弁護士依頼のメリット
建物の貸し借りに関する法律問題は、貸主・借主双方にとって重大な問題です。
どちらの立場であっても、法律上の権利を守るために弁護士に相談することに意味があるといえるでしょう。
ここでは、特に賃貸人が建物明渡の手続を弁護士に依頼するメリットについて説明いたします。
賃貸人が建物明渡しを弁護士に依頼するメリットとして、1.法的知識に基づいてリスクの少ない解決ができること、2.交渉技術・裁判の可能性の判断等について専門性があること、3.依頼者の時間的・精神的負担を軽減できることがあげられます。
1.リスクの少ない解決
賃貸物件の管理会社やオーナーの方(賃貸人)は、家賃の長期滞納や無断転貸等の悪質な契約違反行為への対応に苦慮されている場合が多いと言えます。
そのような賃借人に対しては、速やかに明渡しを求める必要があります。
もっとも、今まで述べた通り、明渡しを実現するためには適切な法的手続にのっとって進めなければなりません。
こうした問題に対して、一時期は家賃の保証会社などが対応にあたっていました。
しかしながら、そうした業者は法律の専門家ではないため、無断での鍵の取り替えるなどの違法行為が相次ぐ事態になり、結果として警察沙汰、裁判沙汰になった事例も少なくありません。
中には直接関わっていない賃貸人までもが予期せぬトラブルに巻き込まれてしまったような事例もあります。
このように、債務者である賃借人に賃料滞納などの債務不履行があったとしても、債権者である賃貸人や管理会社が違法な手段で退去を求めるようなことがあれば、法的責任が問われることになりかねません。
場合によっては賃借人から逆に損害賠償を求められ、賃貸人側の経済的負担が更に増大してしまうおそれもあります。
法治国家では自力救済が禁止されているため、賃貸人は、法律を守った上で、適切かつ迅速に賃借人の法的責任を追及する必要があります。
この点で、法律の専門家である弁護士に依頼し、交渉や法的手続を任せるという方法は、リスクの少ない最善の解決方法と思われます。
2.専門性(交渉技術、裁判の可能性判断)
賃借人の契約違反が明らかな場合であっても、賃貸人による契約解除と明渡しが認められない場合もあります。
これまで述べたように、裁判においては、「賃借の契約違反が信頼関係を破壊する程度まで至っていない場合」には、解除が有効であるとは認められないためです。
事案によっては、この「信頼関係破壊」にあたるか否かを判断することが難しい場合もあります。
近年は、インターネットの発達や弁護士にアクセスする敷居が低くなったことに伴い、賃借人側も一定の法的知識を持って対抗してくる可能性が少なからずあります。
そのような事態に備えるために、賃貸人の側も弁護士に相談することが必要であると言えます。
賃借人の契約違反がなく、更新拒絶や解約申入れにより契約を終了させる場合、すなわち正当事由が問題となる事案では、更に難しい対応を迫られるといえます。
この種の事案では、賃借人から法外な立退料を請求されたり、裁判で賃貸人の主張する正当事由が認められず敗訴してしまったり、予想外に高額な立退料の支払い命じる判決が出されてしまったりする場合があるためです。
そのため、賃貸人側は後に訴訟になる可能性も視野に入れて、賃借人と話し合いを行い、最善の解決を図らなければなりません。
このような交渉や見通しの判断には高度な専門性が求められるため、弁護士に依頼する必要性が高いと言えるでしょう。
3.時間的・精神的負担を軽減
弁護士は、依頼者の代理人として、全ての法的手続を代理することができます。
弁護士にご依頼いただいた場合は、書面作成や賃借人との交渉、裁判になった場合の裁判所への出頭まで、全ての手続を一貫して行うことができます。
弁護士などに依頼しない場合、賃貸人は、賃借人と直接会って交渉し、書面の作成や裁判所への出頭、強制執行等の全ての手続を独力で行うことになり、時間的・精神的な負担が生じます。
特に、賃貸人に対して過大な要求をしてきたり、義務違反があるにもかかわらず居直っているような賃借人を相手に交渉を続けることは、賃貸人に非常に大きなストレスとなることが予想されます。
弁護士に依頼することで、このような時間的・精神的負担から解放されることができます。
「弁護士に全てを任せてしまうと、相談もなく勝手に手続を進められてしまうのではないか」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、少なくとも弊所においては、そのようなことは決してございません。
弊所ではご依頼いただいたお客様のお気持ちを第一に考え、随時ご意向を伺いながら必要な手続を進めていくことをお約束いたします。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。