千葉 船橋・柏・木更津の法律事務所  法律顧問・債権回収  法律顧問・債権回収・不動産取引・契約トラブル・労働問題・事業承継・法人破産のことならさくら北総法律事務所へ。

千葉 船橋・柏・木更津 弁護士法人さくら北総法律事務所

お電話でのご予約は0120-786725まで インターネットでのご予約はこちら
  1. 当事務所トップページ
  2. 法人法務トップ
  3. 高齢者施設トップ
  4. 介護事故5(徘徊事故)

介護事故5(徘徊事故)

1.徘徊事故と施設事業者の責任

デイサービスセンターでデイサービスを受けていた重度の認知症の利用者が、玄関からではなく窓から抜け出し、駅の階段で転倒し、骨折してしまいました。その窓はとても抜け出せるような高さではなく、全く想定外だったとします。このような場合でも施設事業者は損害賠償義務を負うのでしょうか。

この場合、施設事業者側に過失が認められるか否かによって、損害賠償義務の有無が決まります。

利用者が窓から抜け出すことについて、施設事業者が予測可能であり、利用者がデイサービスセンターを抜け出せば戻ってくることが困難であることがわかっていた場合には、デイサービスセンター職員は、利用者が施設を抜け出さないよう何らかの措置を講じる義務を負っていたといえます。そのような義務を負っていたにもかかわらず、利用者が施設を抜け出した場合には、デイサービスセンター職員に過失があったとして不法行為(民法709条)が成立します。

その結果、その職員の使用者である施設事業者が使用者責任として損害賠償義務を負います(民法715条)。
さらに、安全配慮義務違反による債務不履行責任(民法415条)としても損害賠償義務を負うことが考えられます。

過失が認められる場合、施設事業者は、利用者が抜け出したことによって生じた損害を賠償する責任を負いますが、責任の範囲は、利用者が施設を抜け出したことと損害との間に因果関係がある範囲に限られます(民法416条)。

2.施設事業者の義務

デイサービスを受けていた認知症の要介護者が窓から施設を抜け出し死亡した事件で、静岡地方裁判所浜松支部平成13年9月25日判決は、

  1. 要介護者が失語症を伴う重度の老人性認知症であったこと
  2. 要介護者が健脚であったこと
  3. 要介護者は多人数でいると落ち着かなくなり帰宅したがったこと
  4. (3)の事実を介護従事者は了知していたこと
  5. 事故当日も要介護者が多数の者がいる遊戯室の中で落ち着きなく過ごし、何度も玄関へ行っては介護従事者に連れ戻されていたこと
  6. 要介護者が抜け出したと思われる窓の高さが84㎝であったこと
といった事実から要介護者が脱出することは予見できたはずと認定しました。

そして、介護従事者が要介護者の窓からの脱出が予見できたにもかかわらず、何らの防止措置もとらなかったことをもって介護従事者に過失があったと認定し、損害賠償責任を認めました。

この裁判例から考えると、客観的に見て、窓の高さからして利用者が抜け出すことが困難と認められる場合には、利用者が抜け出すことを介護従事者は予見できなかったとして、窓からの脱出を防止するための何らかの措置を講じる義務までは負わないといえことになるでしょう。

また、利用者の認知症の程度により、利用者が抜け出して自力で帰宅することができるような場合であっても、介護従事者に利用者が施設を抜け出さないようにする義務が発生すると考えられます。しかし、利用者が歩行困難な者であり、仮に窓が開いていたとしても、とても窓を乗り越えることのできるような状態になく、玄関の扉が閉まっており、開けるとブザーが鳴るなどの措置が講じられていたような場合、利用者が施設を脱出することを予見することは不可能だったと判断され、介護従事者において上記義務を負わないと判断される可能性があります。

また、利用者がこれまで帰宅したがったり、施設の外に出たがったりする兆候が全くなかったという場合にも、利用者が施設を脱出することを予見することは困難であり、過失はないと判断される可能性があります。

3.介護事業者が負うべき責任の範囲

介護従事者に何らかの過失が認められ、介護従事者が不法行為責任を負う場合(民法709条)、介護施設の事業者は、当該従事者の使用者として、介護従事者と連帯して損害賠償責任を負います(民法715条)。

では、介護従事者及び施設事業者が負うべき責任の範囲はどこまででしょうか。

不法行為に基づいて負う損害賠償の範囲は、判例上、通常の人であれば予見することができる損害(通常損害)の範囲に限定されます(民法416条類推。大審院連合部大正15年5月22日判決)。

で帰宅することができたのであるから事理弁識能力を常に喪失している状態にあったわけではないこと、(2)身体的には健康で問題はなかったこと、をもって自らの生命身体に及ぶ危険から身を守る能力までは喪失していなかったと認定し、施設の脱出から直ちに脱出した者の死を予見することはできなかったとして、死亡という点についての損害まで施設は責任を負わないと判断しました。

そして、要介護者が施設を抜け出し、行方不明になったことによって要介護者の家族が被った精神的苦痛については、通常損害として慰謝料を認めました。

したがって、利用者が施設を抜け出した場合に、利用者の認知症の程度や判断能力の程度、身体の健康状態などにかんがみ、事故に遭うことが予見できたような場合には、事故によって生じた損害(治療費、慰謝料等)について施設は責任を負わなければなりません。仮に、要介護者が重度の認知症であり、自らの生命身体に及ぶ危険から身を守る能力が不十分になっている状態であることを認識していた場合は、要介助者が1人で外出しているうちに、交通事故に遭ったり、溝に落ちたり、川で溺れるなどの思わぬ事故で亡くなることについて予見できたと認められ、死亡についてまで施設事業者が責任を負う可能性もあります。

お得なキャンペーン・ご相談予約はこちら

60分無料弁護士相談実施中です
ご相談はお電話でもメールでも受け付けております。お電話は0120786725へ
ご相談の予約はこちらからどうぞ。お電話は0120786725へ オンラインでのご予約はこちら。
当事務所のご案内

当事務所のご案内

ページのトップへ戻る
 電話で予約する WEBで予約する