建物賃貸に関する法律
ここでは、建物の貸し借りに関する法律関係について解説します。
詳細については、各項目のページをご参照ください。
1.借地借家法について
借地借家法は、建物の所有を目的とする土地の賃借権(借地権)の存続期間・効力、及び建物の賃貸借の契約の更新・効力等に関して規定された法律で、民法に優先して適用される法律(特別法)となっています。
「賃借人の保護」という目的で制定された法律であることから、民法で定められているよりも、賃借人の権利が強化されているのが特徴です。
2.借地借家法が適用される要件
借地借家法が適用されるのは、当該建物が「借家」、すなわち「建物の賃貸借」にあたる場合です。
貸し借りの対象が「建物」とはいえない場合や、建物を無償で貸している場合には、借地借家法の適用はありません。
一般的な建物の賃貸借の場合、「借家」にあたるものとして扱われるのが原則です。
例外として、一時使用目的の賃貸借(借地借家法40条)である場合には、借地借家法は適用されません。
3.契約の類型
建物の貸し借りが行われる場合の契約の類型は、大きく分けて2種類あります。
有償での貸し借りを「賃貸借」、無償である場合は「使用貸借」といいます。
賃貸借であるか使用貸借であるかによって、貸主と借主の権利義務や契約終了の要件などが大きく異なります。
賃貸借契約であれば借地借家法が適用されますが、使用貸借には借地借家法は適用されません。
賃貸借契約には、長期間にわたり契約が継続することが予定されている普通借家契約のほか、一定期間の満了で契約が終了する定期借家契約があります。
4.賃貸借契約の終了事由
賃貸借契約が終了するのは、以下の場合があります。
(1) 賃貸借契約の合意解約
貸主と借主の話し合いにより、賃貸借契約を終了させる方法です。
(2) 賃貸借契約の解除
賃貸人又は賃借人の一方的な意思表示により、契約又は法律の規定に従って契約が終了します。
典型的な例として、賃借人が賃料を支払わなかった場合に、賃貸人が債務不履行を理由として契約を解除する場合がこれにあたります。
(3) 賃貸借契約の満了(更新拒絶)
期間の定めのある賃貸借は、期間の満了によって終了します。法律上、一定期間内に賃借人に更新拒絶の通知をすること、「正当事由」を備えることが要件となっています。
(4) 賃貸借契約の解約申入れ
期間の定めがない賃貸借契約において、一方当事者が意思表示により賃貸借契約を終了させるものです。
更新拒絶の場合と同様に「正当事由」が必要です。
(5) 目的物の滅失
建物が災害などにより滅失してしまった場合、契約は目的を失って終了することになります。
5.契約終了時の注意点
賃貸借契約の終了は、解除による場合と解約による場合があります。
(1) 契約の解除
賃借人に賃貸借契約の債務不履行(賃料不払等)がある場合には、賃貸人はこれを理由として、賃貸借契約を解除することになります。
ただし、判例上、賃借人の違反行為が賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊する程度のものであることが必要とされています(信頼関係破壊の法理)。
そのため、1か月賃料を滞納しただけでは解除は認められないのが原則です。
賃貸人に義務違反(必要な修繕をしない等)がある場合にも、賃借人は契約を解除することができます。
(2) 契約の解約
1.期間の定めのない賃貸借契約の場合
賃貸人は、「正当事由」がある場合にのみ、賃貸借契約の解約申入れをすることができます(借地借家法第28条)。
この場合、賃貸借契約は解約の申入れから6ヶ月を経過することにより終了します(借地借家法第27条第1項)。
賃借人から解約の申入れをした場合、3ヶ月が経過することによって終了します(民法第617条第1項)。
2.期間の定めのある賃貸借契約の場合
賃貸人は、期間満了時に契約を終了させたい場合には、期間満了の1年から6か月前までに、賃貸人に対して更新拒絶の通知をする必要があります。これを怠ると期間満了後に契約が更新されたものとみなされます。
期間の定めのある契約の場合、原則として期間中の解約は認められません。
ただし、契約時に賃借人に解約権を留保する特約を結んでいる場合は、賃借人から契約期間中に解約をすることが認められます。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。