明渡し請求訴訟の提起
賃借人が任意に退去しない場合、建物明渡請求訴訟を提起することになります。
裁判の大まかな流れは、
1.訴状の提出
2.期日の指定
3.訴状の送達
4.第1回口頭弁論期日
5.和解または判決
6.判決の送達
7.判決の確定
となります。
弁護士に依頼した場合、訴状の作成から期日における対応まで、全ての手続を代理人として行うことができます。
1.訴状の提出
訴状とは、訴えを起こす時に、裁判所に対して提出する書面のことです。
訴状には1.相手方に対して、どのような内容の判決を求めるのか(請求の趣旨)、2.その判決を求める法的な根拠事実は何か(請求の原因)を簡潔かつ具体的に記載します。
訴状には証拠となる書類の写しなどを添付して提出します。
一般的な建物明渡請求訴訟において必要となる書類は以下のものがあります。
1.訴状
2.不動産登記簿謄本(登記事項証明書)
3.固定資産評価額証明書
4.代表者事項証明書(原告又は被告が法人の場合)
5.予納郵便切手(約6,000円)
6.収入印紙(手数料)
7.証拠書類(最低限必要だと思われるもの)
・建物賃貸借契約書
・内容証明郵便(賃貸借契約解除を通知したもの)
・配達証明書(上記内容証明郵便についての配達証明書)
家賃滞納解除の事例の場合、上記のほか、催告書や請求書、滞納家賃の期間及び金額が分かる資料等が提出されるのが一般的です。
2.裁判期日の指定
訴状を裁判所に提出すると、1~2週間ほどして裁判所から第1回の期日(約1か月ほど先)が指定されます。
3.訴状の送達
期日が決まると裁判所は訴状の副本(原本の写し)と期日の呼出状を、相手方に郵送します。
この手続きを「送達」といいます。
書類が相手方に届かないと送達がなされていないことになり、裁判を開くことができません。
そのため、相手方が受け取らなかった場合、裁判所は改めて休日(日曜日)に配達する郵便を出したり、勤務先あてに出すといった手続がとられます。
それでもなお相手方が訴状を受け取らなかったような場合には、「付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)」という手続がとられます。
この方法によれば、相手方がその住所地に住んでいることが確認できた場合、裁判所が訴状を送達すれば、実際に相手方が受け取らなくても、送達が完了したと扱われます。
4.第1回口頭弁論期日
(1) 相手方が出頭しない場合
家賃滞納の事案では、相手方は書面も出さず、裁判所にも出頭しない場合が多いです。
この場合、相手方は、原告の主張を認めたことになり、訴状で請求したとおりの判決がでます。
この場合、概ね第1回の期日から1週間くらいで判決の言い渡しになります。
(2) 相手方が争う場合
相手方が自身の言い分を主張し、原告側の主張を争う場合には、裁判は1回では終わりません。
相手方の典型的な反論としては、「信頼関係が破壊されていないから解除は無効である」というものがあります。
この場合、原告側も相手方の言い分に対して反論する必要があります。
どの程度詳細な主張反論を必要とするかは、相手方の反論に理由があるか否かにもよります。
相手方の主張に合理的な根拠があるのか(相手方が根拠となる事実を立証できるか)について見極めつつ、訴訟を進めていくことになります。
5.和解または判決
(1) 裁判上の和解
裁判となった後も、相手方との間で和解を行うことができます。
和解は当事者の合意によって成立することから、判決と比べて、相手方が任意に明け渡してくれることを期待できる点があります。
実際に、裁判上の和解により解決する事例も多くあります。
(2) 判決
相手方が出頭しない場合や、和解が成立しなかった場合には、裁判官により判決が出されることになります。
原告が勝訴した場合、判決の内容は、被告(相手方)に対し、原告に建物を明け渡すことを命じるものとなります。
6.判決の送達
判決が出されると、裁判所は原告と被告に対して、裁判決を郵送で送達します。
判決が出てから裁判所が判決正本を発送するまで1週間程度かかる場合もあります。
相手方が判決を受け取らなかった場合には、訴状の送達の場合と同様の手続が必要となります。
なお、強制執行の際には、「相手方(被告)に判決を送達した」という裁判所の証明書(送達証明書)が必要となります。
7.判決の確定
判決が被告に送達されてから2週間が経過し、この間に相手方が控訴(判決に不服があるとして、上級の裁判所に再度の審理を求めること)をしなかった場合、判決が確定します。
被告が控訴した場合も、仮執行宣言(相手方が控訴しても強制執行ができるという文言)が判決に付されていれば、すぐに強制執行の申立ができます。
この仮執行宣言付判決を求める場合、予め訴状にその旨を記載していく必要があります。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。