マイホームを維持することはできますか?
任意整理ならマイホームを維持できる場合があります。
月々の支払いが苦しいので打開策をとりたいけれど、マイホームはどうしても維持したい…そういったお悩みをお持ちの方はとても多いです。マイホームを手放すとなると、お子様の転校など、ご家族やお子様の生活も変えなければならなくなってしまうことがありますし、お気持ち的にも受け入れられない方も多いでしょう。
このような場合、ある程度の収入がある方であれば、マイホームを手放さずに月々の支払いを減らし、生活を楽にすることができる場合もあります。マイホームを維持しながら借金問題を解決する方法には、主に①個人再生と②任意整理の2つの方法があります。このページでは、このうち任意整理について詳しく説明いたします。
抵当権とは?
住宅ローンを組む場合には、住宅ローン契約に加えて、その建物と敷地について抵当権設定契約という契約を結ぶことが通常です。
抵当権とは、ローンの貸主が、対象となる建物や土地をローンの担保として確保しておくための権利です。
これは、ローンの支払いがとどこおった場合には、貸主が抵当権の対象となっている土地や建物(つまりマイホーム)を取り上げて、強制的に売り払い、その代金からローンの回収をできるという権利です。
住宅ローンは、一般に、金額も大きく、返済期間も長い貸付けです。そのため、銀行は、将来の不払いのリスクに備え、抵当権を土地と建物に設定します(そうでなければ通常ローンは組めません)。
マイホームを維持するには住宅ローンの支払いが必要
マイホームを維持するには、少なくとも住宅ローンについては契約どおりの支払いを続けることが必要です。支払いができない場合には、マイホームについた抵当権が実行され、強制的に競売されてしまいます。
逆にいえば、住宅ローンを支払い続けられるだけの収入がある場合には、任意整理によって他の借入れについて返済スケジュールを見直すことによって、マイホームを維持したまま借金問題を解決することができる場合もあります。任意整理の場合には、自己破産や民事再生と異なり、特定の借入れだけを対象とすることができるからです。
個人再生との違い
マイホームを維持したまま借金問題を解決する方法には、任意整理のほか、個人再生の手続きがあります。
これは、裁判所を通じて借金の減額や返済スケジュールの変更を行う手続きです。この個人再生手続きの中で「住宅資金特別条項」という制度を使うと、マイホームを手放さず、他の借入れの金額を減額したうえ残額を原則3年間の分割払いとすることによって月々の支出を減らすことができます(この場合も、住宅ローンについては原則として当初の契約どおりの支払いを続ける必要があります)。
任意整理と個人再生の違いは、以下のとおりです。
任意整理では元本より減額することは困難
任意整理の場合、支払条件の変更はあくまで相手方(貸金業者など)との交渉になります。
利息制限法に基づく引き直し計算をすることによって借金の金額が減る場合もありますが、引き直し計算をしても借金が残る場合があります。
このような場合には、今後の月々の支払いについて相手方と交渉をしていくことになるのですが、貸金業者としては、貸した金額そのもの(元本)は最低でも返還してもらいたいと考えるのが通常です。
遅延損害金のカットや将来利息のカットに応じてくれる業者は少なくありませんが、元本よりも減額することに応じてくれない業者は多いです。
ただ、弁護士が交渉し、一括弁済などを条件にすることで元本のカットにも応じてくれる場合があります。
任意整理は、相手方の意思を無視して強制的に借金の減額などをできる手続きではありません。また、和解案に同意するかどうかは、それぞれの相手方の自由です。たとえば、合計3社ある借入れ先のうち2社は和解案に同意していたとしても、1社が強硬に反対している場合には、全体として問題を解決できないことがあります。以上の点について、任意整理手続きの限界があります。
これに対し、個人再生手続きの場合は、裁判所が関与し、民事再生法などの法律にしたがって、将来の返済計画(再生計画)が決められていくことになります。
個人再生の場合には、相手方(債権者)の一部が再生計画案に反対していても、借金の減額等の効果を発生させることができる場合があります。
また、将来支払うことになる金額について法律の定めがありますので、元本よりも減額することが可能です。
個人再生を利用するには法律の条件を満たす必要がある
任意整理は、一言でいえば裁判所を通さない交渉ですから、任意整理をするに当たって特に条件はありません(ただし、生活保護受給費で借金の返済はできません。)。もちろん、交渉には相手方があることですから、相手方と合意するためにはある程度現実的な和解案を提示しなければなりませんが、任意整理に着手するにあたって特に条件はありません。
これに対し、個人再生の場合には、民事再生法などで手続きを利用するための条件が定められています。たとえば、住宅ローンを除く借金の総額が5000万円を超える場合には個人再生の手続きを利用できません。
また、個人再生の申立てには裁判所で決められた申立書などの書類を準備して提出する必要がありますし、必要な手数料や手続き費用を納める必要があります。