借地借家法が適用される建物賃貸借とは
このページでは、民法の賃貸借の原則と、借地借家法が適用される建物の賃貸借について解説します。
1.民法上の賃貸借
まず、民法の賃貸借の原則について説明します。
このうち「建物の賃貸借」については、民法の規定が修正され、後述する借地借家法の規定が優先されることになります。
(1) 賃貸借の性質
賃貸借とは、金銭をもらって物を貸したり、金銭を払って物を借りたりする契約のことをいいます。
民法における賃貸借については、土地や建物といった不動産のみならず、不動産以外の財産(動産)も対象となります。
建物賃貸借と宅地賃貸借については借地権・借家権が定められています。
※敷金とは?
敷金とは、賃料などの賃借人が負う債務の担保(損害の保証金)として、賃借人から賃貸人に交付される金銭のことをいいます。
この敷金は、契約終了時に、賃料の未払分や賃借人が負担する原状回復費用(借主の不注意等により生じた傷や汚れ等を補修するための費用)が差し引かれ、その残額が退去後に賃貸人から賃借人に返還されます。
敷金の返還について賃借人に不利な契約は無効とされる場合があります。
なお、「礼金」と呼ばれる金銭は敷金と異なり、返還義務がないものとされています。
(2) 賃貸借の存続期間
民法上の賃貸借の期間は20年を超えることができず、更新も20年が上限とされています。
これよりも長い期間の賃貸借は20年に短縮されます。
20年以内であれば期間の定めがなくても問題ありません。
(3) 賃貸人と賃借人の権利義務
賃貸人は賃借人にベストな状態で使用収益(自ら使用・活用して利益を得ること)させる義務を負っており、目的物の使用収益に必要な修繕をする義務を負っています。
そのため、アパートに雨漏りなどの不具合が生じた際には、賃貸人が修繕工事をしなければいけないということになります。
賃貸人は、賃借人が支出した必要費(目的物を保存・管理し現状の建物価値を維持するための費用)や有益費(物件の価値を増加させる費用)については、賃借人からの費用償還請求に応じなければなりません。
もっとも、これらの費用は特約により賃借人の負担とすることも可能です。
(4) 賃料
賃料は賃貸人と賃借人の合意で決まります。
賃料の支払いは、賃借人が賃貸人の住所に持参するのが原則ですが、現在は銀行振込等による決済が一般的です。
(5) 譲渡・転貸
賃借人は、賃借権を譲渡したり、転貸したりすることができますが、賃借権の譲渡・賃借物の転貸(又貸し)は、賃貸人の承諾が必要となります。
賃借権の無断譲渡・転貸がされた場合、賃貸人は賃借人との賃貸借契約を解除できるとされています。
もっとも、判例は、賃借権の無断譲渡・転貸の事例において、契約の解除に一定の制限を設けています。
(6) 賃貸借の終了
借地借家法とは異なり、民法の賃貸借では、契約終了時に厳格な条件が定められているわけではありません。
賃貸借契約に期間の定めがある場合、その期間終了時に契約は終了します。
さらに賃貸借を続けるときは、契約の更新をすることになります。
期間の定めが無い場合、解約の申入れによって契約は終了します。
解約の申入れにより、土地については1年後、建物については3ヵ月後、動産及び貸席については1日後に賃貸借が終了します。
また、賃貸借の目的物が全部滅失した場合、賃貸借契約は終了します。
賃貸人・賃借人が死亡した場合でも、賃貸借は終了せず、賃貸人の地位及び賃借権は相続の対象となります。
2.借地借家法上の建物賃貸借
借地借家法の規定により、建物の賃貸借の存続期間や契約終了時の要件が大きく変化します。
以下では、借地借家法が適用される賃貸借のうち、普通借家契約の場合について説明します。
一定期間で契約が終了することを前提とする定期借家契約については、別の項で解説いたします。
(1) 存続期間
建物賃貸借の存続期間は、当事者間で自由に決めることができ、期間を定めなくても構いません。
ただし、1年未満と定めた場合には期間の定めのないものとして扱われます。更新については、当事者が契約の更新を合意すれば更新されます。
期間の定めのある場合、期間満了前の1年前から6ヶ月前までに、賃借人に対して更新しないことの通知をしない場合、契約は自動更新されます。
期間の定めがない場合は、当事者からの解約申入れがなされない限り、契約は終了しません。
この期間の定めのない場合の建物賃貸借の解約申入れの要件は、賃貸人と賃借人とで異なります。賃貸人は正当事由がある場合に限り、いつでも解約の申入れができます。
その場合、解約の申入れをした日から6か月後に賃貸借は終了します。
これに対し、賃借人の方から解約を申し入れる場合、申入れの日から3か月後に賃貸借が終了します。
(2) 効力
・引渡しの効力(31条)
建物の賃借人は建物の引渡し(鍵をもらうなど)を受けていれば、登記をしているのと同じ効力を得ることができ、第三者に賃借権を主張できます。
・賃料増減請求権(32条)
賃貸人及び賃借人には、事情の変化により賃料が不相当となったときは、その増額ないし減額を請求をする権利が認められています。
・造作買取請求権(33条)
また、契約期間中に、賃借人が賃貸人の同意を得て建物に取り付けた造作(建物に取り付けた物で、取り外し可能なもの。畳、建具、エアコンなどがこれにあたると言われています。)は、建物賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了した場合、賃貸人に買い取ってもらうことができます。ただし、契約によって造作買取請求権を排除することも可能です。
・建物賃貸借終了の場合における転借人の保護(34条)
転貸借がなされている状態で、建物賃貸借が終了しても、そのことを賃貸人が賃借人に通知しなければ、転借人に対して契約終了の効果を主張することはできません。また、賃貸人と賃借人が賃貸借契約を合意解除したとしても、その効果を転借人に対して主張することはできません。
・居住用建物の賃貸借の承継(36条)
居住用の建物の賃借人が死亡し、相続人がいなかった場合、その者と同居していた内縁の妻や夫や養子・養親は、賃借人の権利・義務を継承し、居住を続けることができます。ただし、賃借人が相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に、建物の賃貸人に対して反対の意思を表示したときは、この限りではありません。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。