ヤミ金融への対処法
自力で対処せず相談を
ヤミ金業者の被害者の方の多くは、借り入れを始めてしまったという負い目から、ヤミ金業者へ毅然とした対応を取ることが難しいでしょう。また、これまでに執拗な取り立て電話や嫌がらせにより精神的にダメージを受けてしまっていて、冷静な判断ができなくなっていることも多いでしょう。
ご家族や勤務先の方への迷惑行為をおそれて誰にも相談できないと考えている方もいらっしゃるかもしれません。実際にご家族や周囲の方への嫌がらせ行為がおこなわれている場合には、周囲の方との関係も悪化してしまっているかもしれません。
すでに悪質な取り立てや嫌がらせが始まっている場合には、警察への通報が必要になります。しかし、警察に動いてもらうためには、被害に遭っている証拠を示さなければ、取り合ってもらえない可能性もあります。
そのため、ヤミ金融へ対抗するためには、弁護士などの法律家へのご相談・ご依頼をおすすめします。
弁護士が介入した後にご本人等への取立てをすることは法律違反となります。
また、警察に被害を食い止めてもらうためには、証拠収集や被害の届け出、告訴や告発などの手続きが必要になることもあります。
このような手続きを適切におこなうためには、法律の専門家に依頼をすることが適切といえます。
取り立て行為を止める
弁護士が関与した後に借主ご本人への取り立て行為をおこなうことは、貸金業法という法律に違反します。また、法律上、返還義務を負わない借主の家族や知人に対して嫌がらせなどの行為をおこなうことは当然違法です。
弁護士が依頼を受けた場合は、まず弁護士が事件の依頼を受けたことを通知する「受任通知」をヤミ金業者に送ります。
また、下記のとおり、ヤミ金業者への借入れは無効であり、借主にはもともと借りた元本を含めてお金を返す義務はありません。また、すでにお金を支払った場合にはその返還を求めることができます。受任通知には、すでに借主が支払った金額を返還する請求も記載します。
ヤミ金業者のなかには、弁護士の受任通知後すぐに取り立てをやめ、撤退する業者もいます。弁護士が介入しているのに取立て行為を続けても、お金を支払わせることが難しいですし、刑事告発をされたり口座凍結などの対抗措置をされたりことのリスクが大きいと判断されることがあるためです。
ヤミ金業者が取り立て行為や嫌がらせ行為をやめない場合には、取り立て行為等をやめさせるために粘り強く取り立て行為等をやめるよう通告し、警察等へ告訴・告発などの手続きをおこない、ヤミ金業者の悪質行為をやめさせるよう努力します。
ヤミ金業者へお金を払う義務はない
今まで執拗な取り立て行為や嫌がらせ行為を受けてきた借主の方は、冷静な判断ができず、「借りたお金だから返さなければいけない」と思いこんでしまいがちですが、法律上はヤミ金業者への支払いをする義務はありません。
ヤミ金業者の超高金利での貸付けは、人の弱みにつけこんで暴利をむさぼる違法行為です。このような目的で締結された貸借契約は無効であり、これにより借主が受け取ったお金は返還する義務がありません(不法原因給付)。
通常の取引であれば、お金を貸す契約が無効であれば、契約が有効であることを前提にして渡されたお金は返さなければなりません。
しかし、ヤミ金業者による貸付の場合は、そもそもが人の弱みにつけこむ反倫理的な暴利行為ですから、このような行為に対して法律が手を貸すことはなく、元金も返さなくてよいとされています。
したがって、最高裁判所の判例では、すでにヤミ金業者に支払ったお金については、元金を差し引くのではなく全額を返還すべきものとされています。
このように、法律上は、借主にはヤミ金業者への返還義務はありませんが、義務がないというだけではなく、ヤミ金業者に対しては絶対にお金を支払わないことが重要です。
ヤミ金に取り立て行為などをあきらめさせる必要があるからです。また、ヤミ金業者への支払いをするということは、ヤミ金業者の反倫理行為を助長することにもなります。
問題を解決するためには、ヤミ金業者には一切をお金を支払わないという断固とした態度をつらぬく必要があります。
被害金を取り戻すには
上記のとおり、ヤミ金業者の貸付けは無効であり、貸しつけられたお金は返還する義務がありません。借主がすでに支払ったお金は、元金を含めて全額返還を求めることが認められています。
相手は違法行為をおこなう業者ですので、返還をさせることは簡単ではありませんが、訴訟提起や口座凍結などの対抗措置を利用して被害金の返還を求めていくことになります。
また、振り込め詐欺被害者救済法(犯罪利用預金口座にかかる資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)は、犯罪利用口座の凍結、被害者に対する分配手続きを定めていて、ヤミ金業者の口座も対象とされています。この手続きによってお金を取り戻すことができる場合があります。
ヤミ金業者への対抗手段
口座の凍結
銀行は、ヤミ金業者などの違法取引に利用されている預金が判明したときは、その口座を排除する体制をとるよう間接的に求められています。また、振り込め詐欺被害救済法では、犯罪に利用されている口座の凍結手続きが認められています。
ヤミ金業者が利用している預金口座が判明した場合には、その預金口座の凍結を要請し、ヤミ金業者の商売道具となる口座を使えなくさせ、プレッシャーを与えることができます。
携帯電話の利用停止
携帯電話不正利用防止法(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律)では、犯罪に利用された携帯電話について警察署長が携帯会社に対して契約者確認を要求できること、携帯会社は契約者が本人確認に応じない場合その携帯電話を利用停止にできることなどを定めています。
ヤミ金業者に利用されている携帯電話もこの手続きの対象となります。
刑事告発・告訴
ヤミ金業者がよくおこなう私生活・業務の平穏を害する取り立て行為は、貸金業法21条1項に違反し、刑罰の対象となる行為です(登録のない業者も対象となります)。
また、それ以外にも、悪質な取り立て行為は、恐喝、脅迫、威力業務妨害、住居侵入等の犯罪に該当する可能性があります。
このような犯罪行為がおこなわれている場合は、刑事告訴・告発を積極的におこないます。