飲酒運転の防止
1.飲酒運転と飲食店の責任
平成18年に福岡市の海の中道大橋飲酒運転が原因ので、幼い命が奪われるという痛ましい事件がありました。再発防止のため、平成19年には道路交通法の改正により飲酒運転の罰則が強化されました。
この法改正によって、飲酒運転をした本人だけではなく、「飲酒運転をするおそれのある者に対する酒類の提供」や「飲酒運転をするおそれのある者に対する車両の提供」も処罰対象となりました。
つまり、飲酒運転をする可能性がある者に、飲食店がアルコールを提供すると、提供した店舗も法的責任を問われるということです。
飲酒運転に対する世間の目は、とても厳しくなっています。店舗でアルコールを提供したお客様が飲酒運転で事故を起こした場合、店舗も警察や検察による取調べを受けたり、ニュースなどにも取り上げられたりする可能性があり、そうなった場合は社会的にも経営的にも大打撃を受けます。
そのような事態を避けるためにも、飲酒運転を防ぐサービスの徹底とスタッフの意識の徹底は重要です。具体的にはどのようなサービスや対策が必要となるのかを以下ご説明いたします。
2.飲酒運転防止に役立つサービス
ハンドルキーパーへのサービス
多くの居酒屋やアルコールを提供する飲食店で実施されている「ハンドルキーパー」へのサービスは、店舗でアルコールを提供するのであれば必ず取り入れるべきです。
同じテーブル=同じ飲み放題メニュー、と決めてしまうとハンドルキーパーは「料金は同じなのに自分だけがお酒を飲めない」ことになります。
そのような不公平感を与えてしまうと、ハンドルキーパーがついつい飲んでしまうことも想定されますし、お客様に与える印象も良くありません。
このようなことを防ぐためにも、ハンドルキーパーにはソフトドリンクの飲み放題を提供することに加えて、ハンドルキーパーの飲み放題を割引価格で提供したり、場合によっては無料サービスとしたりしてもよいでしょう。
さらに、誤ってアルコールを提供することを防ぐため、誰がハンドルキーパーかをスタッフが把握できるように目印になるバッジなどを準備しておくこともおすすめします。
タクシーや代行の電話番号と終電を知っておくこと
飲酒運転を防ぐためには、アルコールを飲ませないことも大切ですが、もっと重要なのは「飲んだ後に運転させないこと」です。
まず、タクシーや代行運転サービスの電話番号は、レジの横などの目につきやすいところに明示しましょう。お客様から、連絡を頼まれたときにスタッフが迅速に対応することで、印象も良くなります。
次に、地下鉄やバスの最終時刻をスタッフ全員がしっかりと把握し、お客様にアナウンスできるようにもしておきましょう。
仮に、地下鉄やバスが利用できるのであれば、タクシーや代行運転サービスに比べて安価なため、飲酒運転を思いとどまる可能性が高くなります。
スタッフ全員が飲酒運転をさせないという意識を持つことが重要です。
お客様がお酒を飲んでしまった時の対応
飲むつもりがなくても、その場の空気でついついお酒を飲んでしまっていた、という時にもしっかりと対応する必要があります。
うっかり飲んでしまっていたときでも、「知らなかったから」とそのまま車を運転させてはいけません。そのようなときには、「飲酒されているので、このままお帰りいただくわけにはいきません。タクシーか代行運転の利用をお願いいたします。」とはっきり伝えましょう。
それに対してお客様がどうしても車で帰ると言い張る場合には警察に連絡するしかありません
運転に自信のある方や、お酒に強い方は「ちょっとくらい大丈夫」「自分は大丈夫」と過信している場合もあります。また、飲酒運転への対応がまだまだ甘かった時代を知っている方の場合は「捕まったとしても飲酒運転くらい大したことではない」と考えていることもあります。
当然、飲酒運転は犯罪です。例え、常連のお客様であったとしても、毅然とした態度で臨むことがお客様のためにもなります。
3.その他の工夫
ポスターなどを貼っておく
飲酒運転撲滅のポスターなどを目立つ場所に貼ります。
お客様の中には、「車で来たけれど、こっそり飲めばいい」と考える方もいらっしゃいます。また、田舎の場合は「なぁなぁ」で済ませてしまおうと考えている場合もあります。
ポスターを貼ることで、この店は飲酒運転の対策をしているということをそのようなお客様にアピールすることができます。また、スタッフも飲酒運転をする可能性があるお客様からのアルコールの注文に対して「ポスターのとおり当店は飲酒運転の撲滅に協力しています」などと断りやすくなります。
ドリンクの容器を分ける
アルコールとソフトドリンクは、見た目では判別できないものも多々あります(例えば、ウーロンハイとウーロン茶)。また、スタッフであれば見分けがつくものでも、お客様が見分けられるとは限りません。
ハンドルキーパーがソフトドリンクだと思って間違えてアルコールを飲んでしまった、という事にならないように、誰が見てもはっきりと分かるようにドリンクの容器は分けておいた方がよいでしょう。
店舗の立地にも注意
公共の交通機関がない場所、つまり、車でしか来られない立地の店舗でアルコールを提供する場合は、必然的に飲酒運転のリスクが高くなります。
このような立地で、アルコールの注文を受ける際には、必ず来店方法とハンドルキーパーの有無、代行運転サービスやタクシーの手配などをしっかりと確認する必要があります。
まとめ
アルコールを提供する飲食店の場合、飲酒運転への対策は必須です。
お客様を対象とする対策はもちろんですが、スタッフにもしっかりと飲酒運転対策の研修を行い、アルコールを提供した者も処罰されることを認識させ、スタッフ一人一人の意識を高くしておきましょう。