1.建築関係訴訟の特徴
前ページでは、訴訟提起前に行うべき仮差押えについてご説明させていただきました。このページでは、注文者に対して建物の請負代金の支払を請求する事件などの建物の建築をめぐる民事訴訟(建築関係訴訟)についてご説明させていただきます。
建築関係訴訟は、他の民事訴訟と比べると、解決が困難だといわれています。特に、建物の瑕疵の存否が問題となる事案は、審理・判断に建築や土木などの専門的知見が必要となり、また、争点が多数になることが多いです。そのため、審理に長期間を要する事件の典型例とされています。特に、建物の瑕疵が問題となる事案については、注文者からすれば一生に一度あるかないかの大きな買い物で、金額も多額になる場合が多いため、当事者間で激しい感情の対立が見られ、和解による解決が困難な傾向にあります。
建築関係訴訟の長期化を解決するため、東京や大阪の裁判所では建築関係訴訟を専門に扱う部もありますが、それでも通常の訴訟に比べて時間がかかっているのが現状です。 以下、建築関係訴訟の大まかな流れについてご説明させていただきます。
2.訴訟の流れ
(1)訴訟提起
民事訴訟は、裁判所に「訴状」を提出することから始まります。訴状とは、裁判を起こした人(原告)が,その言い分を記載して裁判所に提出する書類のことです。訴状とともに、原告の主張を裏付ける証拠も提出するのが一般的です。
原告が提出した訴状が問題なく裁判所に受理されれば、被告に訴状が送達されます。
(2)争点整理
訴状が提出されてから約1か月後に、第1回期日が行われます。第1回目の期日では、原告の「訴状」に対する被告の反論などが書かれた「答弁書」が提出されます。なお、被告が第1回目の期日に出席せず、答弁書も提出しなかった場合、欠席のまま裁判が行われ、訴状等に書いてあることを認めたものとみなされて、原告の請求をそのまま認める判決がでる可能性もあるので注意しましょう。
その後、数回の期日にわたり、双方が提出した「準備書面」、「書証」などで、争点(当事者の言い分が食い違っている部分)を整理していきます。瑕疵が複数ある場合など、事案によっては、争点が複数ある場合もあります。
(3)証拠調べ
争点整理後は、証拠調べを行います。訴訟の当事者や関係者などに尋問を行い、各人が証言した内容を記録します。
(4)鑑定
事案によっては鑑定も行われます。裁判所が選任した建築の専門家から意見を求めます(鑑定についての詳細は後述します)。
(5)和解
訴訟でも常に裁判所による判決が言渡されるわけではなく、和解による解決も可能です。和解では、当事者が互いに妥協し、双方の納得のいくような解決を目指します。和解が成立すれば、訴訟は終了します。
(6)判決
当事者双方が全ての主張を終え、全ての証拠調べが終わり、「訴訟が裁判をするのに熟したとき」には、審理が終了し、裁判所は、当事者が主張した内容をもとに、判決を言い渡します。
3.鑑定について
鑑定とは、専門性の高い分野について、特別の学識経験を有する第三者に意見を求める手続のことをいいます。通常の民事訴訟ではほとんど行われませんが、建築関係訴訟や医療過誤訴訟などの専門性の高い分野では、専門家意見を求めなければ、適切な判断をすることが困難なことがあります。そのため、建築関係訴訟では、鑑定が行われることもあります。
鑑定は、(1)当事者からの鑑定の申出、(2)鑑定事項の作成・鑑定人の選任、(3)鑑定事項の確定、(4)鑑定の実施(鑑定人による鑑定書の作成)という流れになるのが一般的です。なお、鑑定には費用がかかり、小規模な居住用住宅でも20万円から40万円程度の費用がかかり、鑑定を申し立てた当事者が暫定的に支払うことになります。その後、和解が成立した場合には和解条件の中で、判決となった場合には裁判所の判決の中で、最終的な鑑定費用の負担割合を決めます。
このような鑑定手続ですが、その内容によって訴訟の結果に多大な影響を及ぼすことになります。そのため、そもそも鑑定人の選定にかなり時間がかかる場合や、鑑定書の作成に時間がかかる場合(早くても半年程度かかると言われています)も多いです。また、鑑定書が作成された後、鑑定書の内容について当事者が主張と反論を行う場合がほとんどです。
鑑定は事案の解明には非常に有益な手続ですが、その分訴訟が長期化することは避けられませんし、内容によっては不利な立場に立たされる可能性があることも認識しましょう。
4.まとめ
以上が建築関係訴訟の大まかな流れです。建築関係訴訟は専門的な知識と経験を要するため、お客様がご自身で対応されるのは困難です。特に、瑕疵が問題となる訴訟においては瑕疵一覧表が、追加工事が問題になる訴訟では追加変更工事一覧表が必要となるなど、通常の民事訴訟とは異なる対応が求められます。
弊所の弁護士は建築関係の問題に対する経験が豊富です。建築関係訴訟でお悩みの方は、一度弊所にご相談ください。弊所は初回の60分間、相談料無料でお客様のご相談をお受けしておりますので、安心してご相談ください。
以下、詳細ページのご案内です。
- 取引上の問題①(JV)
- 取引上の問題②(開発事業)
- 取引上の問題③(工事原価と支払)
- 取引上の問題④(代金の取下げ)
- 取引上の問題⑤(物件の引渡し)
- 取引上の問題⑥(請負契約と下請契約)
- 取引上の問題⑦(契約書作成上の問題点)
- 取引上の問題⑧(工事代金の回収① 法的問題)
- 取引上の問題⑨(工事代金の回収② 仮差押え)
- 取引上の問題⑩(工事代金の回収③ 建築関係訴訟)
- 取引上の問題⑪(工事代金の回収④ 債権に対する強制執行)
- 取引上の問題⑫(少額訴訟と支払督促)
- 取引上の問題⑬(建築工事紛争審査会)
- 取引上の問題⑭(元請会社の破産)
- 取引上の問題⑮(建設業法遵守ガイドライン①)
- 取引上の問題⑯(建設業法遵守ガイドライン②)