解雇予告通知とは
従業員の解雇を行う場合、「解雇予告通知書」や「解雇通知書」を交付するのが一般的です。
このような書面は、後に裁判で争われた際の有力な証拠となるため、大変重要となります。
1.解雇予告通知書(解雇通知書)の作成
(1) 解雇予告通知書(解雇通知書)の作成と交付
会社が従業員を解雇しようとする場合、「会社に来なくていい」と口頭で解雇の意思表示を伝えれば、解雇はその効力を生じることとなります。
しかし、このような通知は、「何月何日をもって解雇とするのか」「何故解雇とするのか」という意思表示が不充分であり、さらに「何月何日に解雇の通知を行ったか」という記録も残りません。
そのため、従業員が納得せず、後にトラブルになるリスクが高いと言えます。
解雇予告を行う際は必ず書面で、解雇予告通知書を交付して行うべきです。解雇予告手当の支払いと同時に解雇する場合は、解雇通知書を交付することになります。
解雇予告通知書(解雇通知書)には以下の事項の記載が必要となります。
・対象者の氏名
・解雇日
・解雇理由
・解雇予告通知日(解雇通知日)
・会社名、代表者職氏名
(2) 解雇理由を明確に説明できるようにする
解雇理由は、第三者に説明できるような客観的なものである必要があります。
労働契約法16条によれば、「解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。
すなわち、解雇を行おうとする場合、就業規則など解雇の規定に該当し、もはや従業員として雇用を続けることはできないという事実が明確にあり、所定の手続を経て行うのでなければ、有効な解雇として認められないということになります。
解雇理由が明確に説明できないような場合、後に解雇は無効とされる可能性が高いといえます。このような場合は、合意退職等、解雇とは別の方法で会社を辞めてもらうよう検討をすべきでしょう。
2.解雇通知と同時に解雇を行う場合
解雇を行う場合、労働基準法20条で定められた30日前の解雇予告または解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払いが必要となります。
実務上は、「30日分の解雇予告手当を支払うことで、解雇通知と同時に従業員を解雇する」という方法が行われることが多くあります。理由としては、事実上、解雇を通知した従業員には仕事を任せにくいことから、解雇予告手当を支払うことで速やか会社から出て行ってもらいたい、という会社側の要望があるものと思われます。
このような解雇を行う場合、解雇通知書と同時に、解雇予告手当支払通知書や解雇予告手当受領確認書を交付することになります。
解雇対象者への解雇通知(解雇通知書の交付)と同時に解雇予告手当をその場で直接渡します(解雇予告手当支払通知書も交付します)。
対象者が解雇予告手当を受け取った場合、解雇予告手当受領確認書も同時に交付し、署名捺印をしてもらって受領します。
その際、同時に退職金計算書を交付することで、解雇を通知された従業員にとって「自分がいくらもらえるか」ということが明確になり、納得してもらいやすくなります。
従業員がその場で解雇予告手当を受領しなかった場合、後日、指定された期日に、対象者の口座に振り込むことになります(入金後に受領書を送ってもらいます)。
このような方法により、「従業員が会社による解雇の意思表示を異議なく受け入れた」と主張しやすくなります。
「解雇予告手当を受領しただけでは解雇を認めたことにはならない」とする過去の裁判例もありますが、解雇予告手当の受領(受領確認書への署名押印)は解雇の効力を判断する上で、会社側に有利な要素となるでしょう。
もっとも、無理に受領確認書を書かせたりすると「強要された」と争われる可能性があるので注意が必要です。
解雇予告手当支払通知書及び解雇予告手当受領確認書には以下の事項の記載が必要とされています。
【解雇予告手当支払通知書】
・対象者の氏名
・解雇日
・解雇予告手当の支払期日
・解雇予告手当の支給額(計算方法)
・解雇支払手当の支払い方法
・会社名、代表者職氏名
【解雇予告手当受領確認書】
・対象者の氏名
・解雇予告手当の受領日
・解雇予告手当を受領した事実
・解雇予告手当の受領額
・会社名、代表者職氏名
このように、解雇にあたっては、適宜必要な書面を交付することで、解雇する従業員に納得してもらいやすくなり、後に紛争となった場合の会社側に有利な証拠となりえます。
【注意】
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