1.建設現場における人材不足
近時、建設現場の人手不足が深刻化しています。これは、少子化による労働力人口の減少、高齢の熟練技能者の大量引退、長時間労働や現場作業の過酷さからくる離職率の高さなど、様々な要因が考えられます。
そんな中、建設業において外国人採用の需要が高まっています。外国人労働者として、若い労働力を確保できることは大きなメリットです。また、母国を離れて働きに来ている外国人労働者は仕事に意欲的な人が多く、仕事の覚えも早いです。加えて、ほとんどの外国人労働者が日本より賃金の低い国から働きに来ているため、低い賃金であっても、よく働いてくれる人が多いです。
このように、外国人労働者を雇用することにメリットは多く、言葉や文化の違いという問題はあるものの、外国人労働者を雇用する建設会社は増えつつあります。
このページでは、外国人労働者を雇用する場合に注意すべき点についてご説明させていただきます。
2.在留資格について
(1)在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に滞在し、なんらかの活動をするために必要となる資格の総称です。どのような在留資格が存在するかに関しては、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)にて定められています。令和3年10月の時点で、在留資格には33種類あり、大きく分けて活動類型資格と地位等類型資格があります。
(2)活動類型型資格
活動類型資格とは、外国人がそれぞれ定められた活動を行うことによって、日本に在留することが許可される資格です。具体的な活動は様々で、介護、教育、報道、文化活動など、様々な活動が認められています。
もっとも、活動が許されたとしても、就労が無制限で許可されるわけではありません。在留資格の種類によって就労が認められるものと認められないものがあります。また、1人の外国人が同時に保有できる在留資格は1つのみとなります。そのため、特定の在留資格を保有すると、原則として他の仕事で収入を得ることは不可能となります。
他の仕事を行いたい場合には、新たに別の在留資格を取得するか、「資格外活動」の許可を出入国在留管理庁から取得する必要があります。資格外活動とは、現に有している在留資格に属さない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行おうとする場合に必要な許可です。
(3)地位等類型資格
地位等類型資格は、対象となる外国人の身分に応じて交付される在留資格です。日本人の配偶者等に交付される資格で、就労制限はありません。
(4)在留期間
在留期間は、基本的に5年、3年、1年又は3月となっています。期間の長さは出入国在留管理庁が決定します。
3.建設業における在留資格
(1)特定技能
国内で人手不足が非常に厳しい14の「特定産業分野」において、その業種における一定程度の知識・技能を有して、即戦力として働ける外国人労働者を受け入れるための在留資格です。そして、建設業は特定産業分野に指定されているので、特定技能。
(2)技能実習
技能実習とは、開発途上国出身の人材に母国では習得困難な技能を習得してもらうための制度です。
技能実習制度は、1年目が技能実習1号、2~3年目が技能実習2号、4~5年目が技能実習3号に分類されています。そして、技能実習1号から2号、2号から3号に移行するタイミングでは、技能が習得されているかどうか確認する試験を受ける必要があります。試験不合格の場合、再受検は1回のみ認められていますが、それでも不合格になってしまった場合、帰国しなければなりません。そのため、技能実習の在留資格で外国人を雇う場合、事業者側も試験に協力するような体制を整える必要があります。
(3)技能
技能という在留資格は、外国に特有な建築の現場において、熟練した技能や経験がある外国人を雇用できる在留資格です。外国に特有な建築というのは、ゴシックやロマネスクやバロック方式や中国式など、日本にない建築となります。
(4)地位等類型資格
先述のとおり、地位等類型資格には就労制限がありませんので、建設業で雇用することができます。
(5)資格外活動許可
先述のとおり、資格外活動許可を取得できれば、在留資格を取得した際の資格以外の仕事ができます。しかし、1週間の労働時間は28時間以内と決まっていますので、アルバイトとして雇用することになるでしょう。
なお、資格外活動許可の有無は、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」で確認できます。
4.注意点
入管法には、不法就労者であることを知りながら外国人を雇い続けた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科もあり得ます)と規定されています。なお、不法就労者とは、(1)不法に入国して就労している者、(2)在留資格に定められた活動の範囲を超えて就労する者、(3)在留期間を超えて就労する者(不法残留者)をいいます。入管法違反にならないためにも、在留資格と在留期間は必ず確認するようにしましょう。
また、採用にあたって、契約内容や社会保険などは十分に理解してもらいましょう。外国人の母国語で作成された契約書を作成し、準備しておくとよいでしょう。
さらに、外国人労働者(特別永住者を除く)を採用したり、離職したりする場合には、外国人の氏名などをハローワークに届け出なければならない(外国人雇用状況届出制度)ので、忘れないようにしましょう。
以下、詳細ページのご案内です。
- 建設業の担い手と法律問題①(ゼネコン)
- 建設業の担い手と法律問題②(道路会社)
- 建設業の担い手と法律問題③(ハウスメーカー)
- 建設業の担い手と法律問題④(橋梁メーカー)
- 建設業の担い手と法律問題⑤(設計事務所)
- 建設業の担い手と法律問題⑥(下請け業者)
- 建設業の担い手と法律問題⑦(労働者
- 建設業の担い手と法律問題⑧(技術者制度
- 建設業の担い手と法律問題⑨(外国人労働者
- 建設業の担い手と法律問題⑩(女性労働者
- 建設業の担い手と法律問題⑪(中高年労働者
- 建設業の担い手と法律問題⑫(建設現場のメンタルヘルス
- 建設業の担い手と法律問題⑬(労働者の解雇
- 建設業の担い手と法律問題⑭(リスクアセスメント
- 建設業の担い手と法律問題⑮(安全衛生教育
- 建設業の担い手と法律問題⑯(労働災害等が発生した場合の対応
- 建設業の担い手と法律問題⑰(就業規則
- 建設業の担い手と法律問題⑱(建設廃棄物の処理
- 建設業の担い手と法律問題⑲(安全配慮義務
- 建設業の担い手と法律問題⑳(建設業における元方事業者の義務