債権回収Q&A
1.請求書を送付したが応答がない
(質問)
取引先(売掛先)が売買代金(売掛金)を支払ってくれなくなりました。
請求書を何度か送りましたが反応がありません。
どうすればよいでしょうか。
(回答)
通常の書式の請求書ではなく、内容証明郵便の方法で出すことをおすすめします。
内容証明郵便は、どのような内容の郵便を出したかということを郵便局が証明してくれる郵便で、通常の請求書よりも証拠としての力が強く、応じなければ裁判等の法的手段に出る意思があることを相手方に示すことができます。
2.内容証明郵便の送付の仕方
(質問)
内容証明郵便というのは誰でも出せるのですか。
(回答)
誰でも郵便局で出すことができます。
ただし、字数や行数に厳格な定めがあり、それに従って作成する必要があります。
詳しくは内容証明郵便のページをご覧ください。
3.内容証明郵便を送ったが応答がない場合
(質問)
内容証明郵便で請求しましたが、それでも支払ってこない場合はどうすればよいのでしょうか。
(回答)
弁護士に依頼して弁護士名で内容証明郵便を発送する方法があります。
弁護士名で送ることにより、「支払わなければ裁判を起こされてしまう」と相手方に危機感を持たせる効果があります。
その結果、必ずとは言えませんが、支払を受けられることがあります。
4.弁護士名で内容証明郵便を送ったが応答がない場合
(質問)
弁護士に依頼して弁護士名での内容証明郵便を送りましたが、支払がありません。
どうすればよいのでしょうか。
(回答)
強制的に支払わせるために法的手段を取ることを検討します。
5.法的手続きで支払いを請求
(質問)
法的手段にはどのようなものがありますか。
(回答)
代表的なものとして、支払督促と民事訴訟があります。
6.支払督促とは
(質問)
支払督促とは何ですか。
(回答)
裁判所が、請求する側の主張に基づいて「〇〇円を支払え」という命令(支払督促)を出す手続です。
相手方を呼び出さないので、手続が簡単かつ迅速です。
ただし、相手方から異議が出た場合は、通常訴訟に移行します。
7.支払督促と弁護士依頼
(質問)
支払督促は弁護士に依頼しないとできませんか。
(回答)
ご自分で申し立てることが可能です。
原則として書類審査なので、申し立てた後はご本人(会社の場合は代表者様)が裁判所に行く必要はありません。
ただし、通常訴訟に移行した場合には、その審理のためにご本人が裁判所に行く必要がでてきます。
8.支払督促の申立て
(質問)
支払督促は具体的にはどこに申し立てればよいのですか。また、請求金額の制限がありますか。
(回答)
相手方の住所地を管轄している簡易裁判所に対して申し立てます。
また、請求金額に制限はありません。
9.訴訟提起と弁護士依頼
(質問)
民事訴訟は弁護士に依頼しないとできませんか。
(回答)
弁護士を立てずに自分で民事訴訟をすることも可能です。
ただし、請求額が高額なケースや、内容が複雑なケース、また法律の解釈が必要になるようなケースについては、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。
10.弁護士依頼のメリット
(質問)
弁護士に依頼するとどんなメリットがありますか。
(回答)
裁判期日のたびにご本人(会社の場合は代表者様)が出頭する必要がなくなります。
また、弁護士は、その専門知識に基づいて、事実関係や法律解釈について適切な主張(言い分を裁判所の様式に合わせた書面にするとともに、証拠書類を精査、提出。)をします。
11.民事訴訟の進み方
(質問)
民事訴訟はどのように進行していくのですか。
(回答)
まず、双方が書面によってお互いの主張を明らかにし、その主張を証明するため、証拠を提出します。
主張や証拠が出そろった段階で、証人尋問が実施されます。
裁判官は、書面の証拠(書証)だけでなく、証人尋問の結果をふまえ、どちらの主張が正しいかを判断し、最後に判決を言い渡します。
12.民事訴訟にかかる時間
(質問)
民事訴訟にはどれくらいの時間がかかりますか。
(回答)
最短でも判決までに数か月はかかるのが通常です。事案にもよりますが、少なくとも6か月~10か月、長いと3~4年程度、判決までにかかることがあります(特殊な事案では10年以上かかることもあります)。
13.民事訴訟提起の判断
(質問)
話し合いで解決したいと思っている場合は、民事訴訟を起こさない方がよいですか。
(回答)
いいえ、起こした方がよい場合があります。
訴訟を起こすことで双方の主張が整理され和解が成立しやすくなることがあるからです。
また、裁判所で和解するメリットとして、和解の内容について、裁判所が和解調書という書類を作ってくれることが挙げられます。
この和解調書には、確定判決と同じ効力がありますので、もし約束どおりの支払がない場合は、和解調書に基づいて強制執行することができます。
14.強制執行の可能性
(質問)
支払督促や民事訴訟の判決があれば、必ず債権を回収できますか。
(回答)
いいえ、そうとは限りません。
差し押えることができる財産を相手方が持っているかどうかによります。
まったく回収できない場合もあります。
相手方が差し押さえることができる財産を持っているかどうかを確認したうえで、支払督促や民事訴訟の手続をとるか決めるとよいでしょう。
15.差し押さえ対象財産
(質問)
差し押さえができる財産にはどのようなものがありますか。
(回答)
代表的なものとしては、不動産(土地、建物、マンションなど)、動産(自動車など)、債権(預金、売掛金など)があります。
16.差し押さえ対象財産の処分
(質問)
差し押さえようと思っていた財産を相手方が処分してしまったらどうなるのですか。
(回答)
処分されてしまったら差押えは不可能になってしまいます。
そのような事態を防ぐために、民事訴訟の提起に先立って、裁判所に対し、財産の仮差押えや仮処分の申立てをすべきです。
ただし、仮差押えや仮処分には、裁判所に予納金を収める必要があります(請求金額の10~30%程度です)。
17.債権回収の方法
(質問)
取引先(売掛先)から債権を回収する方法として、支払以外にどのようなものがありますか。
(回答)
債権譲渡、保証人に対する請求、抵当権などの物的担保の実行などの方法があります。
18.債権譲渡とは
(質問)
債権譲渡とは何ですか。
(回答)
債権者の意思で、債権をそのままの状態で他人に移転させることをいいます。
譲渡を受けた人が、新しい債権者となり、債務者は新債権者に対して弁済をすることになります。
19.保証人
(質問)
保証人に対して請求する際に注意すべきことはありますか。
(回答)
請求する相手が保証人か連帯保証人によって異なります。
連帯保証人の場合、債務者本人に対する請求ととくに変わるところはありませんが、保証人の場合は催告の抗弁、検索の抗弁、分別の利益などの保証人特有の反論がありうるので、注意が必要です。
法的な部分以外では、保証人は自分のところへ請求が来るとは思っていないことが多いですから、請求する際の心理的な配慮が必要なことが多いです。
20.物的担保とは
(質問)
物的担保の実行とは具体的にはどのように行うものでしょうか。
(回答)
物的担保とは抵当権や質権などを指しますが、この権利をそれぞれの権利に応じた方法で実行することです。
例として、抵当権の場合は、対象となる不動産の競売の申立てを行います。
21.自己破産通知の対応
(質問)
突然、取引先(売掛先)から自己破産の通知が届きました。今後の支払はどうなるのでしょうか。
(回答)
破産手続が開始された場合、ごくわずかの(あるいはゼロの)配当しか受けられないことが一般です。
22.自己破産通知と債権回収
(質問)
自己破産の通知が来たら債権の回収は諦めるしかないのでしょうか。
(回答)
破産手続開始後も、抵当権などの担保権は別除権として破産手続とは無関係に実行することが可能であり、それによって、債権を回収することができます。
【注意】
弊所では、債権回収業務について、事業性資金(事業により発生した債権(例:工事代金、売買代金、診療報酬などの売掛金や賃料・リース料など))の回収業務のみをお受けしております。個人間・親族間の貸付け等(親子間の貸付けや、個人的な貸付け)の債権回収は受け付けておりません。予めご了承ください。