警備員や保険外交員など、一定の職業についている方は資格制限の影響を受けることがあります。
これに対し、任意整理にはそのような資格制限の制度はありません。
任意整理をするデメリット
信用情報機関に記録される(いわゆるブラックリスト)
任意整理をすると、信用情報機関に事故情報として記録されます(いわゆるブラックリスト)。
そのため、弁護士を通じて任意整理をした後は、一定期間、新しく借入れをしたり、クレジットカードを作ったりすることが難しくなります。新しく借入れ等ができるまでの期間は、金融業者によって異なりますが、約3~7年程度といわれています。
ただし、すでに数か月分の支払いを滞納している場合などには、すでに信用情報機関に登録がされている場合が多いです。このような場合には、信用情報機関に情報が記録されるというデメリットを気にする意味はありません。
一定程度の支払い能力が必要
先ほどご説明したとおり、任意整理は、自己破産等のように借金をすべて免除できる手続きではありません。また、個人再生と異なり、相手方である貸金業者等の意思に関係なく一方的に借金の減額ができる手続きでもありません。
利息制限法に基づく引き直し計算をしてもなお借金が残る場合には、残額を分割して返済していく必要があります。多くの貸金業者は、3年間(36回払い)までの範囲で分割払いに応じてくれることが一般的です。また、貸金業者によっては5年間(60回払い)の分割払いに応じてくれる場合もあります。しかし、それ以上の長期にわたる分割払いに応じてくれることは少ないですし、仮に相手方が長期の分割払いに応じてくれたとしても、支払いをする側が挫折してしまうこともあります。
したがって、任意整理によって借金問題を解決するには、借金の総額が3~5年間の分割払いで返済できる範囲であることが必要です。この支払いができる程度の収入がない場合などには、自己破産等別の手続きを検討する必要があります。