不動産の競売とは
不動産競売(ふどうさんけいばい)とは、お金を支払ってもらえない人が、相手方が持っている不動産を強制的に売り払い、その代金からお金の回収をはかる手続きのことをいいます。不動産競売は、強制執行手続きのひとつです。
不動産競売には、強制競売と担保権に基づく競売(任意競売)の2つの種類があります。
お金を回収する側の人が判決等(債務名義といいます)を得て、これに基づいて裁判所へ競売を申し立てる手続きを強制競売、不動産に付いている抵当権等の担保権に基づいて競売を裁判所へ申し立てる手続きを担保件に基づく競売(任意競売)といいます。
これらの手続きは、民事執行法という法律の定めにしたがっておこなわれます。
競売だと安くしか売れない?
一般的に、不動産競売によって不動産が売却された場合の売却代金額は、通常の不動産取引で売却したときの売却代金額(市場価格)よりもかなり低額だといわれています。
これは、不動産競売による売却の場合には、通常の売却にはない特殊性があり、このことを反映した価格で評価されるためです。
どういうことかというと、通常の不動産取引では、不動産を売りたい売主と不動産を買いたい買主が交渉・協力して不動産を売却します。ところが、不動産競売の場合には、売主となる人の意思に関係なく無理やり不動産を売却させるのですから、売主が売却に協力的ではありません。そのため、不動産の買主は、場合によっては、通常の取引では必要ない手間などをかけなければならないことがあります。
そのような買主のリスクを見込んで売却価格が決められますので、不動産競売によった場合の売却価格は、市場価格よりも低くなるのです。
以下、通常の不動産取引と不動産競売による売却手続きとの違いについてくわしく解説します。
不動産競売による売却の特徴
内覧ができない
通常の不動産取引であれば、買主が不動産の内覧をさせてもらって、そのうえで不動産を購入するかどうかを決めるのが一般的です。
これに対し、不動産競売の場合には不動産の内覧をすることは通常困難です。競売をされる売主は、いってみれば強制的に不動産を取り上げられることになりますから、その協力を得ることは通常困難です。
対象となる不動産の情報は、物件明細書・評価書・現況調査報告書(不動産競売3点セットとも呼ばれます)の書類によって得ることができます。しかし、いずれもその内容は保証されていません(これらの内容は裁判所の運営するサイト(ビット)でだれでも閲覧することができます。)。
物産明細書
不動産の権利関係など不動産の情報が記載されている書類です。
評価書
不動産鑑定士が作成する評価書です。不動産鑑定士が不動産価格を評価した根拠が載っていますので、不動産の築年数や状態、周囲の環境などの情報が記載されています。
現状調査報告書
裁判所の執行官が、不動産の現状を調査した結果をまとめたものです。現在の不動産の状態や利用者(占有者)などの情報が記載されています。
引渡しは自己責任
通常の不動産取引であれば、売主は、自分の荷物や不要物を撤去して不動産を引き渡し、鍵も渡さなければなりません。
しかし、不動産競売による売却の場合は、買主がすんなり不動産の引渡しを受けれるとは限りません。
不動産競売の手続きによって、所有権が代金を支払った買主に移転するところまでは、裁判所が面倒をみてくれます。しかし、その先の不動産の引渡しについては、裁判所は面倒をみてくれません。
買主は、自己責任で不動産を占拠している者に引渡しを求めなければなりません。場合によっては、裁判や強制執行などの手続きを経て、不動産を利用することができるようになります。
また、不動産の中に不要物がある場合には買主の責任で撤去しなければなりません。
瑕疵担保責任の規定が適用されない
売主には、法律上、瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)という責任を負うこととされています。疵担保責任とは、売り物に容易には気付くことが出来ない欠陥があった場合に、買主には損害賠償請求権や契約の解除権があり、売主はこれに応じなければならないという責任です。
不動産競売による売却の場合には、瑕疵担保責任の法律規定が適用されないこととされています。そのため、買主は、欠陥のある不動産をつかまされてしまったとしても売主に責任追及をすることができず、自己責任となってしまうのです。
まとめ
不動産競売によって不動産を購入した買主は、以上のような面倒な思いをしなければならない可能性があります。そのため、不動産競売の売却価格は市場価格よりも相当低額になっています。
借金等を返せなくなってしまって競売をされる側の方にとってみれば、自分の不動産が買いたたかれてしまうわけですから、損をしてしまうことになります。
また、お金を支払ってもらう側の方としても、不動産が安くしか売れないのはうれしいことではありません。それだけ回収額が少なくなるからです。