任意整理をした方がよいケースとは
借金問題を解決する方法には、任意整理のほか、自己破産、個人再生や特定調停など、さまざまなものがあります。どの手続きが解決方法として適しているかは、お客様ごとの借金の状況や生活の状況等によって異なります。
一般論としては、借入れ総額が200万円未満で給与などの定期的な収入がある方や、平成18年以前から借入れ・返済を続けている方は、任意整理によって借金問題を解決できることが多いです。
以下、詳しくご説明します。
引き直し計算によって借金が減るケースとは?
いわゆる「グレーゾーン金利」や過払い金の問題をなくすため、最高裁判所が判断を示したり、貸金業法や出資法などの関係法令の改正が行われたりなどしてきました。この結果、おおむね平成18年以降の貸付けについては、基本的に過払い利息が発生する余地がなくなりました。
そのため、平成18年以降(特に、改正法が完全に施行された平成22年以降)に借り入れた借金については、引き直し計算をしてもあまり金額が減らない可能性が高いです。
逆にいえば、平成18年以前から借入れと返済を繰り返していた方の場合には、過払い利息が発生している可能性が高いですので、引き直し計算をすることにより借金の減額をすることができる可能性が高いです。このような場合には、任意整理に踏み切るメリットが大きいといえるでしょう。
任意整理では原則3年での支払いが必要
引き直し計算をしてもなお借金が残る場合であって、任意整理によって借金問題を解決したい希望がある場合には、残額を基本的に3年間の分割払いで完済する必要があります。5年程度までであれば、さらに支払期間を延ばすことを認めてもらえる場合もあります。
この際、将来の利息をカットする交渉をして、その分の減額を求めることはできますが、元本よりもさらに減額することは任意整理では難しい場合が多いです。
任意整理は、自己破産や個人再生などとは違い、あくまで貸主との話し合いで、支払いのスケジュールを組み直す方法です。話し合いである以上、相手方が提示案に応じなければ、一方的にスケジュールを変更することはできません。
一般論としては、3~5年程度の分割払いであれば応じてくれる貸金業者が多く、これを超える長期の支払いにも応じてくれる貸金業者がないわけではありませんが、貸金業者がこれに応じなければならないという法律上の決まりがあるわけではありません。
したがって、任意整理により借金問題を解決するためには、3~5年以内に借金の元本を返せる程度の収入の見込みが必要です。
一概にはいえませんが、200万円以上の借金がある場合には、任意整理だけではなく、自己破産等の他の手続きの利用も検討した方がよい場合が多いです。
自己破産では不都合があるケース
また、自己破産をすることに不都合がある場合は、任意整理などの手続きも選択肢となることがあります。
たとえば、自己破産をした場合には、原則として、自宅(不動産)や自動車などの高価な財産を手放す必要があります。これに対し、任意整理の場合には、任意整理の対象とする借金の範囲を自由に選ぶことができますので、自動車ローン以外の借金を任意整理して自動車の引き揚げを受けないようにする、といった対応ができる場合もあります。
また、警備員や保険外交員、宅建業者など、一定の職業にある方は、自己破産の申立てによって一定期間資格の制限を受けることがあります。もし、このような職業についていて、一時的にせよ資格制限を受けると不都合が生じるという場合には、任意整理等の手続きを選択することによって、不都合を避けることができることがあります。
すでに支払いが滞っている場合は速やかに対応を
すでに月々の支払いが滞っている状態が続いている方は、現状を放置していても問題は解決しませんから、速やかに弁護士等に債務整理を依頼した方がよい場合が通常です。
任意整理のデメリットとして、信用情報機関に事故情報として記録される(いわゆるブラックリストに載る)ことにより、おおむね5~7年間、新しく借入れをしたりクレジットカードを作ったりするのが難しくなることがあげられます。
しかし、すでに数か月分支払いを滞納している状態であればブラックリスト登録がされてしまっていますので、現時点で「任意整理によって信用情報が傷つく」などといった心配をしても、意味がありません。
このような場合に何もせずにいると、ますます状況が悪化し、選べる方法が少なくなっていってしまいます。ぜひ、お早めに弁護士にご相談ください。