武富士の会社更生手続きについて
武富士の現在の状況
平成28年3月18日現在の状況です。
武富士(現:TKF株式会社)は、平成22年9月28日、会社更生法に基づく会社更生手続(※注1)開始の申し立てを行い、同年10月31日、東京地方裁判所から会社更生手続開始決定を下されました。
その後、平成24年3月1日、会社分割(※注2)により、武富士の消費者金融事業は株式会社ロプロ(現:株式会社日本保証)に引き継がれました。
また、武富士は、同日、TKF株式会社と商号を変更(※注3)し、創業者一族等に対する訴訟をおこなうなどの会社更生手続きを進めています。
旧武富士への債務がある方(借入れが残っている方)
株式会社日本保証に対して返済をおこなっていく必要があります。
下記の解説のとおり、会社更生手続きや株式分割により借金がなくなるわけではありません。
ただし、長い期間支払いを続けていた場合には、利息制限法による引き直し計算をおこなうと、過払い利息があって借金の残高が減少する可能性があります。また、消滅時効の完成により借金の支払い義務を免れることができる場合があります。
武富士への過払い金返還請求権がある方
武富士への過払い金は、平成23年10月31日に東京地方裁判所から認可された更生計画(※注4)にしたがって返還されます。
過払い金の返還を受けるためには債権届出(※注5)を平成23年7月22日までにしている必要があり、届出をしていない債権(過払い金返還請求権)は、更生計画認可決定により効力が失われています。
債権届出をしていない方が今から過払い金の返還を求めることはできません。
注1:会社更生手続きとは
会社が経営破たんしたというニュースの中で、会社更生や民事再生という単語を耳にされた方もいらっしゃると思います。
会社更生と民事再生は、どちらも、経済的危機にある会社(事業)を、裁判所の監督のもと、債権者などの関係者との間の利害調整をおこない、事業を存続させていくという手続きです。それぞれ、会社更生法と民事再生法という法律を根拠としています。どちらも、事業の維持・再生を目的とする点で、事業の廃止を前提とする破産手続きとは異なります。
会社更生と民事再生は、会社更生の方が、手続きが複雑で手続きを進めるための条件等が厳しく、より規模の大きな会社を前提とした制度となっています。民事再生は、会社更生と比べると、会社の債権を速やかに行えるように手続きが簡単になっています。2つの手続きには色々な違いがありますが、大きな違いは、会社更生では旧経営陣は原則として会社経営から退くことになりますが、民事再生では旧経営陣の交代は必須ではありません。
更生会社に対する請求権は、そのうち債権届出をしたものだけが更生計画の内容にしたがった取扱いを受けることになります。
他方、更生会社への支払い義務は、更生会社の財産として回収されます。
会社更生のおおまかな流れ
更生手続開始の申し立てがされると、裁判所は一般的に保全管理人を選任し、公正手続を開始すべきかどうか判断するのに必要な調査をおこなわせます。
更生手続開始決定がされると、対象会社(更生会社)の代わりに財産を管理・処分する管財人が裁判所から選任されます。
管財人は、事業の存続をさせつつ、債権調査手続き(会社に対する過払い金返還請求権などの権利を持っている人やその額を調査する手続き)を行ったり、会社の財産状況の調査を行ったりしたあと、今後の事業計画や債権者への支払い計画などをまとめた更生計画案を作成し、裁判所へ提出します。
この更生計画案は、利害関係人の各種決議にかけられ、その承認を受けた後、裁判所がこれを認可することにより、正式な更生計画として効力を持つことになります。
注2:会社分割とは
会社分割とは、企業再編行為のひとつで、ある会社が事業に関して保有している権利義務の全部または一部を、他の会社等に引き継がせることをいいます(会社法2条30号)。
会社分割には吸収分割と新設分割があり、権利義務を引き継ぐ相手が既存会社の場合を吸収分割、新しく設立する会社に引き継がせる場合が新設分割です。
引き継がせる権利義務の範囲は基本的に自由に決めることができますが、対象となった権利義務は、人間の場合の相続と同じように、そのまま引き継がれることになります(会社分割がされただけでは権利の内容が変わったりすることはありません)。
商号の変更とは
商号とは、商人が営業(事業)をおこなうに当たって自分(たち)のことを表すために使う名称のことをいいます。会社の場合は、要するに社名のことです。個人事業主の場合は、自分の氏名を使って○田○男商店などという名称を商号とすることもありますし、全然関係のない名称を使うことも、他人の商号と誤認を生じさせるなど他人の権利を害しない限り、自由にできます。
商号の変更とは、つまりは社名変更のことです。なお、商号の変更があったからといって、会社の中身に変化があったかとは限りません。
更生計画とは
更生計画とは、更生会社の事業計画・債務の支払計画などを定めたもので、管財人が原案を作成して提出します。
必要な手続きを経て更生計画案が裁判所から認可されると、その内容にしたがって、会社をめぐる関係者(担保権者・債権者・株主など)の会社に対する権利義務が変更されます。たとえば株主の変更や、返済額の変更などといった効果が生じます。
債権届出とは
更生会社に対して債権(貸付金や過払い金返還請求権など)を持っている債権者は、裁判所が設定する債権届出期間内に、自分が持っている債権の金額等を裁判所に届け出ます。このことを債権届出といいます。
管財人は、債権届出に基づいて調査をおこないます。
届け出をしなかった債権は、更生計画(案)の中で考慮されず、最終的には権利が失われてしまい、支払いが受けられなくなってしまうのが原則です。