個人再生委員とは
個人再生委員とは、個人再生の申立てが行われた際、裁判所の判断によって選任される裁判所の補助機関です。通常は、弁護士などが個人再生委員に選任されます。
個人再生委員は、申立人(再生債務者)の収入や財産の状況などを調査する、裁判所が判断をする際に意見を述べたり補助をしたりする、申立人(再生債務者)が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をおこなうなどの業務を行います。
個人再生委員を選任するかどうかは裁判所の判断によります。法律上は、すべての個人再生申立事件について個人再生委員を選任しなければならないわけではありません。
多くの地方裁判所では、申立人本人が個人再生手続き開始の申立てをした場合は基本的に個人再生委員を選任するものとしています。
他方で、弁護士を代理人として個人再生の申し立てをおこなった事件については基本的に個人再生委員を選任しないとする裁判所が多いですが、東京地方裁判所など、基本的にすべての個人再生事件について個人再生委員を選任することとしている裁判所もあります。
個人再生委員が選任された場合には、その報酬も予納金として準備する必要があります。そのため、申立ての費用とは別に20万円~30万円前後の予納金が必要になることがあります。
個人再生委員の職務
民事再生法223条2項では、個人再生委員が次のような職務をおこなうことを定めています。
- 再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること
- 評価申立てがあった際に再生債権の評価に関し裁判所を補助すること
- 再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすること
つまり、個人再生手続きを進めるためには、申立人(再生債務者)の財産状況を確認し、借金の残高と今後の返済しなければならない金額を計算して再生計画(案)を作成し、さらに計画が守れるかどうかをチェックする必要がありますが、これらの手続きに必要な調査を個人再生委員が行うことになります。
個人再生委員は、調査の結果を裁判所や申立人(再生債務者)へ報告し、意見を述べたり勧告をおこなったりします。
以下、手続きの流れに沿って具体的に説明します。
個人再生の申立て~開始決定まで
個人再生委員は、個人再生の申立てがあり選任された後、再生手続きを開始する条件を満たしているかどうかについて、裁判所へ意見を提出します(①)。
個人再生委員は申立書などの書類をチェックしたり、申立人と面談をしたりして、申立人(再生債務者)の収支や財産の状況等を踏まえ、裁判所へ意見書を提出します。
債権調査手続き
個人再生手続きが開始された後、借金の総額をはっきりさせるために債権調査手続きがおこなわれます。
ここで、債権者(貸主)と申立人(再生債務者)との間で借金の金額に関する意見が違う場合には、債権者の評価申立てにより、個人再生委員が中立の立場から調査をおこない、借金の金額を評価します(②)。
個人再生手続きが始まった当初は個人再生委員が選任されなかったというケースでも、債権額に争いがあり債権者が評価申立てをした場合には、個人再生委員が選任されることになります。
再生計画案の提出~認可まで
個人再生委員は、再生計画案が提出された後、再生計画案に定められた支払い金額が最低弁済額の基準などの民事再生法で決められたルールにしたがっているかどうか、また、申立人(再生債務者)が計画にしたがって本当に支払いを続けることができるかどうかをチェックし、裁判所へ意見を伝えます(③)。
また、個人再生委員は、個人再生手続きの間、実際に毎月将来の予定返済額を支払えるかどうかをテストすることがあります(履行可能性テスト)。
ここで振り込まれた金額は、個人再生委員の報酬を差し引いた後、残額があれば返還されます。
裁判所は、個人再生委員の意見を踏まえ、再生計画の認可(または不認可)決定をおこないます。
個人再生委員は中立な立場で職務をおこなう
個人再生委員は、中立的な立場から職務をおこなう裁判所の機関です。個人再生委員は、個人再生をしたい申立人(再生債務者)に勧告などをおこなうことはありますが、申立代理人弁護士と異なり、申立人(再生債務者)の味方となってサポートする立場の役職ではありません。
申立人(再生債務者)の立場に立った法律手続上のサポートが必要な場合には、弁護士を申立代理人とする必要があります。
※司法書士には地方裁判所で手続きをおこなう代理権がありませんので、書類の作成までしかお客様をサポートできません。
個人再生委員の報酬の目安
個人再生委員の報酬は、裁判所で必要な手続き費用(予納金)の一部として、申立てをしたい人が準備する必要があります。
必要な金額は、ケースの事情やどの裁判所に申し立てるかなどによって異なります。一般的には、15~25万円程度の金額が必要になります。