債権回収と内容証明郵便
1.債務者に対するインパクトが大きい
内容証明郵便とは日本郵便の行う一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスのことをいいます。
普通の郵便ではなく、内容証明郵便を利用して催告書を送った場合のメリットとして、相手方に対して大きなインパクトを与えることができるという点を挙げられます。
特に、弁護士名義での内容証明であれば、インパクトがさらに大きくなることが期待できます。
内容証明郵便が送られてくることに慣れている、という会社は、金融や不動産関係の企業を除けばそれほど多くはないでしょう。
通常の企業は、弁護士名義の内容証明郵便を受け取れば、心理的プレッシャーを感じ、支払の優先度を上げることでしょう。
その結果、支払う意思を全く見せなかった相手方が、内容証明郵便で請求しただけで、急に態度を変えて支払ってくるケースもよく見られます。訴訟などの裁判手続によらなくても、早期解決が望めるのです。
内容証明郵便の内容は、債務者に対して「これが最終通告だ。」と心理的な圧迫を十分に与えられるよう、ただし、恐喝、強迫又は名誉棄損などにあたる不適切なものにならないよう充分吟味する必要があります。
2.証拠としての価値が高い
内容証明郵便は、いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰あてに差し出されたかということを、郵便局に保管された謄本によって証明する制度です。
したがって、内容証明郵便を利用した請求書であれば、誰が、誰に対して、いつ、いかなる内容の意思表示をしたか、ということを容易に証明することができます。
また、内容証明郵便に「配達証明」を付した場合、相手方が内容証明郵便を受取ったか否か、及び、実際の受取の日付についても、証明することができます。
相手方が受け取ったという事実は、契約解除などの意思表示の際に特に証明が必要な事実ですが、債権回収においても、いつから遅延損害金が生じるか、ということを証明する上で重要です。
つまり、この請求書は、訴訟になった際に証拠として必要になるということです。
そのため、訴訟で証拠として裁判所に提出することも考慮に入れて、書面の内容を吟味・記載することが重要です。
3.時効の中断には必須
債権には消滅時効があります。時効期間が経過し、債務者が時効を援用すれば、債権を回収することはできません。
そこで、債権者としては、時効を中断するための手続をとる必要があります。
最も確実な手段は訴訟提起(民法147条1号。なお、条文は「請求」となっていますが、裁判上の請求、つまり訴訟提起を意味すると解釈されています)ですが、時効までの期間が差し迫っているときなどは、取り急ぎ相手方に書面などで請求することになります。
この請求は「催告」にあたり、催告の日の翌日から6か月以内に訴訟提起等を行うことで時効の完成を防ぐことができます(民法153条)。
この催告をする際に最も重要なことは、催告を行った事実、日時、相手方が受け取った事実を証明することです。
仮に、普通郵便で時効期間に間に合うように請求書を送ったとしても、相手方が受け取っていないと主張すれば、時効の中断は認められません。
そのため、配達証明付き内容証明郵便を利用することが必須です。
なお、催告は2度、3度と繰り返して利用することはできません。
つまり、6か月以内に再び内容証明を発送しても時効は中断しないので十分注意しましょう。
4.内容証明郵便の作成法
最後に、ご自身で内容証明郵便を作成、発送する方法について簡単に触れておきます。
(1) 字数・行数の制限
内容証明郵便で送る文書を作成する際は、以下の書式に沿って作成する必要があります。
1.縦書きの場合
1行20字以内、1枚26行以内
2.横書きの場合
・1行20字以内、1枚26行以内
又は
・1行13字以内、1枚40行以内
又は
・1行26字以内、1枚20行以内
記号などの字数の計算方法については特殊なルールがありますが、ここでは省略します。
日本郵便のウェブサイトなどを参照してください。
(2) 内容証明郵便の出し方
文書が完成したら、相手方へ発送します。封筒には封をしないまま郵便局へ持って行きます。
1.取扱郵便局を確認する
内容証明は、すべての郵便局から出せるわけではありません。
郵便集配局と、地方郵便局長が指定した郵便局のみとなります。
2.郵便局へ持参するものを準備する
内容証明郵便を出すには、下記のものを持参します。
ア.内容証明郵便で出す文書3通(コピー可)
イ.封筒1通(受取人・差出人の氏名、住所を記入しておく)
ウ.印鑑(文面を訂正する場合や契印の押し忘れ等に費用)
エ.郵便料金(後述します)
※書面に押印する必要はありませんが、文字数がオーバーした場合や複数枚ある場合に契印の押し忘れがあったときはその場で訂正できますので、念のため印鑑をお持ちになった方が良いです。
(3)郵便局での手続
窓口で手紙3通と相手方の住所・氏名または会社名及びご自身の住所・氏名を書いた封筒を差し出し、配達証明つき内容証明郵便と申請します。
上記書類を受け取ると、文字数や訂正印・契印の有無など内容証明郵便の規則に従っているか郵便局員が手紙と封筒を確認します。
問題が無ければ、手紙の末尾に「この郵便物は平成〇〇年〇〇月〇〇日内容証明郵便物として差し出したことを証明します」という旨の文章を、3通すべてに押印します。
そして3通のうち1通は相手方に送るため局員立ち合いのもと、自分で封筒に入れて、そのまま封をして、もう1通は郵便局が保管し、最後の1通は控えとして返却されます。
封筒と引き換えに、郵便局員から「書留郵便物受領証」が交付されます。書留郵便物受領証には日時、差出人、受取人などが記されていますので、返却を受けた1通と一緒に大切に保管してください。
この受領証があれば、万が一手元の控えを紛失した場合などでも郵便局に保管してあるものを閲覧することができますし、もう一度同じ手紙を作れば再度内容証明をしてもらうこともできます。
(4) 内容証明郵便の料金
内容証明郵便の代金は下記の通りです。
内容証明料 440円
書留料金 435円
郵便料金 84円(枚数が多いときは追加料金になります)
配達証明料 320円
合計1,279円というのが一般的料金です。
文書が2枚以上になるときは、1枚につき260円の内容証明料が加算されます。
すぐに送らなければならないときは速達郵便で送りますが、その際290円が加算されます。
【注意】
弊所では、債権回収業務について、事業性資金(事業により発生した債権(例:工事代金、売買代金、診療報酬などの売掛金や賃料・リース料など))の回収業務のみをお受けしております。個人間・親族間の貸付け等(親子間の貸付けや、個人的な貸付け)の債権回収は受け付けておりません。予めご了承ください。