更新拒絶の通知
ここでは、更新拒絶及び解約申入れ(賃借人に賃料滞納などの契約義務違反が無い場合)の手続について改めて解説します。
1.期間の定めのある契約の場合
契約に期間が定められている場合、賃貸人は契約期間満了日の1年前から6か月前までの間に、「更新をしない」という通知(更新拒絶の通知)を賃借人に出すことが必要です(借地借家法第26条1項)。
6か月前までに更新拒絶の通知をしていなければ、存続期間満了日が経過した後、契約は更新されたことになります(法定更新)。
6か月の期間を過ぎてしまった場合でも、契約を終了させる方法はあります。
この場合、更新拒絶の通知ではなく「解約申入れ」をすることになります。
解約申入れの通知は、期間満了日経過後に法定更新がなされて「期間の定めのない契約」になった後に効力を生じることになります(正当事由がある場合)。
例えば、期間満了の3か月前に解約申入れをした場合、その3か月後に契約が法定更新され、それから3か月後(解約申入れから6か月後)に解約申入れの効力により契約が終了する、ということになります。
また、契約期間満了後に借主が建物の使用を継続しているときには、賃借人は遅滞なく異議(反対の意思表示)を述べることが必要とされています(借地借家法第26条2項)。
これらの通知や意思表示は、全て配達証明付の内容証明郵便を利用して送付します。
通知の日時等に不明確な点があると、後に争われてしまう可能性があるので注意が必要です。
2.契約期間の定めがない場合
この場合、賃貸人は賃借人に対し、解約申入れを行うことになります。
解約の申入れはいつでも行うことができ、解約申入れから6ヶ月間が経過したときに契約は終了することになります(借地借家法第27条1項)。
ただし、契約期間の定めがある場合と同様、解約申入れから6か月が経過した後も賃借人が建物の使用を継続しているときには、賃貸人は遅滞なく異議を述べることが必要です。
この異議(賃借人が建物を使用することを認めない意思表示)がないと、契約が更新されてしまうので注意が必要です(借地借家法第27条2項)。
3.正当事由
法律上、更新拒絶通知と解約申入れについては、いずれも「正当事由」が必要とされています(借地借家法第28条)。
そのため、賃借人が更新拒絶又は解約申入れによる賃貸借契約の終了を検討しているのであれば、正当事由の要件を満たすことができるか、そのためにはどのような対策をすればよいかについて検討する必要があります。
正当事由の判断要素については、借地借家法28条に挙げられています。
1.建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む)がそれぞれ当該建物の使用を必要とする事情
2.建物の賃貸借に関するこれまでの経過
3.建物の利用状況
4.建物の現況
5.建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として立退料の支払いを申し出た場合にはその申出
これらの要素のうち、最も重要になるのが1.の必要性で、2.から4.は副次的な判断要素となっています。
一応の正当事由がある場合には、5.立退料の金額により調整されます。
そうなると、賃貸人は、あらかじめ、これらの正当理由を基礎づける事情としてどのようなものがあるか、仮に相手方と解約合意ができなかった場合に支払わなければいけない立退料などについて、最初からある程度の見通しを持っておいた方が良いということになります。
もっとも、正当事由や立退料の検討をするためには、法律や不動産に関する専門知識が必要であり、賃貸人のみでは対処できない事案が多いと思われます。
そのため、正当事由が問題となる事案では、早い段階で弁護士に相談していただくことをお勧めします。
4.正式な通知をする前に
更新拒絶や解約申入れについて事前に何の説明もなく、いきなり内容証明郵便により通知書を送ってしまうと、賃借人の感情を害してしまい、その後の交渉がうまくいかなくなってしまう可能性があります。
賃借人と話し合いがなされていない場合には、更新拒絶や解約申し入れの通知を送るのに先立って、賃借人に事情を説明する連絡書面を送り、相手が意見を述べる機会を設けておいた方が無難であるといえるでしょう。
実際に、最初に賃借人に書面で連絡を行い、そこから交渉を開始して、期間満了の6か月前が近づいた時点で更新拒絶の通知を送るといった例もあります。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。