再生計画とは
再生計画とは、債務者が債権者への支払いをどの程度おこなうか(逆にいうとどの程度借金等をカットするか)等を中心に、事業再生という目的を達成するために、債務者が守らなければならない根本ルールを定めたものです。
再生計画は、債務者が原案となる再生計画案を裁判所に提出し、債権者集会で債権者の決議を得た後、裁判所が認可することによって、効力を生じます。
再生計画案に記載する事項は、民事再生法で決められていますから、債務者はこれにしたがって再生計画案を作成しなければなりません。
再生計画案に記載する事項
権利変更条項
権利変更条項とは、どのくらいの債務が免除または支払いの対象となり、どのようなスケジュールで支払いがなされるかということを定めたものです。権利変更条項は、再生計画案の核心となる部分です。
債権者への弁済率(将来の支払い金額)は、破産手続きをした場合に、債権者に分配される金額を上回る必要があります(清算価値保障原則)。
共益債権および一般優先債権の弁済に関する条項
債務者に対する債権のうち、一定のものは共益債権、または一般優先債権というカテゴリに区分され、再生手続きと関係なく、随時支払いを受けることができるとされています。これらの債権に関する事項は再生手続きとはある意味関係がありませんが、裁判所や債権者が再生計画の内容や実現可能性を検討するために必要なため、記載するようにされています。
開始後債権に関する条項
開始後債権がある場合には、その内容を記載する必要があります。
資本構成の変更に関する条項
スポンサーを付けて再生を試みる場合などに、スポンサーが増資または減資を希望している場合や、株主の責任追及の方法として減資をおこなう場合、裁判所の許可を得て、再生計画で増資・減資をすることができます。
再生計画案に対する監督委員のチェック
提出された再生計画案は、監督委員がチェックします。監督委員は、民事再生法に定められた不認可事由がないかどうか調査し、裁判所に調査報告書(意見書)を提出します。裁判所は、調査報告書(意見書)を参考にして、再生計画案を債権者の決議にかけるかどうかを決めます。また、調査報告書は、債権者の議決権の行使の際にも参考資料とされることがあります。
監督委員の調査事項
再生手続き又は再生計画案が法律の規定に違反するものか
監督委員は、再生手続きが法律の規定に違反していないか(違反していた場合は、その不備を補正することができないかどうか)をチェックし、不認可事由とすべきかどうか意見を述べます。
再生計画案の遂行の見込み
監督委員は、債務者が再生計画案の前提として作成した事業計画案をチェックし、不合理なものでないか確認します。
不認可事由となるのは「再生計画が遂行される見込みがないとき」とされています。監督委員は、「遂行の見込みがない」とまではいえない場合には、債権者の判断に任せます。
また、再生計画案の内容が、破産手続きによった場合の分配額を上回るというルール(清算価値保障原則)が守られているかどうかをチェックします。
再生計画案の決議の方法
再生計画案に定められた権利変更等の効果が生じるには、債権者による決議が必要になります。
再生計画案を可決するためには、以下の2つが必要となります。
- 出席した議決権者の過半数の同意(頭数要件)
- 前議決権者の議決権(債権総額)の2分の1以上の議決権者の同意(議決権額要件)
再生計画案の決議の方法には、債権者集会に債権者等が集まって議決権を行使する方法と、書面投票によって議決権を行使する方法、あるいは両方法を併用する方法があります。
多くの場合、債権者集会を開く方法が選択されます。なぜならば、債権者集会を開く方法のほうが、直接債権者に再生計画案の説明をしたり債権者からの質問に答えたりすることによって、再生計画案への理解を得るチャンスが増えることや、必要がある場合に債権者集会で再生計画案を変更できること、再生計画案の可決ができない場合に、債権者集会を続行できる場合があること、などのメリットがあると考えられているからです。
とはいえ、債権者集会を続行するには一定の条件が必要となりますので、債務者としては、債権者集会が開かれる前に債権者の理解を得る努力をしておく必要があります。
逆に、大口債権者を含む多数の債権者の賛成が得られることが確実と考えられるケースでは、コストや手間の少ない書面決議の方法がとられることもあります。