小規模個人再生とは
個人再生の手続きは、事業者ではない個人や零細企業者を想定して、このような人にも利用しやすい民事再生手続きとして設けられた制度です。
個人再生には2つの手続きがあります。「小規模個人再生」の手続きと「給与所得者等再生」の手続きです。
いずれの手続きを利用するにせよ、マイホームを維持したまま借金の整理をするには、「住宅資金特別条項」という制度を利用することになります。
実際に多く使われているのは、小規模個人再生の手続きの方だといわれています。
個人再生手続きを利用する条件
個人再生の手続きを利用するには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 借り入れ総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
- 将来にわたり安定した収入を得ることが見込まれ、その収入で継続的に支払いができること
個人再生と破産の1番の違いは、今ある債務者の財産を処分・清算するかどうかです。個人再生の場合、今ある債務者の財産をそのままに生活や事業の立て直しを図っていくことになります。その代わり、今すぐ破産をして財産を処分・分配した場合よりも多くの支払いを将来的にすることができない場合には、個人再生手続きを利用することができません(「清算価値保障原則」といいます)。
小規模個人再生を利用するための条件
小規模個人再生を利用したい債務者は、その申立てをした後、裁判所が定める期限までに「再生計画案」を提出します。
「再生計画案」は、今後の借金の返済計画などを定めたものです。
小規模個人再生の場合、将来的な支払い総額の最低額は、現在の借金総額に応じて、以下のとおり決められています。
負債総額100万円未満 | 全額 |
---|---|
負債総額100万円以上~500万円未満 | 100万円 |
負債総額500万円~1500万円未満 | 負債総額の5分の1 |
負債総額1500万円以上~3000万円 | 300万円 |
負債総額3000万円以上から5000万円未満 | 負債総額の10文の1 |
小規模個人再生手続きの流れ
※手続きの流れは、各裁判所の運用によって異なる場合もございます。
1.受任
ご依頼後直ちに受任通知を各債権者に発送し、取引履歴の開示を求めます。
受任通知が送られた後は、賃金業者は直接の取り立てをすることができなくなります。
2.取引履歴の調査(引き直し計算)
通常、受任通知の発送から1ヶ月~3ヶ月程度で債権者から取引履歴が開示されます、(業者によって異なる場合があります。)
開示された取引履歴に基づき、利息制限法による引き直し計算を行い、正確な借り入れ残高を確認します。
過払金がある場合には返還請求をします。
3.申立書類の作成
お客様からお伺いした事情などをもとに小規模個人再生手続きの申立書類を作成します。
お客様にも提出書類の収集をお願いすることがございます。
4.申立書類の提出・個人再生委員の選任
完成した申立書類を裁判所へ提出させていただきます。
裁判所で申立て書類のチェックが行われた後、個人再生委員が選任されます。
個人再生委員は、裁判所の補助をする機関で、申立人の財産状況をチェックしたり申立人の再生計画案をチェックしたりします。通常は、弁護士が個人再生委員に選任されます。
5.履行テスト(履行可能性テスト)
また、裁判所が再生計画認可をするかどうかを判断するために履行テスト(履行可能性テスト)が行われることがあります。
これは、将来、再生計画が認可されたとしたら月々支払っていくお金を指定口座に支払わせ、実際に再生計画のとおりに返済をしていく能力があるかどうかを調べるための手続きです。
6.個人再生委員との面談
裁判所で申立書類の受付が終わった後、個人再生委員と面談が行われます。
ここでは、主に、現在の生活状況や今後の収入の見込みなどについて確認が行われます。
7.再生手続開始決定
6.の面談などから個人再生委員が再生手続きを始めることの可否について意見を提出します。
裁判所は、この意見等を聞いて、再生手続開始決定をします。
再生手続開始の決定書は、債権届出書と一緒に各債権者(貸主)へ送付されます。
これらの書類を受け取った債権者は、それぞれ債権額を裁判所へ届け出ます。
債権届出書が届いた後、申立人は、その認否を個人再生委員に提出します。
8.再生計画案の作成
将来の借り入れ等の具体的な返済方法などを記載した「再生計画案」を裁判所へ提出します。
9.書面による決議
小規模個人再生手続きでは、再生計画案と議決書が各債権者に送付され、書面による決議が行われます。
債権者の数の2分の1以上の反対がなく、かつ、反対する債権者の持つ債権の金額が全体の2分の1以下である場合など法律で定められた要件を満たす場合には、裁判所から再生計画認可決定が下されます(他方、給与所得者等再生手続きの場合は、決議が行われません)。
10.再生計画認可決定の確定
再生認可決定が下されてから約1か月経過すると、再生認可決定が確定し、その効力が生じます。再生認可決定が確定した翌月から、再生計画に従った返済が始まることになります。
小規模個人再生手続きの特徴
小規模個人再生手続きの場合は、再生計画の認可にあたって債権者による決議が行われます。
再生計画について、債権者の数の半分以上の反対がある場合や、債務総額の半分以上を持つ債権者の反対がある場合には、再生計画の決議が受けられず、手続きを進めることができません。
これに対して、給与所得者等再生の場合には、債権者の決議が不要とされています。
また、小規模個人再生手続きと給与所得者等再生手続きでは、最低返済額が異なってくることがあります。
給与所得者等再生手続きにおいては、全部で可処分所得の2年分以上の返済が必要となります。この金額は、小規模個人再生手続きを利用した場合の金額よりも高額となることがあります。