セクハラが発生した場合の対応
職場で起こるセクハラについて、会社は責任ある対応する必要があります。
会社がセクハラ問題が起こっているのを知りながら放置していた場合、セクハラ被害者から損害賠償請求を受けるおそれがあります。
そのような事態を防ぐためには、十分な対策をしておく必要があります。
1.セクハラ指針
会社が、社内のセクハラトラブルを防止するための対処法を考えるにあたって参考にすべき重要資料が、いわゆる「セクハラ指針」です。
「セクハラ指針」とは、男女雇用機会均等法に基づき、会社が講じなければならないセクハラ防止措置について、厚生労働大臣が定めた指針のことです。
この「セクハラ指針」は、会社が、セクハラの予防、対策、再発防止などのために行っておくべき事項を定めた、重要な資料であるといえます。
2.セクハラ指針に基づくセクハラ防止策
以下では、セクハラ指針に基づく具体的な対策を説明します。
(1) セクハラ方針を明確化する
まず、セクハラに関する、会社の方針を明確にすることが必要です。
セクハラ予防のため、会社ではセクハラを許さず、厳格に禁止していること、また、セクハラを行った加害者には、厳しい処罰をするという方針を明確にし、あらかじめ、労働者に対して周知、啓発をしておくことが求められます。
(2) 就業規則に規定する
以上のセクハラに関する会社の方針を、よりわかりやすく社員全員に伝えるために、就業規則に方針を定めておく必要があります。
また、就業規則の本則とは別に、セクハラ防止規程などを作成することも検討したほうが良いでしょう。
(3) 相談窓口を定める
セクハラの相談窓口を定め、労働者にあらかじめ伝えておくことが必要です。セクハラの被害者が、どこに相談してよいかわからないという状態では、会社としてセクハラ防止の措置を十分に講じているとはいえません。
(4) 担当者を教育する
相談窓口を設けておくだけでなく、セクハラ相談窓口の担当者が、実際にセクハラ被害の申告があったときに、適切に対処できるよう、担当者に対する教育が必要です。
(5) セクハラ事実を確認する
セクハラ相談があったときは、そのセクハラの事実関係を、迅速かつ正確に把握する必要があります。
そのため、セクハラ被害申告があったらすぐに、被害者、加害者、目撃者などの関係者に対して事情聴取をし、正確な事実を把握しなければなりません。
(6) 事実確認後、速やかに被害者への配慮
セクハラがあったという事実が確認できた場合には、速やかに、被害者に対する配慮の措置を行わなければなりません。被害の拡大を防ぐために、被害者と加害者との接触がこれ以上発生することのないよう、配置転換等の配慮をする必要があります。
(7) 事実確認後、加害者への措置
セクハラの被害申告が事実であれば、セクハラ加害者に対しても措置を行わなければなりません。
具体的には、被害者と同じ部署からの異動や、会社へ来ないよう自宅待機を命じるなどの措置を講じる必要があります。
セクハラ行為に対する制裁として、懲戒解雇、懲戒処分など、どの程度の厳しい処分が可能であるかは、セクハラ行為の悪質性によって判断しなければなりません。
不相当に重い処分を下した場合には、逆にセクハラ加害者側から会社が労働審判、裁判などを起こされてしまうリスクもあります。
(8) 再発防止措置を講じる
一旦起こってしまったセクハラトラブルは、事後的な対応でできる限り損害を減らすしか手はありませんが、今後の再発は必ず防止しておくための措置を講じましょう。セクハラが事実でなかった場合も、こうした対策は必要になります。
(9) プライバシー保護措置を講じる
セクハラ問題は、社員にとって、非常に守秘性の高い情報です。
そのため、セクハラ相談者はもちろんのこと、目撃者などの関係者や、ケースによってはセクハラ加害者のプライバシーも、過度に侵害されないよう配慮しなければなりません。
(10) 被害者、協力者に不利益な取扱いをしない
セクハラの調査に協力をしたことや、セクハラの被害申告をしたことが、不利益に取扱われる理由とはならないことを定め、労働者に周知、徹底します。セクハラは、隠れて行われる場合がほとんどですから、被害申告や協力者が、セクハラの事実を会社が調査するために不可欠となります。
「セクハラを訴えると、会社に居辛くなるのではないか」といった不安を払しょくし、会社内のセクハラを明るみに出す努力をしましょう。
3.まとめ
セクハラ問題について、セクハラ指針に基づいた対策を行っていない会社は、セクハラが起こったとき、責任追及を受けるおそれがあります。
セクハラの予防のために、「セクハラ指針」に基づいた十分な対策をすることが求められます。
【注意】
弊所では、残業代請求を含む労働トラブルについて、会社経営者様からのご相談(会社側のご相談)のみをお受けしております。 利益相反の観点から、従業員・労働者側からのご相談はお受けしておりませんので、予めご了承ください。