住宅資金特別条項とは?
民事再生法では、住宅ローンの支払いについては再生計画とは別の支払方法を定める条項を置くことが認められています。この条項を、「住宅資金特別条項」といいます。「住宅資金特別条項」の制度を利用することにより、マイホームを手放さずに借金を整理することができます。
民事再生法では、住宅ローンについては従来どおり支払っていく等別個の扱いをすることを認め、マイホームを維持したまま、他の借金をカットして借金問題を解決することが認められています。これが、「住宅資金特別条項」の制度です。
対象となる住宅ローンとは?
住宅ローンであればどのようなものでも「住宅資金特別条項」を利用できるわけではありません。
住宅資金特別条項における「住宅」とは、次の条件を満たすものであることが必要です(民事再生法196条1号)。
- 個人である再生債務者が所有すること
- 自己の居住の用に供する建物であること
- 建物の床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されること
- 以上の要件を満たす複数の建物があるときは、主として居住の用に供していること
簡単にいうと、住宅ローンの対象となる住宅が個人再生をするご本人の所有の住宅であって、実際にご本人やその家族が住むために使っている建物である必要があります。別荘や投資用のマンションなどは、「住宅資金特別条項」の対象となる住宅には含まれないことになります。
保証人に対する効力
住宅資金特別条項については、保証人などにも効力が及ぶこととされています(民再法203条1項)。
したがって、破産手続きや民事再生手続き一般の場合には借金の免除・減額などの効果が保証人に及ぶことはありませんが、住宅ローン特別条項を利用した再生計画が認可されて効力を生じたときは特別に、住宅ローンの保証人も、貸主(銀行など)から保証債務の履行を求められることが、ひとまずないようにされています。
ただし、保証人としての責任がなくなったわけではありませんので、借主本人(主債務者)がスケジュールどおりに住宅ローンを返済できないときには、代わりに支払いをする必要があります。
住宅資金特別条項の種類
住宅資金特別条項は、法律上、以下の4つの型に分類されます。
- 期限の利益猶予型
- リスケジュール型
- 元本猶予期間併用型
- 同意型
なお、実際に多いのは、住宅とローンに滞納がないことを前提に住宅ローンについてはこれまで通りの契約内容に従った支払いを続けるケース(法律上は①期限の利益喪失型の1形態に含められます)です。
① 期限の利益猶予型
期限の利益猶予型は、延滞していた元金・利息・損害金を支払い、喪失した期限の利益を復活させるという内容を定めたものです(民事再生法199条1項)。
住宅ローンに滞納がないことを前提に、住宅ローンについてはこれまで通りの契約内容に従った支払いを続けていくといったケースもこれに含まれます。この場合には、住宅ローンの一部弁済許可(民再法197条3項)を受けて、個人再生の申し立ての後も、同じように支払いを続けていくことになります。
② リスケジュール型
リスケジュール型は、住宅ローンの返済期間を契約で定められた期間よりも最大10年間延長するものです(民事再生法199条2項)。
ただ、実際には、10年間の延長では月々の支払金額があまり減らないことも多く、また、もともと70歳近くまで住宅ローンを組んでいる方も多いので、このタイプの条項を利用できる場合はあまり多くないと言われています。
③ 弁済期間猶予併用型
弁済期間猶予併用型は、②リスケジュール型に加えて3~5年間の範囲内で元本猶予期間を求めるものです(民事再生法199条3項)。
つまり、リスケジュール型を利用してもなお住宅ローンの支払いが苦しい場合に、他の債権者への支払いをする3~5年間の間は住宅ローンの支払いを少なくする場合などです。
実際は、3~5年間の猶予期間が終わった後の支払いの負担が大きく、利用が現実的でない場合もあるようです。
④ 同意型
同意型は、住宅ローンの貸主(銀行など)が同意し、自由に住宅ローンの返済条件を変更する場合です(民事再生法199条4項)。
実際に住宅資金特別条項を利用する場合に多いのは、住宅ローンに滞納がないことを前提に住宅ローンについてはこれまでどおりの契約内容に従った支払いを続けるケースですが、これが難しい場合には、②リスケジュール型や③元本猶予期間併用型とよりも、貸主からの同意を得て支払い条件を変更することが多いです。