1.建設業とは
「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます(建設業法2条2項)。
投資規模としては、1992年度をピークとして減少傾向にありますが、2015年度においても建設投資金額はGDPの9.2%を占めており、我が国の主要な産業として国の成長を支えています。
建設業者の種類
総合建設会社
元請業者として発注者から直接、土木や建築工事一式を請け負う業者であり、一般的にはゼネコン(General Constructor)と呼ばれます。
専門工事業者
土木一式工事と建築一式工事以外の工種を請け負う業者をいいます。特定の分野の工事に高い専門性を持ち、ゼネコンの下請業者として工事に関わることの多い業者です。
道路会社
主に道路の舗装工事およびアスファルト合材等の製造販売を行う会社をいいます。
住宅建設会社
注文や建て売りにより一般住宅の建築・販売を中心とする会社をいいます。
建設業に対する規制
建設業については、主に建設業法が規制を定めています。以下、建設業法上の規制についてご説明いたします。
2.建設業の許可
1.建設業を営むためには
建設業を営むためには、建設業法3条に基づき、建設業の許可を受ける必要があります。
ただし、以下に述べる「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受ける必要はありません。
- 建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
- 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
許可の区分
大臣許可と知事許可
建設業の許可は、国土交通大臣または都道府県知事が行います。
ア.2つ以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合
国土交通大臣(本店の所在地を所管する地方整備局長等)が許可を行います。
イ.1つの都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合
営業所の所在地を管轄する都道府県知事が許可を行います。
なお、大臣許可と知事許可の別は、営業所の所在地で区分されるものであり、営業できる区域または建設工事を行うことができる区域に違いはありません。
一般建設業と特定建設業
建設業の許可は、下請契約の規模等により「一般建設業」と「特定建設業」の別に区分して行います。この区分は、発注者から直接請け負う工事1件につき、4000万円(建築工事業の場合は6000万円)以上となる下請契約を締結するか否かで区分されます。
発注者から直接請け負った1件の工事代金について、4000万円(建築工事業の場合は6000万円)以上となる下請契約を締結する場合には、特定建設業の許可が必要となりますが、それ以外の場合は一般建設業の許可で差し支えありません。
なお、発注者から直接請け負う請負金額については、一般・特定に関わらず制限はありません。
3.無許可営業に対する制裁
前項でご説明したとおり、建築業を行うためには、建設業許可が必要になります。
無許可で軽微な工事以外の建設工事を請け負ってしまうと、建設業法47条1号により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。さらに、情状によっては、懲役と罰金の両方を科されることもあります(同条2項)。
実際に、平成18年11月13日、建設業許可を持たずに宮城県発注の工事を下請受注していたという容疑で宮城県内の建設会社社長と中堅ゼネコンの仙台支店長が逮捕されました。
さらに、3日以上の営業停止処分が課せられることもあります(建設業法28条2項、3項)。
もし、建設業法違反で罰金刑を科されると、5年間は建設業許可を取得できません(同法8条8号)。
もちろん、違反して工事を受注した業者に対してはこういった罰則が科されることは当然です。
しかし、問題になるのは、受注した建設業者だけではありません。
元請業者に対する制裁
元請業者が「建設業許可を受けていない業者」と下請契約を結んだ場合を考えてみましょう。
下請業者には上記の罰則及び営業停止処分が科されます。
問題は下請業者にとどまりません。元請業者にも営業停止処分が下ってしまうのです。
元請業者は下請業者との契約の際に、建設業許可が必要な場合には下請業者の許可状況を確認しなければなりません。これを怠ったとして、元請業者まで営業停止処分を受けてしまいます(同法24条の6、28条)。
業務拡大をしたい場合には早めに建設業許可を
元請業者にも営業停止処分という重い処分が科されることから、そのようなリスクを避けるために、500万円未満の軽微な工事の下請契約を結ぶ際まで、建設業許可を必須条件にしている元請業者が増えてきました。
建設業許可は信用の裏付けでもあるので、こういった流れは当然かもしれません。金融機関からの融資を受ける際にも、建設業許可が有利に働くほどなので、将来的に業務拡大をしたい場合には建設業許可を迷わず取得し、受注できる範囲を広げておくべきです。