任意整理から自己破産へ変えることはできますか?
状況に応じて解決方法は変わります
当初は任意整理を想定してご依頼をいただいた場合でも、取引履歴を調査して整理してみると、思っていたよりも借金の金額が多く、任意整理では完済までの期間が長くなりすぎてしまい、解決が困難になることもあります。
また、それ以外にも、任意整理を続けている途中で失業して収入が減ってしまったり、病気になって支出がふえてしまったりしたという場合には、やはり任意整理では解決が困難となることもあります。
いずれのケースにしても、もっとも重要なことは、お客様の生活を立て直すにはどうしたらよいかという点です。無理に任意整理をしても、月々の支払が厳しいままでは任意整理をした意味が薄くなってしまいます。
このような場合には、当事務所から自己破産等の他の手続きへの方針変更を提案させていただくこともございますし、もちろん「自己破産に切り替えたい」というお客様のご要望にも可能な限り対応させていただきます。
逆に、自己破産を想定してご依頼をいただいた場合に、取引履歴を調査してみたところ、引き直し計算や消滅時効などにより借金の金額が減額でき、自己破産をしなくても借金を完済できると判明する場合もあります。このような場合にも、対応することが可能です。
選択を誤るデメリット
任意整理により相手方(貸金業者)と分割払いの合意ができたとしても、途中で挫折してしまっては問題の解決になりません。
この場合に、もう1度任意整理をし直すという方法もありえますが、一度約束を破ってしまっていますから、相手方も容易に応じてくれないことが多いです。
そうすると、今後は自己破産をして借金問題を解決しなければならないという事態になることが多いです。この場合には、すでに支払った分割金や費用は戻ってきません。はじめから自己破産をしていれば、分割金にあたる部分をもっと有効に活用できたかもしれません。
自己破産と任意整理の分かれ目とは?
一般に、人が借金の支払いにあてることができる金額は、「住居費(家賃など)を引いた手取り収入の1/3」といわれています。もちろん、お客様ごとの生活状況によって異なりますので一概にはいえませんが、多重債務を抱える方の中は、貸主に申し訳ないという気持ちからか、楽天的な見通しからか、客観的にみると無理のある返済額を申告する方もいらっしゃいます。
現時点では、月々の家計を切り詰めて何とか乗り越えられると考えていらっしゃる方でも、本当に3~5年間もの間、ずっと同様の生活を続けていけるかどうかは、よく検討する必要があります。
また、一般に、完済までの分割回数が3年(36か月払い)以内であれば任意整理が可能ですが、それを超えると自己破産または民事再生が手段としてふさわしいと考えられています。
業者によっては、5年間程度あるいはさらに長期の分割払いに応じてもらえることもあります。ただ、実際、精神的に、ぎりぎりに切り詰めた生活を続けられるのは3年間くらいが限度といわれています。
そのほか、長期の支払になると、ご家族の病気、お子様の出産や進学、勤務先での業績悪化、賃貸契約の更新などの、収入の減少または支出の増加の原因となる事態が発生する可能性が想定されます。
以上をまとめると、「手取り収入から住居費(家賃など)を引いた残額×36(回)で元本を完済することができるか」が、任意整理か自己破産かを分ける分かれ目と一般に考えられています。
もっとも、1番重要な要素は、お客様の決意や希望です。そもそもお客様に借金の整理や家計の見直し、生活の立て直しをするという決意がなければ、任意整理をしても途中で挫折してしまう可能性が高いですし、決意が固ければ任意整理が解決方法としてふさわしいケースも多いでしょう。
いくら借金があれば自己破産できるの?
少しの借金でも気軽に自己破産ができるわけではありませんし、返済をしたくないからというだけで自己破産はできません。
自己破産をするには、「支払不能」であると裁判所に認めてもらう必要があります(破産法15条1項)。
「支払不能」とは、破産手続きが開始された日の時点の全債務を弁済できるだけの資力をもたず、また、そのような資力を近く入手できる見込みもないために、弁済能力が一般的かつ継続的に欠けているという客観的状態を指します。
つまり、第三者の目からみて、申立人に全ての借金を支払うだけの財産がなく、またそのような財産を近いうちに得る見込みもないために、支払能力が一時的・部分的ではなく、一般的かつ継続的に欠けている状態をいいます。ただ自分で「もう借金を返せない」と思っているだけではなく、その裏付け資料が必要となります。
いくら借金があれば「支払不能」といえるかどうかは、申立てをする方のそれぞれの事情により異なりますので、○○万円といったはっきりとした基準を設けることはできません。
ただ、100万円未満の借金では自己破産ができないことが多いです。