高齢者福祉サービスの内容3(介護施設サービス)
介護施設サービス事業の種類
介護保険施設とは、介護保険法上の施設サービス(同法8条26項)を行う施設をいい、
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
の3施設があります。
介護が中心か、治療が中心かなどによって、入所する施設を上記3種類から利用者が選択します。入所の申し込みは介護保険施設へ直接行い、事業者と契約します。
介護老人福祉施設は特別養護老人ホームにて提供できるサービスですが、現在は、基本的に、要介護3から5のいずれかの要介護認定を受けている人のみが対象となります。
また、介護老人保健施設は、本来は病院などでの入院治療の後、自宅に戻るまでの短期間の入所が予定されていた施設ですが、仕事などの関係上、自宅介護が困難である等の理由から、長期入所に利用されていることが多いのが実情です。
そして、介護療養型医療施設は、将来的に廃止されることとなっています。
以上3つの施設の特徴を一つずつご説明いたします。
(1) 介護老人福祉施設
介護老人福祉施設(介護保険法8条26項)とは、老人福祉法上の特別養護老人ホーム(入所定員が30人以上であるものに限ります。)であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設です。
そして、都道府県知事の指定を受けることによって、介護保険法上の指定介護老人福祉施設となり、介護保険施設の一つとなります(同法48条、86条)。
要介護者がこの指定介護老人福祉施設において提供される施設介護サービスを受けることにより、市町村から、施設介護サービス費が施設に対して支給されます。
事業に必要な専門職
介護老人福祉施設の事業に必要な専門職は以下のとおりです。
- 医師
- 生活相談員
- 介護職員又は看護師もしくは准看護師
- 栄養士、管理栄養士、保健師、介護福祉士
- 機能訓練指導員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、看護師、准看護師、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師)
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)
介護老人福祉施設の設置者については、特別養護老人ホームであることが前提となるため、特別養護老人ホームが設置できる地方公共団体、社会福祉法人などに限られています(老人福祉法15条)。
平成27年度改正の議論の際、要介護者の増加に伴い、介護老人福祉施設への入所待ち要介護者が急増している現状を鑑み、より要介護度の高い要介護者が、可能な限り介護老人福祉施設に入所できるように法改正され、現在は、基本的に、要介護3から5のいずれかの要介護認定を受けている人のみが対象となっています。
(2) 介護老人保健施設
介護老人保健施設(介護保険法8条28項)とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設です。
介護老人福祉施設が主に介護サービスの提供を目的とする施設であるのに対し、介護老人保健施設は、急性期の治療を終えるなど、入院治療の必要性はなくなったものの、介護が必要な状態である要介護者に対し、看護、医学的な管理の下で介護やリハビリテーションを提供するための施設とされています。
入所資格を有する者は、病状安定期にあり、介護老人保健施設において、看護医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療を要する要介護者であり、本人や家族の申込みにより、施設側の入所判定で入所を認められた場合に入所することができます。
その意味では、この介護老人保健施設は、本来的には短期間の入所が予定されている施設です。つまり、病院などへの入院治療の後、自宅に戻る、あるいは、前述の特別養護老人ホームに移るまでの間を橋渡しすることが目的とされているのです。そのため、入居期間は原則として3~6か月とされています。
しかし、前述したとおり、長期的入所されている要介護者が多いのが実情といえます。
事業に必要な専門職
介護老人福祉施設の事業に必要な専門職は以下のとおりです。
利用者100名当たりで最低限配置が求められる医療専門職者数
- 常勤の医師1名
- 看護師9名、介護士(介護福祉士)25名
- 理学療法士、作業療法士または言語聴覚士1名
- 介護支援専門員1名
- 支援相談員1名
要件に定められていない上記以外の専門職
- 訪問介護員
- 管理栄養士
- 社会福祉士
など。
また、介護老人保健施設の設置者は、地方公共団体、医療法人、社会福祉法人に限られていますが(介護保険法94条)、看護や医学的な管理の下での介護やリハビリテーションを提供する施設であるため、多くは医療法人が設置しています。
(3) 介護療養型医療施設
介護療養型医療施設とは
介護療養型医療施設とは、療養病床等を有する病院または診療所であって、当該療養病床等に入院する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて療養上の管理、看護、医学的管理下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療を行うことを目的とする施設です。
介護老人保健施設とは異なり、長期にわたる療養を必要とする要介護者を対象とする施設であり、本人や家族の申込みにより、施設側の入所判定で入所を認められた場合に入所することができます。
介護療養型医療施設の問題点として、医療や看護をほとんど必要としない入所者が多く、介護保険給付費の無駄や、医療保険が適用される療養病床と機能が似ていることが指摘されていました。
そのため、この介護療養型医療施設は前記の介護老人保健施設への一本化が予定されており、平成23年介護保険法の改正により、平成24年3月までに廃止されることが予定されていました。しかし、介護老人保健施設への一本化が予定どおりに進んでいないため、廃止期限が平成30年3月までと延長されました。
介護医療院の創設
そして、平成30年4月から、介護療養型医療施設の転換施設として、日常的な医学管理が必要な重度介護者を受け入れるための施設として、看取り・ターミナルケアなどの機能と生活施設としての機能を兼ね備える介護医療院(介護保険法8条29項が創設されました。
以後は、介護療養型医療施設は介護老人保健施設及び介護医療院に転換され、消滅することになります。
以下、詳細ページのご案内です。
- 高齢者福祉サービスとは(総論:種類・事業主体)
- 高齢者福祉サービスの内容1(訪問介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容2(通所介護サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容3(介護施設サービス)
- 高齢者福祉サービスの内容4(高齢者向け住宅)
- 介護保険制度とは(総論)
- 施設利用契約の注意点1(書面作成、契約内容)
- 施設利用契約の注意点2(認知症の場合)
- 施設利用料の滞納
- 施設運営での注意点1(総論:法令上の義務)
- 施設運営での注意点2(利用者の身体拘束)
- 施設運営での注意点3(医療行為)
- 成年後見制度の利用1(総論、高齢者の財産管理)
- 成年後見制度の利用2(医療行為の同意)
- 成年後見制度の利用3(任意後見制度)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合1(後処理)
- 身寄りのない利用者が死亡した場合2(死後事務委任)
- 施設の事業譲渡
- 施設の自己破産