1.介護保険サービスの種類と事業主体
介護保険制度では、主に、要介護者に対する各種サービスにつき介護給付が、要支援者に対する各種サービスにつき予防給付がそれぞれ支給されますが、介護保険法上、大別して、
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
- 施設サービス
があります。
介護保険法は、大まかにいえば、一定の財源をもって介護サービスの対価に充てる仕組みになっています。そのため、民間事業者などが介護保険サービスに参入することは、当初から予定されていました。
しかしながら、要介護者の方に対するサービスには、様々な知識・経験・設備等が必要になりますので、法律上、事業主体が限定されているサービスが存在します。
まず、介護老人福祉施設は特別養護老人ホームである必要がありますが(介護保険法86条)、特別養護老人ホームを設置できるのは、都道府県、市町村、地方独立行政法人及び社会福祉法人に限られています(老人福祉法15条)。
また、介護老人保健施設の設置も、地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者に限られています(介護保険法94条)。
さらに、介護療養型医療施設も病院または診療所である必要があります(ただし、平成24年4月1日以降、新設は認められていません。2023年度末に廃止され、介護医療院に転換されます)。
そのため、これらの施設サービスはもちろんのこと、これらの施設で実施される短期入所サービスや地域密着型サービスも、株式会社などの民間事業者は実施することができません。
2.介護サービスの種類
居宅サービス(介護保険法8条1項)
居宅サービスには、大別して、介護福祉士などが居宅を訪問する訪問サービス、要介護者が介護施設に通所する通所サービス、要介護者が介護施設に短期間入所するサービス、その他福祉用具の貸与や購入のサービスなどがあります。それらのサービスについては介護保険法により、詳細に区分分けされています。
訪問サービス
- 訪問介護(介護保険法8条2項)
- 訪問入浴介護(同条3項)
- 訪問看護(同条4項)
- 訪問リハビリテーション(同条5項)
- 居宅療養管理指導(同条6項)
通所サービス
- 通所介護(デイサービス)(同条7項)
- 通所リハビリテーション(デイケア)(同条8項)
短期入所サービス
- 短期入所生活介護(ショートステイ)(同条9項)
- 短期入所療養介護(同条10項)
その他
- 特定施設入居者生活介護(同条11項)
- 福祉用具貸与(同条12項)
- 特定福祉用具販売(同条13項)
地域密着型サービス(同条14項)
地域密着型サービスは、要介護者が居住する市区村町内で提供されるサービスであり、次の8種類が規定されています。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(同条15項)
- 夜間対応型訪問介護(同条16項)
- 地域密着型通所介護(同条17項)
- 認知症対応型通所介護(同条18項)
- 小規模多機能型居宅介護(同条19項)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)(同条20項)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護(同条21項)
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(同条22項)
- 複合型サービス(同条23項)
施設サービス(同条26項)
施設サービスは、施設における介護サービスであり、次の3種類が規定されています。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)(同条27項)
- 介護老人保健施設(老人保健施設)(同条28項)
- 介護療養型医療施設
※平成24年4月1日、条文の規定から削除されました。2023年度末に廃止され、介護医療院に転換されます。
3.介護予防サービスの種類
要支援1・2の人が利用できる介護予防サービスとして、生活機能や生活意欲の維持・向上の為に利用する介護予防サービス(介護保険法8条の2第1項)と住み慣れた地域での生活を支援するための地域密着型サービス(介護保険法8条の2第12項)があります。
介護予防サービス
訪問系サービス
- 訪問型サービス(総合事業)
自力で困難な行為を、家族や地域などの支援が受けられない場合に提供されます(原則、同居家族がいる場合は対象外となります)。 - 介護予防訪問入浴介護(同条2項)
- 介護予防訪問看護(同条3項)
- 介護予防訪問リハビリテーション(同条4項)
- 介護予防居宅療養管理指導(同条5項)
通所系サービス
- 通所型サービス(総合事業)
食事や入浴など日常生活上の支援などに加え、目的に合わせて運動器の機能向上・栄養改善・口腔機能の向上のサービスを選択できます。 - 介護予防通所リハビリテーション(同条6項)
短期入所
- 介護予防短期入所生活介護(同条7項)
- 介護予防短期入所療養介護(同条8項)
その他
- 介護予防特定施設入居者生活介護(同条9項)
- 介護予防福祉用具貸与(同条10項)
- 特定介護予防福祉用具販売(同条11項)
- 介護予防住宅改修費支給(同法57条)
地域密着型サービス
- 介護予防認知症対応型通所介護(介護保険法8条の2第13項)
- 介護予防小規模多機能型居宅介護(同条14項)
- 介護予防認知症対応型共同生活介護(同条15項)
*要支援1の方は利用できません。
以下、詳細ページのご案内です。
- 高齢者福祉サービスとは(総論:種類・事業主体)
- 高齢者福祉サービスの内容1(訪問介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容2(通所介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容3(介護施設サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容4(高齢者向け住宅)
- 介護保険制度とは(総論)
- 施設利用契約の注意点1(書面作成、契約内容)
- 施設利用契約の注意点2(認知症の場合)
- 施設利用料の滞納
- 施設運営での注意点1(総論:法令上の義務)
- 施設運営での注意点2(利用者の身体拘束)
- 施設運営での注意点3(医療行為)
- 成年後見制度の利用1(総論、高齢者の財産管理)
- 成年後見制度の利用2(医療行為の同意)
- 成年後見制度の利用3(任意後見制度)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合1(後処理)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合2(死後事務委任)
- 施設の事業譲渡
- 施設の自己破産