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介護事故3(転倒事故)

1.施設利用者の転倒事故と責任

特別養護老人ホームに入所しているAさんが、職員の歩行介助を断り、一人でトイレに行きました。その結果、Aさんはトイレに行く途中で転倒して、骨折してしまったような事件があったとします。この場合、Aさんは認知症ではなく、自分の意思で歩行介助を断ったとしても、施設を運営している事業者に損害賠償責任は生じるのでしょうか。

先に結論を申し上げますと、事業者には損害賠償責任は生じると考えられています。
では、なぜそのような結論になるのでしょうか。以下ご説明いたします。

2.介護事業者の安全配慮義務とは

安全配慮義務

安全配慮義務とは、契約等の法律関係に基づく特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務を指します。
したがって、施設利用契約に基づき、介護事業者と利用者との間でも発生します。

介護事業者の安全配慮義務

介護事業者は、利用者に対し、施設利用のサービスを提供するにあたって、利用者の生命・身体・財産に損害を与えてはならないという信義則上の義務を負っています。

具体的には、介護事業者は、施設利用契約上、サービスの提供を受ける者の心身の状態を的確に把握し、施設利用に伴う転倒等の事故を防止する安全配慮義務を負っています。

そして、安全配慮義務があるにもかかわらずこれを怠ったと認められる場合、介護事業者は、安全配慮義務違反によって生じた損害を賠償する責任を負うことになります(債務不履行責任)。

3.安全配慮義務違反の判断基準

では、今回の事例では、安全配慮義務の一環として、歩行介助をすべき義務があったといえるのでしょうか。

法律上は、介護事業者において、利用者が転倒する可能性を予測することができ、かつ歩行介助をすれば転倒を防止することができたといえる場合には、安全配慮義務として歩行介助をすべき義務があったと考えます。
そして、かかる義務、特に予測可能性の有無は、過去に転倒し怪我をしたことがあったか否か、利用者の下肢の状態(筋力の低下状況や麻痺状況)、日常の歩行能力や主治医の指示などの事実を総合的に考慮して判断されます。

類似の裁判例(横浜地方裁判所平成17年3月22日判決)では、

「原告(要介護者)は従前より足腰の具合が悪く、70歳のころに転倒して左大腿骨頚部を骨折したことがあり、本件施設内においても平成13年2月12日に転倒したことがあること、同年12月ないし平成14年1月ころにおける原告の下肢の状態は、両下肢の筋力低下、両下肢の麻痺、両膝痛、両膝の屈曲制限、左股関節、両膝関節及び足関節の拘縮、下腿部の強度の浮腫、足部のしびれ感、両足につき内反転気味の変形傾向などがあり、歩行時も膝がつっぱった姿勢で足を引きずるような歩き方で不安定であり、何かにつかまらなければ歩行はできなかったこと、原告の主治医においても原告の介護にあたっては歩行時の転倒に注意すべきことを強く警告していることからすると、本件事故当時において、原告は、杖を突いての歩行が可能であったとはいえ、歩行時に転倒する危険性が極めて高い状態であり、また、原告のそのような状態について本件施設の職員は認識しており又は認識し得べきであったといえるから、被告(介護事業者)は、通所介護契約上の安全配慮義務として、送迎時や原告が本件施設内にいる間、原告が転倒することを防止するため、原告の歩行時において、安全の確保がされている場合等特段の事情がない限り常に歩行介護をする義務を負っていたものというべきである。」

と判断されています。

4.Aさんの介助拒否が与える影響

Aさんは、自分の意思で職員の介助を断った結果、転倒しています。

このように、利用者が介護職員の歩行介助を断ったような場合でも、介護事業者の安全配慮義務違反が認められるのはなぜでしょうか。

Aさんは、認知症でないため、判断能力に特別な問題はありません。したがって、Aさんが自分の意思で介助を拒否した場合には、介助の拒否により安全配慮義務としての歩行介助義務を免れるのではないかとも考えられます。

しかしながら、介護事業者は介護の専門家であり、歩行介助をしない場合の危険性を認識しまたは認識すべき者といえます。
したがって、介護事業者は、利用者に介助を拒絶されたからといって、直ちに介助義務を免れるものではありません。

先にご紹介した裁判例においても、介護を拒否された場合であっても、介護義務者においては、要介護者に対し、介護を受けない場合の危険性とその危険を回避するための必要性を専門的見地から意を尽くして説明し、介助を受けるよう説得すべきであり、それでもなお要介護者が真摯な介護拒絶の意思を表明したような場合でなければ介護義務を免れないと判断されています。

逆に考えれば、介助を拒否した利用者に対し、介助の必要性を説明し、介助を受けるよう説得を尽くしたにもかかわらず、利用者が頑なに介助を拒んだ場合には、介護事業者は介助義務を免除されるという結論に至ります。

しかし、介護の現場でそのような説得をその都度行うよう職員に求めることは非現実的とも考えられます。

さらに、後に利用者から損害賠償を請求され、裁判となった場合、利用者に対し説得を尽くしたことを立証することは非常に困難であると考えられます。

過失相殺

Aさんが介助を拒否したとしても、原則として介護事業者の損害賠償責任は否定されません。
しかし、介助が必要にもかかわらず、介護職員の申出を断ったAさん側にも過失があるといえます。
したがって、介護事業者としては過失相殺(民法418条)を主張することによって自らの損害賠償責任を軽減させることを検討すべきです。

前記の裁判例でも要介護者の過失を認めました。ただし、介護事業者が介護の専門家であることから、より過失が大きいと判断し、要介護者の過失割合は3割と判断しました。

これに対し、仮にAさんが重度の認知症であった場合には、Aさんは事理弁識能力を常に欠く状態なのですから、Aさんに過失を問うことはできません。認知症の程度が軽い場合は、過失を問うことができる可能性がないわけではありませんが、認知症ではない場合と比較すると、過失割合は低くなります。

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