1.建設業法に違反した場合
これまでご紹介させていただいたように、建設業に関する法律は多岐にわたります。建築基準法、独占禁止法、建築士法、建設リサイクル法など、建設関係の法律もあれば、労働基準法、建設雇用改善法など、労働関係の法律もあり、関連法規を挙げればキリがありません。そして、数ある法律の中で、建設業の中心的な役割を果たしているのが建設業法です。
建設業法には、建設業の許可制や請負契約の適正化など様々な規定があります。そして、その中に、建設業法に違反した場合の罰則について定めたものもあります。
いったん建設業許可を取得してしまえば、それで安泰というわけではなく、建設業法に違反した場合、建設業許可の取消に直結する場合もあるので、しっかりと問題意識を持っておくべきです。
このページでは、そもそも建設業法違反とはどのようなものがあるのか、建設業法違反をした場合にはどのような罰則を受けることとなるかについてご説明させていただきます。
2.裁判所による刑事罰
(1)刑事罰について
まず、刑事裁判を経て、裁判所が決定する刑事罰についてご説明します。刑事罰は、違反行為の内容により、罰則の内容にも様々なものがあります(建設業法45条から55条にかけて、罰則について規定されています)。
(2)無許可営業など
無許可で建設工事をした場合や、営業停止処分や営業禁止処分を受けているにも関わらず建設業を行った場合、下請契約制限に違反した場合、不正に建設業許可を取得したりした場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる場合があります(法47条1号)。なお、懲役と罰金は併科(同時に2つ以上の刑が科されることです)されることもあります。
また、建設業法47条に違反した本人(社長など)だけではなく、違反行為をした者が働いている法人に1億円以下の罰金が科される場合もあります(法53条1号)。
(3)虚偽申請など
建設業許可の申請、変更届、経営状況分析申請などに虚偽の内容を記載して提出した場合などは、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金となります(法50条)。
懲役と罰金が併科されることもありますし、法人にも100万円以下の罰金が科されることもあります。
(4)主任技術者の不配置など
工事現場に主任技術者や監理技術者を置かなかった場合や、経営状況分析や経営規模等評価に際し、求められた報告をしなかったり虚偽の報告をしたりした場合などは、100万円以下の罰金となります(法52条)。
(5)廃業届の懈怠など
許可を受けた建設業を廃止してから30日以内に廃業の届けをしなかった場合などは、10万円以下の過料となります(法55条)。
3.監督官庁による監督処分
(1)監督処分とは
建設業法違反が発覚した場合、監督官庁(原則として許可権者)によって監督処分が科されることもあります。
監督処分とは、違反業者の是正を行い、または違反業者を排除することを目的として、直接に法の遵守を図る行政処分です。監督署には、大きく分けて指示処分、営業停止処分、許可取消処分の3種類があります(法28条)。
(2)指示処分
指示処分は、監督官庁が建設業者に不正行為等を是正するためにすべき事項を命じるものです。監督処分の中でも、もっとも軽微なものに該当します。
軽微なミスにとどまる場合には指示処分が科されることが多く、ミスが起きないように社内に周知すること、再発防止のための研修を行うこと等が命じられます。
(3)営業停止処分
営業停止処分は、文字どおり一定期間の営業活動が禁止されるものです。
営業活動ができなければ、売上を上げることはできなくなりますから、非常に重い処分といえます。
営業停止の期間は、監督官庁が1年以内の範囲で決定します。もっとも重い処分となるのが談合や贈賄であり、代表者については1年間、ほかの役員は120日間営業停止となります。
営業停止処分を受けたとしても、全ての営業行為が行えなくなるわけではありません。
停止を命じられるのは、請負契約の締結、入札、見積等及びこれらに付随する行為です。処分前の請負契約に基づく工事を施工するなど、一部の行為は営業停止期間中に行うことができます。
(4)許可取消処分
許可取消処分に該当すると、建設業許可が取り消されます。不正行為等の態様が特に悪質である場合には、指示処分や営業停止処分を経ず、直ちに許可取消処分が科される場合もあります。
4.まとめ
このように、建設業法に違反すると様々な処分や刑罰が科されます。また、監督処分がされると、5年もの間、その処分内容が業者名・所在地ともに建設業者監督処分簿に記載されます。各都道府県は監督処分簿の一部をインターネットで公表しているため、一度監督処分を受けると、事実上大きな不利益を被ることになります。
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