差し押さえとは
「差し押さえ」をされる前に対応を
借金等の支払いの滞納が続いた場合や、税金・社会保険料の支払いを滞納した場合には、持っている不動産について「差し押さえ」がなされることがあります。
差し押さえを受けてしまうと、不動産の任意売却が難しくなったり、最終的には不動産が競売にかけられたりしてしまうことがあります。
一旦差し押さえを受けてしまうと、必要な支払いをしなければ解除をしてもらえないのが通常です。そうなってしまうと、借金問題の解決のためにとりうる選択肢が狭まってしまうことがあります。
借金問題は早めに対応することが重要です。
「差し押さえ」とは?
「差し押さえ」とは、権利を持っている人の権利の実現のために、裁判所が国家権力を用いて、ある財産の持ち主が財産を処分することを禁止することをいいます。通常は、その後に続く強制執行(競売など)の前段階の手続きとして行われます。
「差し押さえ」というと、裁判所の職員が差し押さえの紙をぺたぺた貼りに来るイメージをお持ちの方がいらっしゃるかと思いますが、不動産に対する差し押さえの場合には、そうではなくて、差し押さえがされたことが不動産登記に記録されます。
差し押さえは、不動産だけではなく、動産や売掛金や給与などの請求権(債権)に対しても行うことができます。
強制執行とは?
強制執行とは、相手方が義務を果たさない時に、裁判所という国家権力の力を使って強制的に義務を果たさせる手続きです。借りたお金を返す義務など、金銭の支払いを内容とする債務(金銭債務といいます。)の場合には、相手から財産を取り上げ、これを競売にかけて債権回収をおこなう手続きのことをいいます。
日本の法律では、たとえ権利があることを認める判決書を持っていたとしても、それを自力で実現すること(自力救済)は認められていません。
たとえば、相手方に100万円の支払い義務があることを認める判決書を持っていたとしても、相手方の家に入って財産を持ちだすことは、窃盗罪などの犯罪になります。
日本の法律では、相手方が義務を果たさない場合には、裁判所の関与のもとで相手方から財産を取り上げ、これを競売にかけてその売却代金から債権を回収しなければならないのです。
差し押さえの効果とは?
不動産の差し押さえがされると、不動産の持ち主は、差し押さえの効果により、その不動産に関する処分行為の一切を禁止されます。
つまり、不動産を誰かに売却または贈与したり、不動産を誰かに貸し出したりすることができなくなります。
差し押さえの登記がされると、その後に不動産の所有権を移転する登記や不動産に担保権を設定する登記がされたとしても、差し押さえをした債権者との関係では無効と扱われます。
要するに、不動産の差し押さえがされると、不動産の持ち主は、不動産を処分することができなくなります。もし差し押さえに反して無理やり不動産を売却等しても、不動産の強制執行手続きには影響がありませんし、そのまま強制的に不動産が売却され、買受人がその所有権を得ることになります。
差し押さえの登記がされていることは、不動産の登記を確認すればすぐ分かりますので、差し押さえの登記がされた不動産を売却することは通常できません(通常の買主が不動産の登記を調べないことはありえないですし、差し押さえの登記がされていることが分かっていて不動産を買う人も通常いません)。
他方で、差し押さえがされても、通常の使用・収益は、そのまま続けることが認められています。
通常の使用・収益とは、以前からその不動産に住んでいたのであればそのまま住み続けることをいいますし、以前からその不動産を他人に賃貸していたという場合には、引き続き借主を住まわせて賃料を受け取ることをいいます。
このような使用・収益は、競売の買受人が代金を納付し、所有権を取得するまで続けることができます。
差し押さえを受けると任意売却ができない?
このように、差し押さえがされると、たとえ不動産の持ち主であっても不動産を自由に売却等することができなくなります。
そのため、差し押さえがあると、不動産を任意売却して借金問題を解決しようとする際に支障となることがあります。
不動産を任意売却するには、差し押さえをした債権者から差し押さえの解除の約束を取り付ける必要があります。差し押さえの解除の見込みがなければ、不動産の買い手を見つけることができません。
しかし、相手方は差し押さえをするにも色々手間暇をかけて差し押さえをしているのですから、通常はそう簡単に解除をしてくれません。
特に、税金等の滞納処分として差し押さえがされている場合には、税務署も公的な業務として差し押さえ等をおこなっていますから、滞納額の全額の納付がなければ差し押さえを解除してもらえないことが多いです。
このように、いったん差し押さえを受けてしまうと、任意売却の交渉等において苦しい立場に立たされてしまうことがあります。また、税金・社会保険料等の滞納の場合には、たとえ破産手続きをしても納付義務がなくなるわけではありません。
税金等の滞納が続き、差し押さえを受けてしまう前に、ぜひ借金問題について一度ご相談ください。
ご相談のご予約はこちらからどうぞ。