高齢者福祉サービスの内容2(通所介護サービス)
1.通所介護(デイサービス)と通所リハビリテーション(デイケア)
(1)通所介護
通所介護(デイサービスと呼ばれることもあります)とは、居宅要介護者に、特別養護老人ホームや老人デイサービスセンター等に通わせ、入浴、排せつ、食事等の介護、生活等に関する相談・助言、健康状態の確認その他必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスです(介護保険法8条7項)。施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。 通所介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施されています。
(2)通所リハビリテーション
これに対し、通所リハビリテーション(デイケアと呼ばれることもあります)は、居宅要介護者に、介護老人保健施設や病院、診療所に通わせ、心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるための理学療法、作業療法等の必要なリハビリテーションを行うサービスをいいます(同条8項)。
なお、要支援1・2の利用者を対象とした介護予防通所リハビリテーションでは、生活機能を向上させるための「共通的サービス」に加え、「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔機能の向上」に関するサービスを組み合わせて受けることができます。
これらのサービスは、特別養護老人ホームや老人保健施設、病院などに併設して提供されていることが多いです。また、どちらも居宅要介護者に通わせるという点では共通しますが、サービスを提供する主体が異なっています。デイサービスは、主に社会福祉法人、地方自治体、民間企業、NPOが提供しているのに対し、デイケアは、主に医療法人が提供しています。 もっとも、最近では、通所介護でもリハビリテーションを提供するところも多くなっており、両者のサービスの違いは曖昧になってきているといわれています。
2.通所サービスの特徴
利用者からのニーズが高い
通所サービス、殊に、通所介護サービス(デイサービス)には、要介護者の心身機能を維持・回復させる目的だけではなく、要介護者が一時的に居宅から離れることによって、介護に従事する家族にリフレッシュする機会を与え、介護の負担を軽減させる目的もあるため、利用者からのニーズは非常に高くなっています。
また、事業者の側でも、通所介護の場合、利用者を送迎バスなどで送り迎えすることで、比較的多くの要介護者を集めることができるため、特別養護老人ホームなどの施設サービス事業では、通所サービスを併設することで効率的な運営が可能となるというメリットがあります。
お泊まりデイサービス
このようにデイサービスの需要は高いのですが、デイサービスはあくまでも日帰りを前提としています。ところが、介護に従事する家族が介護疲れからリフレッシュするという目的のためには、要介護者が日帰りではなく宿泊することができれば、より利用者のニーズに適うことになります。
そして、本来、このニーズに応えるべき介護サービスとして、介護保険法上、短期入所生活介護(ショートステイ)などの短期入所型が予定されています。しかし、短期入所型のサービスは、施設に関する基準が厳しいものであるため、新規に参入できる事業者が少なく、ショートステイ利用のニーズに十分に対応できていないのが実情です。
そのため、ショートステイの需要と供給のギャップを埋めるサービスとして、いわゆるお泊まりデイサービスという新たなサービスが考え出されました。
もっとも、このお泊まりデイサービスは、介護保険法上の介護サービスの範囲外にあるサービスであるため、当然、保険給付の対象となりません。費用は事業所によってバラツキがあります。1泊数百円で対応しているところもあれば、数千円のところもあり、幅があります。また、宿泊費に、食事代が加算されることもあり、その費用も事業所や要介護度によって違いがあります。
さらに、介護保険法上の短期入所型に関して設けられているような基準もありません。そのため、中には、多数の要介護者を雑魚寝させるといった、介護サービス事業として不適切な事例が発生するという事態も生じました。
3.お泊まりデイサービスへの規制
上記のような不適切な事例の発生を受けて、厚生労働省や行政側の省令により、平成27年4月からお泊まりデイサービスを行なう場合に、「都道府県もしくは市町村への届出制」及び「事故があった場合の市町村や家族に連絡を義務付け」「市区町村の監視体制」といった施策を打ち出しています。また、都道府県は、届出の内容を介護サービス情報公表制度にもとづいて公表することも定めています。
さらに、厚生労働省が新たにお泊まりデイサービスに関するガイドラインを策定しました。ガイドラインでは、利用定員や一人当たりの床面積、緊急時対応などの指針が定められています(「指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等以外のサービスを提供する場合の事業の人員、設備及び運営に関する指針について」)。
お泊まりデイサービスの運営基準
お泊まりデイサービスは、各自治体のガイドラインの運営基準に則り、サービスを展開していきます。
- 利用定員については、日中のデイサービスの定員の半分以下とし、最大でも9人までとしています。
- 個室は1名で利用が基本ですが、利用者が希望すれば2名までの利用も可能となっています。相部屋については最大4名で、1室あたりの床面積は最低7.43平方メートル、4畳以上の確保が必要となります。
- その他、消防法に定められているスプリンクラーや火災報知器、消火器などの防火設備を設置や、災害時に必要な備品の備蓄も推奨されています。
お泊まりデイサービスの課題
上記のように、様々な施策が打ち出されているものの、お泊まりデイサービスでは、未だに劣悪なサービスが存在していることも事実です。
現在のお泊まりデイサービスの運営基準には、看護師が専従することなど専門職の人員基準は特に設けられていません。また、低価格がゆえに、十分な介護士の賃金を支払うことができないことも多く、夜勤職員で無資格者の方がケアに携わることも多いようです。
しかし、在宅介護で困窮するご家族様や要介護者の受け皿が少ないため、お泊まりデイサービスに対する厳しい規制には行政も消極的な一面があるようです。
以下、詳細ページのご案内です。
- 高齢者福祉サービスとは(総論:種類・事業主体)
- 高齢者福祉サービスの内容1(訪問介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容2(通所介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容3(介護施設サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容4(高齢者向け住宅)
- 介護保険制度とは(総論)
- 施設利用契約の注意点1(書面作成、契約内容)
- 施設利用契約の注意点2(認知症の場合)
- 施設利用料の滞納
- 施設運営での注意点1(総論:法令上の義務)
- 施設運営での注意点2(利用者の身体拘束)
- 施設運営での注意点3(医療行為)
- 成年後見制度の利用1(総論、高齢者の財産管理)
- 成年後見制度の利用2(医療行為の同意)
- 成年後見制度の利用3(任意後見制度)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合1(後処理)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合2(死後事務委任)
- 施設の事業譲渡
- 施設の自己破産