身に覚えのない請求を受けたら
架空請求の場合
「有料サイト利用料金」「デジタルコンテンツ利用料」「出会い系サイト利用料」などの名目で架空の請求をおこないお金を支払わせる悪質行為がおこなわれることがあります。
このような請求を受け、実際には利用した覚えがない場合には、料金を支払ってしまう前に、最寄りの消費生活センター等へ相談しましょう。いったんお金を支払ってしまうと、それを取り戻すことは難しい場合が多いです。また、請求相手にむやみに連絡する前に相談をしたほうがよいでしょう。
知らない間に連帯保証人にされていた!?
上記のような場合とは違い、知らない間に家族や知人の連帯保証人とされていて、その請求を受けるといったケースがあります。書類上、連帯保証人とされている人が「自分は連帯保証人になっていない」と争うケースのことを「保証否認」と呼ぶことがあります。
このようなケースで特に裁判所から書類が届いた場合には、適切な対応をしなければ貸主の主張が認められ、連帯保証人としての責任を問われてしまうことになる可能性が高いです。
まずは、契約書の印鑑が自分のものか、契約書の署名が自分の書いたものかを落ち着いて確認してください。
本当に身に覚えがない場合には、慎重な対応をする必要がありますので、弁護士にすぐ相談したほうがよいでしょう。
契約書と印鑑
自分の印鑑(特に実印)を他人が利用できる状態にしてしまうと、自分の知らないところで勝手に契約書が作成されたとしても、そのことを裁判所に認めてもらうことがかなり難しくなってしまうことがありますので注意が必要です。
金融機関は、連帯保証人と契約する場合、通常、連帯保証契約書を作成し、実印と印鑑証明書を求めることになります。
これは、民事訴訟では、私文書(公務員が作ったのではない文書)に契約をしたとされる人の意思に基づく署名または押印があった場合には、その文書が真正に成立―つまり、その人が意図する内容の文書がきちんと作成されたこと―と推定することとされています(民事訴訟法228条4項)。
ただし、裁判所に文書がきちんと作成されたと推定してもらうためには、前提として、その押印が契約をしたとされる人の意思に基づいてされたことが必要と考えられています。
ところで、日本では、印鑑は契約などをする際にとても重要なものとされており、特に必要がないのにむやみに他人に貸すことはないと一般的に考えられています。
そこで、民事裁判の実務では、契約書の契約名義人の印鑑の印影が押されていた場合には、反証がない限り、その契約書には本人の意思で押印がされたものと扱い、契約書どおりの契約がされたものと基本的に扱われることになります。
本人のサインかどうかは、本当に争いになった時には筆跡鑑定でもよくわからないことがありますが、本人の印鑑かどうかは印鑑証明書があればすぐに分かります。ですから、金融機関は、連帯保証契約が連帯保証人の意思で結ばれたこと(=契約が有効であること)を分かるようにするなどのために、印鑑証明書の提出を求めるのです。
繰り返しになりますが、とにかく、自分の印鑑(特に実印)を他人が利用できる状態にしてしまうと、自分の知らないところで勝手に契約書が作成されたとしても、そのことを裁判所に認めてもらうことがかなり難しくなってしまうことがあります。注意が必要です。
署名だけがありそれが自分のものではない場合
このようなケースでは、契約書の署名も印鑑も自分のものではない場合は、代わりに署名などをした人に、代わりに契約をする権限(代理権)が与えられていたこと―実際には、どうして代筆がされなければならなかったのか、代筆をしなければならない特別の事情があったのかを、貸主側が証明する必要があります。
通常は、連帯保証契約のような重要な書類を本人ではない人が代筆をするなどということは、例外ケースだと考えられるからです。
自分の印鑑が契約書に押されている場合
この場合、連帯保証人とされた方が、裁判所に「本人の知らないところで印鑑が押された可能性があるのではないか?」と思ってもらえるような事情を主張・立証していかなければなりません。
たとえば、同居している家族であれば、こっそり印鑑を持ちだすことができる可能性があるかもしれません。また、他の目的で印鑑を預けていた場合には、その間に印鑑が契約書作成に使われてしまった可能性があるかもしれません。そのような反論をしていくことになります。
自分の印鑑(とくに実印)が押されてしまっている場合には、かなり難しい裁判になることが多いですので弁護士などに相談したほうがよいでしょう。
契約書をよく読んでいなかった
自分で署名や押印をした場合には、残念ながらよく契約書を読んでいなかった、意味が分からなかったという反論を裁判所に認めてもらうのは難しい場合が多いです。
連帯保証人になるということは、主債務者が支払いをできない場合には代わりに返済をしなければならない責任を負うのですから、たいへんなリスクをともないます。慎重に判断をする必要があります。
ただし、ご本人が契約の意味を分かるだけの判断能力がなかったといえる場合(重度の病気など)には、契約の無効を主張できる場合がないわけではありません。
このような反論を裁判所でする場合も、難しい裁判になることが多いですから、弁護士に相談したほうがよいでしょう。