裁判所での小規模個人再生手続きの流れ
このページでは、個人再生の手続きを申し立てた後の、裁判所での手続きの流れ等につきまして、解説いたします。
申立ての提出
個人再生の手続きは、申立書類を裁判所へ提出することから始まります。
申立書類を提出する裁判所は、原則として、住所地を管轄する地方裁判所です(民事再生法5条1項)。ただし、主たる債務者と連帯保証人や連帯保証人同士、または夫婦の片方について手続きがおこなわれている場合には、もう片方の方についても同じ裁判所に申立てをすることができます。
当事務所にご依頼いただいたお客様の場合には、当事務所のスタッフが申立書類を作成し、裁判所へ提出させていただきますので、お客様に裁判所までお越しいただく必要はございません。
申立て~手続開始決定まで(保全期間)
申立てから再生手続開始決定が出るまでの間の期間を「保全期間」と呼ぶことがあります。
保全処分(民事再生法30条)
裁判所は、個人再生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより、または裁判所の判断で、再生手続開始(または却下)の決定が出るまでの間、再生債務者(個人再生を申し立てた人)の財産等が流出等しないようにするために必要な措置をとることができます(民事再生法30条)。この措置のことを「保全処分」と呼びます。
具体的には、再生債務者が借入れ先等に支払いをすることを禁止する「弁済禁止の保全処分」、再生債務者が財産を処分することを禁止する「財産の処分禁止の保全処分」や再生債務者がさらに借入れをすることを禁止する「借入禁止等の保全処分」などがあります。
保全処分の必要がある場合には、通常、個人再生手続開始の申立てと同時に、保全処分の申立てを行うことになります。
他の手続きの中止命令など(民事再生法26条)
また、裁判所は、再生手続きの申立てがあった場合に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、または裁判所の判断で、再生債務者の破産手続きや再生債務者の財産に関する裁判手続き、強制執行手続き等の中止を命令することができます。
たとえば、給与の差し押さえを受けている場合には、その中止の申立てを再生手続開始の申立てと一緒におこなうことがあります。
個人再生委員の選任
事件によっては、個人再生委員という裁判所の補助機関が選任されることがあります。多くの場合、個人再生委員には弁護士が就任します。
個人再生委員は、再生債務者の財産や収入の状況を調査したり、再生債務者が再生計画案を作成するために必要な指示やアドバイスをしたり、裁判所の手続きを補助したりする役割を果たします。
申立て時に弁護士が代理人となっている場合には個人再生委員を基本的に選任しないという運用を行っている裁判所が一般的には多いですが、東京地方裁判所のように、全件について個人再生委員を選任するとしている裁判所もあります。個人再生委員が選任された場合には、その報酬も予納金として納める必要があります。
個人再生委員が選任された場合には、個人再生委員の事務所等で面談が行われることがあります。
履行テスト
裁判所によっては、将来、再生計画にしたがった支払いを本当に続けていけるかどうかを判断するために、再生計画の認可決定までの間(多くの場合6か月間)、決められた期限までに将来予定している返済額と同じ金額を指定口座に振り込ませるというテスト(履行テスト)を行うことがあります。
このテストの時点で支払いが滞る状況のときは、個人再生手続きを利用することができなくなってしまうことがあります。
個人再生手続開始決定~債権届出・債権調査
裁判所は、個人再生手続きの開始が相当と判断した場合には、個人再生手続きを開始する決定(個人再生手続開始決定)をします。
個人再生手続きでは、将来、一定の金額を支払っていく必要がありますが、この支払金額は借金の総額によって基準が決められています。そこで、申立人(再生債務者)の借金総額を調べるために債権調査の手続が行われます。
まず、個人再生手続開始決定がされると、債権者一覧表がそれぞれの借入れ先に送付されます。
もし、送付を受けた債権者が、その内容に誤り(異議)があると判断した場合には、債権者の側で債権届出をします。債権者一覧表に記載されている債権者であって、期限内に債権届出をしなかった債権者については、債権者一覧表どおりの貸付け等があるものと扱われます。
債権認否一覧表の提出
申立人(再生債務者)は、債権者から債権届出書が送付された後、その債権届出の内容を認めるか認めないかの意見をまとめた債権認否一覧表を作成して、提出します。
届け出られた債権の金額について認めない(異議がある場合には)、期限内に書面で異議を述べる必要があります。
異議を述べられた債権者は、裁判所に評価申立てをすることができます。
以上の手続きを経て、申立人(再生債務者)の借金の総額を確定します。
再生計画案の提出~再生計画案の決議
借入れ等の総額が明らかになったら、再生計画案を作成して期限までに裁判所に提出します。
小規模個人再生手続きの場合、再生計画案が正式な再生計画となって借金の減額や分割払いなどの効果が発生するためには、債権者の決議が必要になります(給与所得等再生の場合には決議が要求されません)。
再生計画案が提出されると、裁判所は、再生計画案を議決書と一緒に各債権者に送付します。
書類の送付を受けた債権者は、回答書または意見書を返送し、再生計画案に対する意見を裁判所へ伝えます。
再生計画案が認可されるには、債権者の数の半分以上の反対がないこと、債権総額の半分以上の債権者の反対がないことが必要です。
再生計画の認可~支払い
再生計画が認可された後は、再生計画にしたがって各債権者へ支払いを続けることになります。通常は、再生計画認可決定が確定した次の月から支払いを始めることが多いです。支払いのペースは、法律上は3か月に1回以上の間隔で支払いをすることになっています(実際のペースについては再生計画案の内容によって異なります)。
再生計画にしたがって支払いをすることができない場合には、再生計画認可決定が取り消されてしまうことがあります。