個人再生をした方が良いケースとは?
借金問題を解決するための方法には、個人再生以外にも、任意整理や自己破産などの手続きがあります。
では、どのような場合に個人再生の手続きを選んだ方は良いのでしょうか?
個人再生に向いているケース
例えば次のような方は、個人再生が向いていると考えられます。
- ある程度の返済能力はあるが借金の減額が必要な方
- マイホームを手放したくない方
- 一定の資格が必要な職種についている方
借金の減額が必要な方
任意整理の場合でも、利息制限法に基づく引き直し計算をすることにより借金残高が減ることがありますし、将来利息のカットを交渉することにより支払金額を減らすことができますが、それ以上の減額は難しい場合が多いです。
これに対し、民事再生の場合には、支払いの総額を最大で10分の1程度に減額することができます。
※支払総額をどの程度減額できるかは、債務総額やその他の事情により異なる場合があります。
マイホームを手放したくない方
個人再生手続きの場合は、住宅資金特別条項という制度を使うことによって、住宅ローンの支払いを続ける代わりに住宅を手放さないという形で借金を整理することはできます。
これに対して、自己破産の場合には、一定の価値がある財産はすべて処分し、債権者への返済(配当)に回さなければなりませんので、マイホームなどの不動産を手放すことになります。
一定の資格が必要な職種についている方
自己破産の場合には、下記の職業・資格について一時的に制限を受けることになります。
これに対し、民事再生の場合にはこのような職業・資格の制限はありません。一時的なものだとしても、資格の制限を受けることにより勤務先などで不都合が生じてしまう場合には、個人再生手続きを検討すべきといえます。
自己破産をした場合に制限を受ける職種の例
- 弁護士、司法書士、税理士などの士業
- 旅行業者
- 警備員
- 建築業者
- 保険外交員
など
個人再生に向かないケース
逆に、下記のような場合には、個人再生を利用しづらいもしくは個人再生を利用するメリットが小さいといえます。
- 返済能力に乏しい方
- マイホームを持たない方
- 他の借金を減額しても住宅ローンの支払いが苦しい方
返済能力に乏しい方
個人再生は、自己破産と違って、借金を全て無くす手続きではありません。減額がされるとはいえ、基本的に3年間、一定の金額を返済し続けることが必要となります。
返済能力が乏しかったり、返済を続ける意欲がなければ、個人再生の手続きを利用することができません。
したがって、安定した収入がなく返済能力に乏しい方の場合は、個人再生ではなく、自己破産等の手続きを利用しなければなりません。
マイホームを持たない方
上記でもご説明したとおり、個人再生は、自己破産と違って、借金をすべてなくす手続きではありません。
マイホームなどの自己破産手続きで手放さなければならない財産がそもそもない場合にはあえて民事再生の手続きを選ぶメリットが小さいといえます。
できれば「破産」は避けたいとか、借りたものを返さないのは申し訳ないので少しでも返したいというお気持ちがある場合には自己破産ではなく個人再生を選ぶということもあるかもしれません。
しかし、現実に生活が苦しい場合には、上記のようなお気持ちも大事ですが、自己破産をして根本的な解決を図る必要があることが多いです。
他の借金を減額しても住宅ローンの支払いが厳しい方
個人再生の場合は、住宅資金特別条項という制度を利用することにより、マイホームを維持したまま借金の整理をすることができますが、そのためには住宅ローンの支払いをこれまでどおり続けていくことが必要になります。
つまり、住宅ローン自体の減額は難しいですので、住宅ローンの支払いが厳しい場合には、任意売却や自己破産などを検討する必要があります。
個人再生が失敗してしまう場合とは?
よく準備をせずに個人再生の申し立てをしても、手続きの途中で失敗してしまうことがあります。
そもそも再生手続きを選ぶことに無理があった場合
個人再生の手続きを利用した場合、返済の期間は、通常、3~5年間です。この間、一定の金額を返済し続ける必要があります。
このような長い期間のうちには、失業や転職、勤務先の業績悪化などによる収入の減少や、離婚や病気などのご家族の生活の変化など、様々な出来事が発生する可能性があります。
そのためには、借金の原因や生活の状況をよく点検してみることが大切です。
もし、借金の原因が、他人の保証人になっていたというものであれば、再び同じような借金を背負うことになる可能性はあまりないといえます。
しかし、そもそも収入が少ないために借金を続けてきたという場合には、収入が増えない限り、将来も同じように借金が返せない状態になる可能性が否定できません。
このような場合には、家族などの協力を得て収入を増やす(例えば、家族にもパートやアルバイトを始めてもらうとか、離れて暮らす親族に生活費などの援助をしてもらうなど)ことができるかどうか、月々の支出の中に無駄なものがあり減らすことができないかどうかなどをよく検討する必要があります。
そもそも再生手続きを選んだことに無理があった場合には、将来、結局自己破産をしなければならなくなってしまう可能性があります。このような場合にはそれまでの時間や返済金を無駄にしてしまうことになりますから、事前によく検討することが重要です。