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1.建設業におけるパワハラ

建設業は、「パワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)が起きやすい業界だ」と言われることも少なくありません。その理由について、「ガテン型で荒っぽい人が多い」などと言われることもありますが、事実ではないと思います。

現場作業は危険なものが多く、安全に対する配慮が強く求められています。
そのため、安全に対し充分な指導が必要となる場面が多々あり、あと一歩で命を落しかねない場面も少なくないと思います。そのような場合、指導に熱が入りすぎてしまったり、ミスに対して過剰に叱ってしまったりすること(指導方法の不適切さ)が原因の1つだと思います。

また、元請と下請という重層構造になっていることも原因の1つだと言われています。元請業者は、下請業者に非常に大きな影響力を持っています。もちろん、建設業界において下請業者はなくてはならない存在です。しかし、末端の下請業者ほど小規模で財務基盤が弱いため、特定の元請業者に依存せざるを得ず、弱い立場にたたさるため、元請業者からハラスメント被害を受けるという実態があります。

このページでは、パワハラとその対策についてご説明させていただきます。

2.パワハラとは

(1)パワハラの定義

パワーハラスメントとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境を害することを指します。この定義は、2020年6月に改正された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下「パワハラ防止法」といいます)30条の2に規定されています。

(2)パワハラの6類型

厚生労働省によると、パワハラは大きく6つの類型に分けられます。

ア.身体的な攻撃

殴る・蹴る・叩く・物を投げつけるなどです。実際に傷害を負ったかは関係ありません。

イ.精神的な攻撃

脅迫や名誉毀損、侮辱、酷い暴言、必要以上に長時間執拗に叱るなどです。

ウ.人間関係からの切り離し

一人だけ席を移される、無視される、送別会に呼ばないなどです。

エ.過大な要求

新人にいきなり仕事を押し付ける、業務上明らかに達成できないノルマを課すなどです。

オ.過小な要求

労働者の能力に見合わない程度の低い作業を与え続けることなどです。

カ.個の侵害

交際相手の有無を執拗に尋ねるなど、プライベートなことを過度に追及する場合です。

3.雇用関係にない場合

パワハラの定義によると、あくまで同じ職場で働く者に対して行われるのがパワハラということになります。そのため、元請会社と下請会社のように、直接雇用関係にない場合にはパワハラの問題は生じないようにも思えます。しかし、パワハラ防止法の改正に加え、厚生労働省から「事業主が自ら雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組」が指針で示されることになりました。

この指針によれば、自社の従業員が、直接の雇用関係が無い元請会社からパワハラを受けないよう努めるとともに、自社の従業員が直接の雇用関係にない他社の従業員にパワハラをしないよう努めるのが望ましいとされています。

そのため、元請会社や下請会社との関係でもパワハラ問題を起こさないように研修会を行うなどの措置を講じなければなりません。また、パワハラ問題が起きた場合に備えて相談窓口を設けたり、社内の規定でパワハラ問題に対する対応策を設けておくなどの措置を講じる必要があります。

なお、パワハラ防止法には、罰則はありません。ただし、厚生労働大臣が必要と認めるときは、事業主に対する助言、指導または勧告をすることができることになっています。

また、パワハラを受けた従業員から、不法行為や安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求される場合もあります。

4.裁判例(前田道路事件)

(1)事案の概要

Y社は建設業を営む会社で、Aは同社の営業所長に昇進しました。しかし、昇進後、Aは架空の工事を受注したことにするなどの不正経理を行っていたことが発覚しました。

Aの上司は不正経理を早期に是正するようAに対し指導しました。具体的には、架空出来高の解消計画を作成させ、毎日日報を作成して報告するようAに指示しました。

Aは日報を作成して毎日上司にファクシミリ送信し、電話で報告をしていましたが、その際、上司から電話でたびたび叱責されていました。また、Y社の業績検討会において、「達成もできない返済計画を作っても業績検討会などにはならない」「過剰計上が解消できるのか。できるわけがなかろうが」「会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にならない」などと叱責されました。

Aは当該検討会の3日後に、「怒られるのも、言い訳するのも、つかれました」と記した遺書を残して自殺してしまいました。その後、Aの遺族である妻と長女がY社等に対して、損害賠償の支払を求めて訴えを提起しました。

(2)地方裁判所の判決

松山地方裁判所は、上司らのAに対する叱責は、社会通念上許される業務上の指導の範疇を超えるものと評価せざるを得ないと判断し、Aの自殺と叱責との間に相当因果関係があることなどを考慮すると、Aに対する上司の叱責などは過剰なノルマの達成の強要あるいは執拗な叱責として違法であるというべきであると判示しました(松山地判平成20年7月1日)。その上で、上司らの叱責がAによる不正経理が端緒であったことを認め、Aにも6割の過失があったと判断し、約3000万円の損害賠償請求を認めました。

(3)高等裁判所の判断

高等裁判所は、「上司から架空出来高の計上等の是正を図るよう指示されたにもかかわらず、それから1年以上が経過した時点においてもその是正がされていなかったことなどを考慮し、上司らがAに対してある程度の厳しい改善指導をすることは、正当な業務の範囲内にあるものというべきであり、社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超えるものと評価することはできないと判断し、第一審とは異なり、遺族らの請求を棄却しました(高松高判平成21年4月23日)。

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