賃貸借契約の終了とは
建物の明渡しを求める前提として、賃貸借契約又は使用貸借契約が終了している必要があります。
ここでは、どのような場合に契約が終了するのかについて説明します。
1.賃貸借契約の終了事由
賃借物件の明渡しを請求する権利は、賃貸借契約の終了によって生じます。
賃貸借契約が終了するのは、以下の場合があります。
(1) 賃貸借契約の合意解約
賃貸人と賃借人の話し合いにより、賃貸借契約を終了させる方法です。
双方が契約の終了を希望している場合なので、法的な問題が生じることはあまりありません。
(2) 賃貸借契約の解除
「解除」とは、契約の一方当事者の意思表示により、契約又は法律の規定に従い、既に有効に成立した契約の効力を消滅させることです。
それにより、その契約がはじめから存在しなかったと同様の法律効果が生じます(民法540条1項)。
契約には法的拘束力があるため、一方当事者の意思のみで契約を終了させることは原則としてできません。
そのため、契約の解除ができるのは一定の要件を満たした場合に限られます。
解除権が認められる場合は大きくわけて二種類あり、契約によって生ずる解除権(約定解除権)と、法律の規定によって生ずる解除権(法定解除権)があります。
法定解除権には、全ての契約関係に適用される解除権(民法541条以下)と個々の規定で定められている個別的な解除権があります。
賃貸借契約の場合、契約に定められた賃料の支払いを怠ると、債務不履行(正当な理由なく約束された給付等を行わないこと)として契約が解除できることになります(ただし、どの程度の不履行があれば解除ができるかは事案によります)。
また、無断転貸による契約解除(民法612条)も認められています。
(3) 賃貸借契約の満了(更新拒絶)
期間の定めのある賃貸借は、期間の満了によって終了します。
もっとも、建物の賃貸借契約の場合、期間満了の1年前から6か月前までに、賃貸人が賃借人に対し契約の更新をしない旨の意思表示をすることが要件となっています。
この更新拒絶の際に「正当事由」が必要であることは、別の項で述べたとおりです。
(4) 賃貸借契約の解約申入れ
解約申入れとは、期間の定めがない賃貸借契約において、一方当事者が意思表示により賃貸借契約を終了させるものです。借地借家法の定めにより、解約申入れには正当事由が必要であり、契約が終了するのは解約申入れから6か月後となります。
(5) 目的物の滅失
賃貸借契約はその契約の目的物を借主に貸して使用させるという契約です。
そのため、契約の目的物が滅失してしまった場合、契約は目的を失って終了することになります。
例として、賃貸借契約の目的物である建物が地震で倒壊してしまったり、火災により焼失してしまったりした場合が考えられます。
2.使用貸借契約の終了事由
使用貸借契約の終了事由については、民法では以下のように規定されています。
(1) 解除による終了
貸主に用法違反や無断転貸等があった場合、借主は契約を解除することができます。
(2) 返還時期の到来
返還時期を定めていた場合、合意された返還時期が来た時に契約は終了します(597条1項)。
(3) 使用目的の完了
借主が契約に定めた使用目的に従った使用収益を終えた時には、契約は終了します(597条2項本文)。
この目的は個別具体的なものである必要があるとされています。
(4) 使用収益に足りる期間の経過
借主が目的物を使用収益をするのに足りる期間(相当期間)が経過したといえる場合、貸主は使用貸借契約を解約することができます(第597条2項ただし書)。
(5) 返還時期・使用目的の定めのない場合
返還時期と使用目的の両方について定められていない場合、貸主はいつでも使用貸借契約を解約して返還を請求することができます(第597条3項)。
また、借主はいつでも契約を終了させて目的物を返還できるとされています。
(6) 貸主の死亡
賃貸借とは異なり、借主が死亡した場合、使用貸借契約は終了します(599条)。
他方、貸主死亡の場合には契約は終了しません。
なお、改正後の民法では、使用貸借の規定が改訂され、上記の目的物の返還時期に関する規定は「使用貸借の終了」と「使用貸借の解除」に分けて整理されています。
【注意】
弊所では、居住用物件については貸主様からのご相談・ご依頼のみをお受けしております。
居住用物件の借主様からのご相談・ご依頼(マンション・アパートを借りていらっしゃる方からの退去交渉等のご相談・ご依頼)は受け付けておりません。予めご了承ください(債務整理としてご相談をお受けすることは可能です)。
なお、テナント物件(事業用物件)については、貸主様・借主様いずれの方からもご相談・ご依頼をお受けしております。